突撃!近所の詰所〜You は何しに帝国へ?〜
まさかの午前投稿!
きっと午後に投稿できないから……
帝国の詰所は数多く存在するが、どの詰所でシェリアを監禁しているかはすぐにわかった。
詰所の外にまで警備隊を5人以上配置しているところが1つしかなかった。
…なんてわかりやすいのだろうか。
しかし、時間が経つにつれて私も冷静になったきた。
この状況…罠かもしれないのではないか?
都合よく聞こえてきた会話、宿で待ち伏せがあるという情報、シェリアを匂わせる人物の特徴、アンナの不在などなど…。
いくらなんでも敵と自分に都合が良すぎる展開ばかり…。
よくよく考えれば…罠の可能性が高すぎる。
宿に待ち伏せがあるという情報なんて、私を宿に帰したくない奴らの心理が丸見えだ。
…しかし、今更逃げ帰ることなんてできない。
……シェリアがいるかもしれないのなら。
シェリアがいるという可能性が1%でもあるというのなら。
「放っておくなんて…私には無理だ。」
私は、詰所の外にいる警備隊たちの視線を掻い潜りながら玄関の入り口付近まで接近する。
「あーあ…暇だぜ。」
「おい!真面目に警備しやがれ!」
男たちの声が聞こえる。
「でもよー、本当にいるのか?詰所に攻め込むなんてバカみてぇな輩がよー。」
「たとえいなくても真面目に警備するのが当然の行いだ。」
玄関近くにいる男2人は私に気づいていない。
他の警備隊たちは詰所入り口なんて気にしていない。
……チャンスだ。
男2人の背後に一瞬で回り込み、長針を2人の首筋にグサっと刺す。
「うあっ!?」「うっ!?」
驚きの声を上げた次の瞬間には、2人の意識は無くなっていた。
私特製の神経毒だ…即効性ではあるが、命に関わる量ではない。少し寝ていてもらうだけだ。
「なっ何があった!」
「おい!マックとリゲルがやられてるぞ!」
「そこにいる奴は誰だ!」
「もしかして、あいつが例の不法入国者か?」
「どうでもいい!とりあえず取り押さえる!」
…どうやら、周りの警備隊に気づかれたようだ。
まぁ…想定内だ。
襲いかかる警備隊は5人、皆が屈強そうな上に統率のとれた動きをしている。
「しかし、問題ない。」
私は懐にある黒塗りのナイフを取り出す。
私が持ってる中で一番切れ味のあるナイフだ。
「武器を持ったぞ!」
「しかしナイフだ!間合いさえ気にすれば問題ない!」
「剣を構えろ!」
「俺が一番槍だぜ!2秒でカタをつけて…うわぁ!」
「ニック!?このガキッ!ぐわああ!?」
彼らの勢いは長く続かなかった。
「…遅い。」
私が一瞬で前にいた2人を斬ったのだ。
「お前ら!ガキだって油断するな!」
「わかってる!ニックとスタイナーが一瞬でやられた!」
「…このガキ、瞬間移動でもしているのか!?」
後方には真ん中に背の高い隊長らしき男。
右の背が低い男は私に少し覚えているようだ。
それに対して、左の男は私に対して敵意むき出しだ、隊長らしき男が止めていなければ今にも襲いかかっているだろう。
「…お前は何が目的だ!」
「……しらじらしい。」
私は敵意むき出しの男に向かって詰め寄る。
「速い!」
「マークス!避けろ!」
「…だから遅い。」
マークルと呼ばれた男は私のナイフを躱そうと後ろに跳ぶ…しかしやはり遅い。
私のナイフが彼の後退よりも早く腹に届く。
「ぐっ…うおおお!」
腹を浅くはない深さで斬られた彼は右手の剣を私に向かって振りかぶる。
「…でも遅い。」
「ぐあぁ!!」
傷ついた男の攻撃など止まって見える。
私は向かってきた男の剣を逆に奪い取り彼の腹に返す。
…残り2人。
「クソッ!マークスまで…おいジゲル!」
「…なんだよ隊長!2人じゃ無理だぞ!」
「察しがいいな…お前は増援を呼べ!」
…隊長はなかなか冷静らしい。
「!?でも隊長!あんたが1人で抑えられる相手かよ!こいつの速さは…。」
「いいから呼べ!ここで全滅する気か!」
「……クソ野郎!すぐに戻る!」
残された2人は互いに睨み合う。
「…何が目的だ。」
「だから、しらじらしい。」
「俺らが何をしたってんだ?」
「…妹を返してもらう。」
「……なるほど、お前がソレか。…悪いが要求には答えられない。」
話は終わった。
あとは…実力行使のみ!!
「ハアァ!」
先に仕掛けたのは隊長だ、素早く間合いを詰めて流れるように剣で突いてくる。
…強いな、動きに無駄がない。
完璧な動作だ、全く隙がない。
「…だが、まだ遅い。」
突き攻撃は早く、そして重い。
攻撃力に特化したその動きは敵の防御を崩すのには最適だろう。
しかし、いかに隙のない攻撃でも遅ければ簡単に対応できる、無駄のない動きだって見切ることができればカウンターに持ち込める。
例えば…こんな感じで…
敵の右側に回り込むように突きを躱して、そのまま敵の脇腹に思い切りタックル!
「…ぐっ!」
隊長は不意の一撃で大きくバランスを崩す。
しかしやはり実力者か、倒れたり剣を落としたりはしない。
すぐに体制を整える姿勢には感嘆する。
だが、私にも時間はない。
次で決めさせてもらう。
私はナイフを左手に持ち替える。
「……。」
隊長はそれを静かに見つめる。
私の動きを予想しているのだろうか。
「…うおおお!」
「…!これは速い。」
隊長は先ほどよりも速い動きで突進してきた。
一気に距離を詰められる、慌てて躱すも右脇腹を掠めてしまう…服に血が滲む。
「…痛い。」
でも、これは想定内だ。
「…!?剣が…糸で!!」
「速かった…でも私の方が早い。」
策略も、対応も…そして相手の動きの読みも。
私の方が早く、そして速かった。
これはその結果だ。
グイッ …パキンッ
乾いた音とともに隊長の剣がバラバラになる。
「…無念か。」
「それはまだ早い。」
私は糸を操り隊長の首に巻きつける。
「……なるほど、私を拷問するのか。」
「…拷問じゃない、チャンスは一回。」
私の言葉になぜか笑みをこぼす隊長。
「せっかちだな…。」
「…妹はどこ?」
「…答えると思うか?」
質問に質問で返す隊長…どうやら言葉が通じていないらしい、質問文に質問文で返すような男が隊長になるとは思えない。
「…チャンスは一回、答えて。」
「……俺は、お前の妹など見たことは無い。」
……シュッ スパッ
「……チャンスは一回。」
飛び散る鮮血、それは噴水のように辺りを濡らす。
私はその赤い絨毯から離れ、詰所に入る。
期待はしていなかった、だからガッカリはしない。
きっとここにいるんだから、くまなく探せばいいだろう。
「すぐに見つけてやる。」
ナナは走る、いるかもわからぬ妹を探しに。
「…入ったか、間抜けな女だ。」
それを静かに見つめる青髪隻眼の男。
「妹などにそこまで執着するか…情が深いのは美徳だ、しかし策に翻弄されるのは感心しないが…
噂話への敏感さは女らしいといえば女らしいか?…まぁ、私にとっては都合がいい。」
その瞳には激しい怒りと憎悪が見える。
「王国の犬は私が1人残らず駆逐してやる。」
久々の戦闘シーン…上手に書けたかな?
明日もきっと投稿出来ると思います。
うん……きっとね。




