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お待ちかね

ナナさんはお待ちかねではないですが、我々は待ちかねていた事でしょう。


風呂回です!

食事で予期せぬダメージを受けた私はシェリア達と一緒に大浴場へと進む。

私の足は進みが重いのに、シェリアの足は地面が弾んでいるのかと思うほどに軽い。

彼女の歩きはもはやスキップである。

「おっふろ〜、おっふろ〜、お風呂!」

「シェリアお嬢様…そろそろ歌うのはやめにした方がよろしいかと…。」

「了解!アンナお嬢様!」

「…あの、私に敬語は……。」

「了解!アンナお嬢様!!」

「……。」

もうアンナすら困惑するテンションだ。

つまり今のシェリア誰の手にも負えない。

「シェリア、もう着いた。」

「フフフ…お姉ちゃんとお風呂……。」

「…シェリア……怖い。」

私ですら無理だ、というかアンナと私でシェリアの反応が違う…なぜ?


大浴場に入る前からとても不安だ。

私は…意を決して入口の暖簾をくぐる。



中はとても広く、開放感あふれる場所だった……まだ更衣室だけど。

入口から見て右の壁際に衣服などを入れるロッカーがあり、その反対側に…鏡付きの洗面台?のようなものが設置してある。

全体的に白を基調としているのが清潔感を強くしていて…とても居心地がいい。

……まだ更衣室だけど。

「ほぅ…とても美しいですね。」

「アンナ…まだお風呂じゃないのに感心してたら身がもたないわよ!」

「……何するつもりなの。」

浴場はリラックスするところであって、決して『身がもたない』ようなことがある所じゃない……絶対に。


「さぁ!早く脱いでお風呂よ!」

シェリアは私たちを急かすが…。

その前に1つ言っておきたいことがある。

「シェリア……なんで脱がないの?」

「!?……いや、別に…みんなが脱いでから脱ごうかと思ってただけよ?」

「…なんで疑問形なの?」

シェリアは私たちを急かしておきながら自分は脱ごうとすらしていないのだ……私はかなり恥ずかしい思いを必死に抑え込んで脱ごうとしているのに……。


……いや、待て。

シェリアが脱がないのは好都合では?

彼女の裸を意識せずにさっさと脱いで先に大浴場へと逃げて仕舞えばいいのでは?

そう思い、訂正しようとする。

「いや、やっぱりなんでも……。」

「わかったわよ!先に脱ぐわ!」

しかし……手遅れだった。


シェリアは上着を脱ごうと服に手をかけ…

「はしたないですよ…お嬢様。」

「アンナ!?…っていつのまに脱いでたの!?」

すでに服を脱ぎ…体にタオルを巻いているアンナに止められた。

そしてなすがままにアンナさんがシェリアの衣服を脱がせていく…アンナさんの脱がせ方がとても美しい、慣れているのだろう。

しかし、シェリアの脱がされ方も上手だ…慣れているのだろう…か?

しかし、これならば彼女達から目を逸らせば問題なく浴場まで行ける。

「…助かった。」


私は2人から少し離れたところで服を脱ぐことにする。

上着を脱ぐと、見慣れた自分の体が見える。

凹凸の少ない男のような肉体…だからこそ安心できるものではあるが…少し期待していた自分もいるのは仕方がないことだろう…決して望んではいない、多少期待していただけだ。

…そのまま無心で服を脱いでいく、無心で。


服を脱ぎ終わり、2人の様子を見ようと後ろを振り返ると…

「あ!終わった?」

「ひゃいっ!?!?」

真後ろに裸のシェリアがいた。

…全く気づかなかった、不覚だ…。

「それにしても…絶壁というか…絶壁だね。」

「…結局壁じゃん。」

「…お姉ちゃんブラしてないの?」

ブラ?……ブラって何?

「……何それ?」

「……へ?」

シェリアは一瞬私の方をすごい目つきで見た後…何かに気づいたような顔をして、浴場の入り口で私たちを待っているアンナの方へと走って行った。

「……何だったんだ?」

私は訳がわからないまま2人の後を追った。


横開きの扉を開けると、顔に浴場の湯気がかかる。

中でシェリアの頭をアンナが洗っている、シェリアはとても気持ち良さそうだ。

私は2人の横で頭を洗う…肩までかかっている長い髪は洗うのがとても面倒だ…。

「あ……。」

シェリアの声が聞こえる…そして何やら視線を感じる。

「お姉ちゃん!そんな雑な洗い方ダメよ!」

「…面倒。」

これでも丁寧に洗っている方だ…これ以上丁寧に洗うなんて…。

「うぐぐ……アンナ!」

「わかりました…ナナさん、少し失礼しますね。」

「…?わかった。」

私はアンナに頭を任せる。

「では…失礼いたします。」

アンナの指が頭に触れる…優しい手つきなのが分かる、アンナの指は私の頭を優しく…しかし決して弱いわけではない力加減でマッサージしているかのようにシャンプーを髪になじませながら頭を洗っていく。

……なんだこれ、かなり気持ちいい。

「痒いところはありませんか?」

「…ない。」

「アンナとお姉ちゃん…イイかも。」

シェリアの声が頭に入ってこない。


私は5分ほど、アンナの頭皮マッサージに身を委ねていた。

…それから体を洗うのもアンナに任せてしまったのはしょうがないと思う。

だって気持ちいいんだもの。


もうすでに2人の体を見るのが恥ずかしいなどの煩悩まがいな羞恥は頭から抜けていた。

…アンナマッサージは偉大だ。



しかし、アンナマッサージの効力はそれほど長く続かなかった。

…そりゃ、湯船に3人で入ったらお互いの体を意識してしまうよ…誰でも意識しちゃうよ、だって女の子だもん。

…くだらない考え事でもしていないと本当に赤面してアワアワしているのがバレてしまうのだ。

「…いつ見ても不思議だわ。」

シェリアが唐突にアンナを見て言う。

「……何がでしょうか?」

「…アンナ、何歳だっけ?」

「今年で20になるかと。」

「…私が今年で16……4つ上か。」

「…そうなりますね。」

アンナさん…4つ上…。

「…見えない。」

「そうでしょ!お姉ちゃん!アンナって私たちの4つ上なのよ!!あり得ないでしょこの2つの山!!」

そう言ってシェリアはアンナさんの…胸を指差して叫ぶ。


いや、私的にはシェリアの方もかなり大きいかと。


「しかし、お嬢様の方も一般的には大きいと思いますよ。」

私もそう思うが…アンナが言うと……

「うぐぐ…アンナが言うと余計に胸に刺さる。」

「私のは大きすぎて邪魔になります。」

「うぐっ!!」

「揺れると痛いですし…ブラも種類が少ないですよ。」

「うわぁーーん!!アンナがいじめるー!」

「ひゃん!?」

シェリアが私に抱きついてきた!

シェリアの手が私の胸に当たり…思わず恥ずかしい声を上げてしまった。

その上…当たってる!当たってるよ!

「お姉ちゃん…いい反応しますなぁ!どれ…ここがええんか!ここがええんか!」

「いやっ!!?やめっ!?ひゅい!!」

シェリアはそう言いながら私の脇をくすぐる。

こんなことされた経験ががないため…体が尋常じゃない程の刺激を伝えてくる……痛みとは違うベクトルの刺激だ。


「…若いですね。」

「アンにゃ!!助けっ!ひゃあ!!」

「お姉ちゃん!もっと!もっと鳴いて!!」

「……お盛んですね。」

アンナさんが湯船から出て出口に向かう。

…逃げられた。

「お先に失礼しますね。」

「アンナぁ!!」

「逃すかぁ!!」

瞬間!シェリアの体がふっと消えた!

「なっ!?」

そして…アンナの後ろに


「つ・か・ま・え・た。」


シェリアがアンナに抱きつく。

そして地面に出現する魔術陣。

「これは…転移魔法!?いつの間に!」

消える2人、そして私の背後に突然2人が落ちてきた。

ザバンッ

「…うわっ!」

思わず声を上げてしまうが、その隙が命取りだった。

「2人目捕獲!!」

シェリアがアンナを右手、私を左手で抱え込むように飛びついてくる。



その後は……言うまでもないだろう。



シェリアの独壇場だった。

…もう3人で風呂には入らない。

ブラを知らないナナさん。


前世は山で育ち、年齢は二桁前半から後半に届くかどうか、今世では奴隷育ちで体はペタンコ……これでは知らなくても仕方がないかと……。

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