定番行事
TS転生モノの定番を書いてみた。
紅葉の甲羅亭は繁華街から出てすぐ近くのところにあり、10分ほど前に通った道に堂々と存在していた。
なぜ気づかなかったのだ10分前の私…。
「はい!ここが私の宿…ではなくて、私の両親の宿です!」
その立派な宿に私たちはため息をつく。
「かなり大きい宿なんですね…ナナさんが宿だと気づかないくらい…。」
「う…。」
アンナはニヤニヤと私を見て笑う。
彼女は私にだけ意地悪だ。
「アンナ…あなたも気づかなかったじゃ無いですか、おに…お姉ちゃんをいじめるのはダメですよ。」
シェリアはもっとスラスラとお姉ちゃんと呼んでくれ…聞いててヒヤヒヤする。
「さぁどうぞ!自慢の宿にご招待!!」
中に入ると、すぐに受付がある。
「いらっしゃいまし…紅葉の甲羅亭へ。」
カウンターにはネルーと同じ茶髪で黄色眼の猫耳女性…シェリアは私が手を繋いでいないと今にも跳びかかりそうだ。
……お前は犬かっ!!
「母ちゃん!お客さん連れてきた!」
「ネルー…仕事ん時は女将と呼びなんと言ったはずさね?」
「うっ…ごめんなさい、女将。」
ネルーのお母さんは躾には厳しいらしい。
…私としては女将の特徴的な口調が移っていないことの方が驚きではあるが。
「さて、ようこそ起こしんした。3名様になりますかいね?一泊食事と風呂付きで400デラですがいかがんしょ?」
女将は優しい笑顔で言う。
「アンナ…どう?」
その一言で察したのか、アンナは私の横に来て耳打ちする。
「我々としては安かった…と言いましょう。今では少し…いや、結構高いですね。」
しかし…今からやっぱりやめときますとは言いにくい。
だが!ここで救世主が現れる。
「女将さん…7泊するわ!」
「なっ!?お嬢様!?」
「ほう…そんでその心は?」
女将はシェリアを見て面白そうだと言う顔をする。
「7泊する…その代わりに安くしなさい!一泊200デラ!」
「ハッハッハ!安すぎるさね、370デラ!」
「220!」
「350!」
「230!」
「340!」
掛け合いは続いた。
そして、運命の時。
「「285!!」」
互いの意見が合致した。
「はぁー負けたよ。おまけさね、一泊280デラで泊めてやるさね…久方ぶりの楽しゅう掛け合いさせてくれたお礼さね。」
「ありがとうございます!女将さん!」
シェリアは女将に笑顔でお礼を言う。
その後ろで私は隣にいるアンナに確認を取る。
「アンナ…。」
「280デラ…安すぎるくらいですね。宿の経営が心配になるほどに…。」
……泊まっていいのだろうか。
まぁ、良いと言ってくれるならお言葉に甘えようかな…。
宿は5階建てで、1階は食堂兼女将達の私室。
2階は大浴場となっており、露天風呂とサウナまである。
なんと…宿泊客は無料で利用可能らしい。
3階から5階が客の泊まる部屋、一階につき15部屋で合計45部屋…意外と少ない?
しかしながらすべての部屋に冷房魔術具と暖房魔術具、保存魔術陣が描かれた小型の蔵に大きなベットが2つ。
控えめに言って素晴らしい。素晴らしすぎる。
ベットが2つなのは仕方のないことだし、それくらいは目を瞑ろう…さすがに二部屋は金銭的につらい。
お金は私の貯蓄とシェリア達が王宮からくすねてきたお金でで割り勘になった。私が全額払おうとしたらアンナに止められたのだ。
そしてお金を払った後、私たちは部屋で寛いだ。ベットはシェリアのお願いで毎日入れ替えで寝ることになった。
「お兄ちゃんとアンナ、両方なんて選べない!」との事…だんだんシェリアが本性を見せ始めている。
そして今、人生最大の危機に陥っている。
「お兄ちゃん!早く行かないと晩御飯に遅れちゃうよ?」
「……。」
「ナナさん…後にします?…お風呂。」
ご飯の前にお風呂に入ることになったのだ。
今までバケツなどに汲んだお湯で布を濡らしてから体を拭くだけで済ませていたツケが回ってきたのだ。
私の体はもう見慣れている。しかし…
「……私は、あとで入るよ。」
ナナは にげた !
「えぇ〜…なら私も後にしよう!アンナもそれでいい?」
「私はシェリアのお側にいるだけで十分にございます。」
しかし まわりこまれた !
しかし本番は次回!




