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タイトルの英語のネタ切れはもうすぐ 【overheat】

少し内容に不満があるので書き直すかもしれません。

『いつか見た理想郷を再び』

そう書かれた紙を見たカーラは頭を悩ませた。

ここは彼女の自室、教員に与えられた特権であり唯一彼女が落ち着ける場である。

…今はかなり悩んでるのだが。

「こんな難解な命題…どう探求するつもりなのよ。内容は複雑で抽象的だし…そもそもの目的がわからない。彼女は何がしたいのよ。」


『命題』とは、魔術師が人生を生きる上で道を違えないようにする羅針盤であり、その生き方の方向性を定めるもの。

当然、魔術も命題によってその性質がある程度形作られるので、『命題』は簡単に明かしたりしないのが一般的である。


カーラが現在悩んでいるシュリエが設定した『命題』の問題点はただ一つ。

あまりにも抽象的すぎることだ。

抽象的であることはダメでは無い、抽象的な命題を設定する魔術師は少なく無い。

ただ、抽象的すぎるのは問題だ。


例えて言うならば、地図の縮尺が1センチごとに違うようなもの。

方向性もゴールもわからない『命題』。

それは魔術師にとって良いものではない。

そう言ったカーラにシュリエはこう言った。


「私はこの『命題』でしか魔術師として生きていくことはできません。この『命題』は決意であり、私の夢ですから。」

後ろにいた美人で金髪のメイドがそれを見て笑っていたのをカーラは覚えている。


「こんな抽象的な決意…聞いたことがないわよ。」

「そうですね〜。しかし楽しみでもあります。」

「ヒェッ!?が…学園長!?」

「どうしたのですか?」

ここは自室、カーラ以外に人がいるはず無いのであるが…学園長には関係ないらしい。

学園長は謎が多い、前国王が国を治めていた頃からこの学園の学園長を務めているのにその容貌は年頃の女性である我々よりも若く見えるほどに美しく、また妖艶だ。…正直妬ましい。

また、彼女はどこにでも現れる。これが結構怖い。今もかなり怖かった。

ちなみに、この学園の七不思議の一つでもある。

七不思議の二つ目に彼女の容姿のこともあるのは我々教師陣でも有名だ。

「どうして私の自室にあなたがいるんですか!」

「私がここにいたいからです。」

「そんな身勝手があってたまるか!」

「…口が悪いですよ?」

「うるさい!」

もう親と子の言い争いだ。


「四年生になると魔術二科目の授業は命題によってクラスを分けます。似たような命題をまとめることで授業を進めやすくしたり、探求がしやすくなるメリットがありますから。ただ、このような抽象的すぎる命題だと…クラス分けが困難ですね。」

カーラは学園長の話に頷く。

「これは…どうすれば良いのでしょうか、いっそのこと1人教師に一対一で授業をさせますか?」

「いえ…もう少し時間を置きましょう。まだ全員の紙を回収したわけでもなければクラス替えの時期でもありません。」

「それは…いえ、そうですね。」

少しせっかちだったとカーラは反省する。

そんなカーラに学園長は紙を渡す。

二つ折りの少しザラザラした紙。

表には…私の生徒であるニルティ・オーヴィアさんの名前が書かれている。

カーラが紙を開く。

「抽象的な『命題』は珍しくないことも事実です。実際、彼女以外にもいますからね〜。」

「なっ!?なぜこれを学園長が?」

「私が見てみたかったからですよ。」

「……ちゃんと元あったところに戻してくださいね!私は直接もらったものしか受け取りません。」

「真面目ですね〜、良いことですよ?」

「…しかし、これもまた抽象的な…。」

「将来が楽しみですね〜。」

「…今でもかなり大物ですよ。」


『あるべき姿はただ一つ』

「それに真面目な娘です。」



魔術理論の授業は楽しかった。

初めのうちは爺様から聞いた復習じみた座学のみで退屈だったが、爺様から教えられなかった詳しい内容が出てくるとその退屈さは吹き飛んだ。

ちなみに、座学の授業は『魔術理論』に分類されるらしい。『魔術』の授業は実技のようなもので、今は行われていない。授業は四年生からだそうだ。


そして何より友達ができた。

魔術理論の授業はグループで行う作業もある。

例えば魔法陣に書き込む単語の研究や魔方陣の簡略化などの、1人で行うには難しい授業の時だ。


主に2人から3人のグループで、私は2人グループだった。ちなみにメンバーは先生が決める。

『命題』や成績で決まるらしいが、もう全員が提出したんだ…あれからまだ二週間も経っていないというのに、意外とみんな簡単に書いたのかな?


それはさておき、その時知り合ったのがニルティ・オーヴィアさんという、女の子だ。

彼女はネリアナと同じ金髪で、綺麗な桃色の眼をした可愛らしい女の子である。

肌も白くてまるで人形みたいだ。可愛い。

性格も控えめで真面目な優等生、隙がない。


ちなみに、私も学園では優等生なのだ。

いや、精神年齢20歳だし…授業も山育ちとはいえ爺様から多少手ほどきは受けていたから授業で困ったことはない。……お兄ちゃんの方が頭が良かったことは内緒だ、復習してる姿なんか見たことがないというのに…お兄ちゃんはズルい。


そんな訳で、彼女との相性は良かった。

授業後もお互いの部屋に行き来するくらいには仲良くなったのだ。そして私の部屋の広さに驚いた彼女を見たり、中にいるネリアナに驚いた彼女を見たりして過ごした。


2人で過ごしていると時間はあっという間に過ぎていくもので、今日が三年生の終業式だ。

つまり、来年から四年生になる。

ニルティと同じクラスになれるかな?


終業式は始業式より簡単に済まされ、教室で来年のクラスが書かれたプリントが配られる。

私は四年二組で、ニルティと同じだった。

「良かった…また同じクラスね。」

「うん…良かった。」

ニルティは無口だが、無表情ではない。

今も私に輝かしい笑顔を見せている。可愛い。

私が癒されていると、カーラ先生が思い出したように皆に向かって話し出した。

「ああ、皆さん!来年から魔術理論の授業はグループごとに先生がついて行われます。グループは命題や成績で決まります、まぁ三年生から既にグループ分けされてましたので、基本的にはそのグループと同じですから、安心?してください。」

ということは、魔術二科目の授業は私とニルティの2人に先生がついて行われるってこと?

それは…かなり嬉しい!

ニルティも心なしか嬉しそうな表情をしている。


そして、終業式を終えて冬休みを迎えた。


冬休みは皆が実家に帰ることのできる数少ない機会であり、皆が楽しそうに冬休みの予定を話す。

私たちも例外では無い。

帰り道、とは言っても校門で馬車を待っているだけだが…その間の時間、ニルティと冬休みの予定について話していた。

「へぇ、ニルティは家族とお茶会に行くのね。」

「うん、お母さんの友人からお誘いを受けたの。」


私はお茶会のような他人が絡むパーティには参加したことがないが、ニルティはとても楽しみにしている。

…私も、今なら参加できるかな?


「ねぇ、シュリエ。」

「ん?どうしたの?」

「冬休みの間に…私の家で、パーティしない?」

「え?…いいの?」

「うん、私と2人だけど…いいかな?」

「もちろん!」


馬車が来るまで、私たちのおしゃべりは続いた。

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