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答えよ 【Respondez】

タイトルに英語を入れたかっただけの携帯充電器です。かっこいいかな?かな?

その鍛冶屋はまるで繁盛している様子はなく、どこか寂れた雰囲気すらある。外観は多少改装された様子が見えるが…それでも醸し出される物悲しい空気は私の緊張を煽る。

意を決して店内に入ると、カウンターには以前いた大男の姿はなく、私よりも一回り歳上の少女の姿があった。その少女は私を見てポカーンとしている。

「え…えと、いらっしゃいませ?」

なぜ疑問形なんだろう。それでいいのか接客。

「店主はどこ?」

私はこの鍛冶屋の店主に用がある。

『先生』のことを完全に信用したわけではない。

ただ、あの遺言には隠された意味があるはずだ。

その意味がわかれば、きっと『先生』が私に必要以上の教育や訓練を課した理由もわかるだろう。


それに、『先生』が組織を裏切った理由も…。


「て…店主?ええっと…マスターのことかな?マスターは今ね、裏で剣や防具を作ってるから忙しいの、だから必要な武器があったら私に言ってくれないかな?」

「店主にしか用はない。」

『先生』は店主に言えといった。ならこの店員に言っても通じないということだろう。

つまり、『グランディルダガー』は暗号。

「えっと…どうしよう、マスターは作業中に入ってくるなって思う言ってたし、この子はマスターにしか用はないって言うし…。」

どうやら、この店員に店主を呼ぶ気はなさそうだ。ならば…待つしかないか。

「店主が来るまで待ってる。」

「え?あ…はい?」

私は店の隅、ちょうど入口の左側にある何もないスペースで店主を待つことにした。



「あの…よかったら飲みます?」

少女が私にコップを差し出してくる。

中身は…なんだろう、この香り。少し甘い?

「ラーナ茶って言う私の祖国のお茶です。ここでよく飲まれるお茶にはない甘い香りが特徴です。味も少し甘みがあって飲みやすいですよ。」

どうぞ…と言われたので、飲んでみる。

確かに飲みやすい優しい味だ。美味しい。

「あと、これも食べてみます?」

私がお礼を言おうとするよりも早く、少女の接待が再開する。今度はなんだ?クッキー?

「これはですねー、マナルナードというお菓子です。クッキーと似てますが食感は全然違うんですよ、しっとりとしていてふわふわなんです。」

差し出されたマナルナード?とやらを一口、なんだか餌付けされてるみたいだ。

初めて食べたマナルナードはとても甘くて美味しかった。

そして、2人の微妙な距離感のお茶会が始まる。



それから数時間、あの大男がカウンターの奥にある扉から入ってきた。

「おいタニア、そろそろ休憩に…あ?どうしたんだお前。なんでこのガキがそこにいるんだ?」

「マ、マスター!遅いですよ!」

タニアと呼ばれた少女が大男に文句を言う。

「は?」

大男は突然の物言いに困惑する。

「私かなり困ったんですからね!この子がマスターに用があるって聞かなくて、でもマスターは作業中だから呼ぶこともできないしこの子はこの子でそれまで待ってるって言うし!私どうしたらいいのかわからなくてこの子にお茶を淹れたんですよ!そのあとこの子が美味しそうにラーナ茶を飲むもんだからマナルナードも用意したんですよ!結構楽しかったです!」

「いや、困ってんのか楽しんでんのか分かんねぇよ。ていうかなんで俺のマナルナード出してんだよ!」

「あ!」

タニアの顔が青ざめる。

「テメェ……今すぐ買ってこい!」

「はいいぃ!」

タニアは急いで店を飛び出した。飛び出してすぐに転んだのか、「うひゃぁ!」という声が聞こえたのは知らないふりをしておこう。

「はぁ、見苦しいもんを見せたな。要件はなんだ?わざわざ俺に頼むんだ、奴の仕事だな?」

大男は私を鋭く睨むように見る、これが仕事人の表情か…『先生』の人を選ぶ能力だけは私も信用できる。実績は嘘をつかない。


だから私は安心して言う。

「『グランディルダガーが必要だ。』」

大男の表情が驚きに変わる。しかし、それは一瞬のことであり、すぐにいつもの厳つい顔に戻った。

「…そうか、奴は死んだか。…なぁ嬢ちゃん。」

「なに?」

大男は私をみて真剣な顔で言う。

「組織はどうなった?」

…この大男、本当にどこまで知ってる?

しかし、嘘をつく必要はない。

「潰した。」

「ほう、『潰れた』ではなく『潰した』か。」

「私が潰した。」

「そうか、お前さんが潰したか。なら、奴…『先生』もお前さんが殺したのか?」

「そう、殺した。」

嘘をつく必要はない。

「そうか…アイツ、マジでやりやがったのか。」

大男は遠い目をして呟いて、また私の方をみる。

「嬢ちゃん…なにを知りたい?お前さんには知る権利がある。こんだけ振り回されたんだ、お前さんには『権利』がある。だが『義務』じゃねぇ。知りたくねぇならそれでもいい。」

なんだそれは、そんなの当然だろう。

「全て知りたい。」

それを知るためにここにきたんだ。

私はそれを期待してここにきたんだ。

大男はまるで安心したように笑った。

「そうか…なら教えてやる。家に入れ。」



大男は私をカウンターの奥にある扉の中へ招いた、その中はまるで一軒家にあるリハバングのように広い部屋で、真ん中に四角いテーブルと椅子があった。椅子は4つある。

私と大男は向かい合うように座った。

大男が話し出す。

「まず初めに、俺はあの『先生』について庇うようなことは言わねぇ。これから言うことは事実のみだ、そこは保証する。」

そんなことは当然だ。私は事実を知りにきた。

私が頷くと、大男は満足そうに笑う。

そこに水を差すように、リビングの入口の扉がバタンと開く。入ってきたのはタニアだった。

「マスター!買ってきました!」

大男は「この馬鹿…。」と呟き、タニアに向かって言う。

「おうわかった、ならお前は俺らにラーナ茶を淹れてどっか行きやがれ!今日はもう休みだ!」

「えっ!いいんですか?」

「いいから淹れてこい!」

「はいいぃ!」

タニアは奥の部屋に行ってしまった。まるで嵐のようだ。

「…失礼したな、話を続けようか。…と言っても、どこから話そうか…そうだな、話すなら初めからがいいだろう。」

大男は勿体ぶったように言う。


「『先生』の最初、組織に入る前の話だ。」

今回はここまで!次回は過去の話です。

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