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終わらない、終われない

今回は短めです

次こそは笑顔で終わりたい。

もっと上手く…もっと完璧に救うことができれば…。

次こそはもっと笑顔にしたい。

もっと優しい…もっと幸せな生活を手に入れれば…。


こんな結末は認めない。

もっと幸せな終わり方があるはずだ。

もっと笑顔でいられる終わりがあるはずだ。


こんな結末はありえない。

泣き顔なんて見たくない。

涙なんて似合わない。


こんな笑顔は認めない。


これを幸せとは認めない。


これが最良なはずがない。



もっと……私が認める幸せを……。




エレンは何度も繰り返した。

世界の概念をねじ曲げて、『最初』に戻ったのだ。

エレンが満足するまで任意に最初に戻ることができる究極の魔法を使って。


ナナとシェリア…いや、カルネとリンを拾ったあの日まで世界を遡って。


最初はエレンの前世、ウィルモットがカルネ達を拾うことのないように2人を隠した。

…結局、2人はそれ以降誰にも拾われることはなかった。


エレンはまた最初に戻った。


次はウィルモットが死んだ後、カルネ達を襲う山賊達を先に殺した。

…結果、2人はエレンの影ながらの援助を受け逞しく生き延びた。

しかし、エレンは山奥でただ生き続ける生活を認めなかった。


エレンはまた最初に戻った。



他にも、2人を王国の孤児院に送ったり、エレンが直々に育てて魔術師として活躍させたり、山奥で暮らす2人に冒険者と鉢合わせるように仕向けたりなど…いろいろな手を尽くした。


何度も最初に戻り、何度も2人の最後を見た。


何度も守護者と戦う2人を見た。


偶に守護者に勝つこともあったが、ほとんどの場合は守護者に殺された。



死際の2人はいつも涙を流しながら笑ってサヨナラを言った。



エレンは何度も最初に戻った。

2人への愛が枯れることはなかった。

むしろ、やり直せばやり直すほどに2人を思う気持ちは膨れあがっていった。


諦めると言う選択肢は存在しなかった。



「…私は諦めない。」


ナナに…いや、カルネに言ったのだ。

「安心しろ。」と言ったのだ。


私に全てを任せろと言ったのだ!

絶対に諦めない決意をしたのだ!


あらゆる概念をねじ曲げた私が!この程度のことで諦めるはずがないのだ!



絶対に2人を幸せにしてみせる。

たとえ……



……たとえ…



エレンは、そして閃いた。


エレンは一切の迷いなく決意した。



…守護者を生み出すこともなく、山奥で生活させることもない選択肢。



「…なぜこんな簡単なことに気がつかなかったのだ。」


エレンはふふっと笑って両手に抱いていた死体…胸に大きな穴が空いた少年の姿をしたカルネの頬に接吻をして地面に横たえさせた。


「待っていろ、安心して私に任せてくれ。」



エレンは腰に挿している魔剣の柄を握り、また最初に戻った。



前世の自分、ウィルモットを殺すために。

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