表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/116

転機

祝!連続4日投稿!!!

奴隷の受ける教育は「酷い」の一言に尽きる。

命令に背くと殴られ、少しでも他の奴隷と会話をしているところを見られると「無駄口を叩くな」と殴られる。

私たちの身体はボロ雑巾のように汚れ、傷ついている。

子供達を支えたいと決意した私の心が折れそうだ。いや、折れそうな心を決意で誤魔化していたのか……。誤魔化しきれていないけど。


こんな生活が後どれくらい続くのだろうか、これ以下の生活は考えられないな……。

と、考えていた私に転機がやってきた。


全てはこの一言から始まった。

「お前達の主人が決まった。」

それは救いか、それとも地獄絵の片道切符か。

心なしか子供達の表情も暗い、不安なのだろう。

「10分後に面会だ。それまでに身なりを整える、ついてこい。」

「…はい。」

返事をするのは私だけ。いつものことだ。


身なりを整えると言っても、服が汚れていないものに変わるだけ。それに『汚れていない』と言って新品の服をイメージした人は考えが足りていない。あくまで『奴隷から見て汚れていない』服だ、普通の人がこの服を出されても絶対に綺麗とは思わない。断言できる。

カビ臭いし、叩けば埃が舞うし、てか汚れてるし。『汚れてない』服なのに。

これが奴隷の扱い、人間じゃないからいいんだ。


身だしなみを整え、奴隷達の準備は万端だか約束の10分が経っても私たちの主人(仮)は来なかった。予定が狂ったのだろうか。

「クソッ、遅えなあの野郎。」

「金持ちは時間に余裕があっていいよなー、所詮俺ら貧乏は暇なしだよこの野郎。」

男達がイライラしてきた。今にも私たちに八つ当たりしてきそうな勢いだ。

数分が経っただろうか、まだ主人(仮)は来ていない。幾ら何でも遅すぎる。

「クソ野郎!買いたいっていったのは奴らだぞ!なんでこっちが待たされんだよー!」

男が喚く。男の視線と私の視線が交わった。

………まずい!

「おいこら、何見てんだよ!」

男が私に殴りかかってくる。

ガンッ

「……。」

私の体は簡単に吹っ飛ぶ。正直かなり痛い。

でも私は痛みを必死に堪えなければならない。

声をあげたら余計に殴られる事は既に学んでいるから。絶対に泣いたりしてはいけない。

でも今回は、私が泣こうが黙っていようが男には関係ないようだった。

怒りの原因は私ではなく主人(仮)であり、私はただのサンドバッグだから。

ガンッ、ガンッ

「…ぐ…ぁ…。」

「オラオラ!どうした!少しは良い声で鳴いてみろよ!」

男は殴って蹴っての大暴れだ。

やばい……死ぬかも…。

「おい、そろそろまずいんじゃねぇか?」

「うるせぇ!こうでもしねぇとかがすまねぇんだよ!売りもんだろうが関係ねぇ!」

『名付け親』の制止は意味をなさず、男の一方的な暴力は止まらない。

私の意識はもうあって無いようなものだ。

ガンッ、ドカッ

「……ぅ…。」

そんな時だ、声が聞こえた。

「騒がしいな、本当にここがそうなのか?」

「あぁ!誰だてめぇ!」

男が侵入者に叫ぶ。

「おい!客だ!お前は少し黙ってろ。」

『名付け親』は冷静に男を諌める。

やっと暴力が止まった。私は安心とともに意識を手放した。……あの侵入者は…いったい誰だ?


目が覚めると、見慣れた牢屋の中にいた。

「やっと目が覚めたか。」

「……?」

聞きなれない男の声だ。そう思ってボヤける眠気まなこをこすってよく見てみると、そこにはあの侵入者が立っていた。

私の周りには子供達もいる。

「まずは自己紹介だな、俺はお前達の教育係だ、『先生』とでも呼んでくれ。」

『先生』?主人では無いのか?

『先生』の話は続く。

「お前たちの仕事は俺たちが決めたことを実行する雑用だ、拒否権はない。」

当たり前だ、奴隷には人間すら存在しない。

「しかし、雑用だけしてもらうのではこちらとしては割に合わない出費でな。そこでこの中から代表で1人、特別な仕事についてもらう。」

……特別な仕事?

「仕事の内容は『暗殺』、俺らの敵を殺せ。」

みんなの顔が驚きに変わる。勿論、私も驚いた。

暗殺……こんな子供に命令するものじゃない。

「早速だが、やりたい奴はいるか?」

……誰も何も言わず、『先生』の顔を見ているだけだ。当然だ、人を殺したい人なんて普通はいない。

「……そうか、ならこっちが勝手に決めるが。」

!?それはまずい!いや、『先生』はむしろそのつもりだったのかもしれない!

私たちは奴隷だ、死んでも補充できるモノだ。

最悪、相打ちで敵を殺させても『先生』は喜ぶ。

『先生』は順番に、相打ちで子供達を暗殺に使えばいいと思っているのか。


そんな事は絶対にさせない。


私は手を挙げた。

「ん?君は…暗殺をしたいのかい?」

「はい。」

「死ぬかもしれない。」

「はい。」

それでいい、それで構わない。

「失敗は許されないよ。」

「はい。」

覚悟なんてできていない。でも、決意はとっくにできているから。

「わかった。君だけついて来なさい。…そうだ、君には頑張ってもらうから名前を決めよう。その方がこっちも便利だ。」

名前、そういえばあったな…そういうの。

「君の奴隷番号は?」

「…007番。」

「なら…今日から君はナナだ。」

ナナ……ナナか、安直だ。


私は今日からナナになった。

お姉ちゃんの名付け記念日!

連続4日投稿!

今日はお祝いですね!あと3分で日付変わるけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ