転機
祝!連続4日投稿!!!
奴隷の受ける教育は「酷い」の一言に尽きる。
命令に背くと殴られ、少しでも他の奴隷と会話をしているところを見られると「無駄口を叩くな」と殴られる。
私たちの身体はボロ雑巾のように汚れ、傷ついている。
子供達を支えたいと決意した私の心が折れそうだ。いや、折れそうな心を決意で誤魔化していたのか……。誤魔化しきれていないけど。
こんな生活が後どれくらい続くのだろうか、これ以下の生活は考えられないな……。
と、考えていた私に転機がやってきた。
全てはこの一言から始まった。
「お前達の主人が決まった。」
それは救いか、それとも地獄絵の片道切符か。
心なしか子供達の表情も暗い、不安なのだろう。
「10分後に面会だ。それまでに身なりを整える、ついてこい。」
「…はい。」
返事をするのは私だけ。いつものことだ。
身なりを整えると言っても、服が汚れていないものに変わるだけ。それに『汚れていない』と言って新品の服をイメージした人は考えが足りていない。あくまで『奴隷から見て汚れていない』服だ、普通の人がこの服を出されても絶対に綺麗とは思わない。断言できる。
カビ臭いし、叩けば埃が舞うし、てか汚れてるし。『汚れてない』服なのに。
これが奴隷の扱い、人間じゃないからいいんだ。
身だしなみを整え、奴隷達の準備は万端だか約束の10分が経っても私たちの主人(仮)は来なかった。予定が狂ったのだろうか。
「クソッ、遅えなあの野郎。」
「金持ちは時間に余裕があっていいよなー、所詮俺ら貧乏は暇なしだよこの野郎。」
男達がイライラしてきた。今にも私たちに八つ当たりしてきそうな勢いだ。
数分が経っただろうか、まだ主人(仮)は来ていない。幾ら何でも遅すぎる。
「クソ野郎!買いたいっていったのは奴らだぞ!なんでこっちが待たされんだよー!」
男が喚く。男の視線と私の視線が交わった。
………まずい!
「おいこら、何見てんだよ!」
男が私に殴りかかってくる。
ガンッ
「……。」
私の体は簡単に吹っ飛ぶ。正直かなり痛い。
でも私は痛みを必死に堪えなければならない。
声をあげたら余計に殴られる事は既に学んでいるから。絶対に泣いたりしてはいけない。
でも今回は、私が泣こうが黙っていようが男には関係ないようだった。
怒りの原因は私ではなく主人(仮)であり、私はただのサンドバッグだから。
ガンッ、ガンッ
「…ぐ…ぁ…。」
「オラオラ!どうした!少しは良い声で鳴いてみろよ!」
男は殴って蹴っての大暴れだ。
やばい……死ぬかも…。
「おい、そろそろまずいんじゃねぇか?」
「うるせぇ!こうでもしねぇとかがすまねぇんだよ!売りもんだろうが関係ねぇ!」
『名付け親』の制止は意味をなさず、男の一方的な暴力は止まらない。
私の意識はもうあって無いようなものだ。
ガンッ、ドカッ
「……ぅ…。」
そんな時だ、声が聞こえた。
「騒がしいな、本当にここがそうなのか?」
「あぁ!誰だてめぇ!」
男が侵入者に叫ぶ。
「おい!客だ!お前は少し黙ってろ。」
『名付け親』は冷静に男を諌める。
やっと暴力が止まった。私は安心とともに意識を手放した。……あの侵入者は…いったい誰だ?
目が覚めると、見慣れた牢屋の中にいた。
「やっと目が覚めたか。」
「……?」
聞きなれない男の声だ。そう思ってボヤける眠気まなこをこすってよく見てみると、そこにはあの侵入者が立っていた。
私の周りには子供達もいる。
「まずは自己紹介だな、俺はお前達の教育係だ、『先生』とでも呼んでくれ。」
『先生』?主人では無いのか?
『先生』の話は続く。
「お前たちの仕事は俺たちが決めたことを実行する雑用だ、拒否権はない。」
当たり前だ、奴隷には人間すら存在しない。
「しかし、雑用だけしてもらうのではこちらとしては割に合わない出費でな。そこでこの中から代表で1人、特別な仕事についてもらう。」
……特別な仕事?
「仕事の内容は『暗殺』、俺らの敵を殺せ。」
みんなの顔が驚きに変わる。勿論、私も驚いた。
暗殺……こんな子供に命令するものじゃない。
「早速だが、やりたい奴はいるか?」
……誰も何も言わず、『先生』の顔を見ているだけだ。当然だ、人を殺したい人なんて普通はいない。
「……そうか、ならこっちが勝手に決めるが。」
!?それはまずい!いや、『先生』はむしろそのつもりだったのかもしれない!
私たちは奴隷だ、死んでも補充できるモノだ。
最悪、相打ちで敵を殺させても『先生』は喜ぶ。
『先生』は順番に、相打ちで子供達を暗殺に使えばいいと思っているのか。
そんな事は絶対にさせない。
私は手を挙げた。
「ん?君は…暗殺をしたいのかい?」
「はい。」
「死ぬかもしれない。」
「はい。」
それでいい、それで構わない。
「失敗は許されないよ。」
「はい。」
覚悟なんてできていない。でも、決意はとっくにできているから。
「わかった。君だけついて来なさい。…そうだ、君には頑張ってもらうから名前を決めよう。その方がこっちも便利だ。」
名前、そういえばあったな…そういうの。
「君の奴隷番号は?」
「…007番。」
「なら…今日から君はナナだ。」
ナナ……ナナか、安直だ。
私は今日からナナになった。
お姉ちゃんの名付け記念日!
連続4日投稿!
今日はお祝いですね!あと3分で日付変わるけど。




