アクシデントは突然に
投稿が遅れて申し訳ありませんでした。
とりあえず1週間に1話は必ず投稿しますのでご安心ください。
聖国の帝王との会談までの3日間なんてあっという間に過ぎていった。
面談の場所は聖国側の都合で王都の皇居、その二階にある面会室となった。
両者の安全の為、中に入るのは皇族とその従者のみで、メイドすら中に入れることを許さない。
しかしこちらは皇族3人を中に入れる為、王国の従者はナナ1人だが、聖国側は従者を2人中に入れていいことになった。
…若干の聖国贔屓は警戒の証なのだろう。
機嫌を損ねられて同盟破棄をされるのが一番避けるべき展開なのだ。
そうして、会談開始までの時間は残り一時間を切った。
まだ、聖国の帝王は王国に来ていない。
しかし皇居は慌ただしく動くメイドたちが何度も廊下を往復していた。
一度会談が始まってしまえば中に入れないと言うのは聖国の帝王や皇族たちにとっては安心材料だが、メイドたちにとっては最大のプレッシャーだ。
失敗した時の取り返しがつかないのだから。
そういう訳で、メイドたちは何度も何度も応接室の掃除や模様替えを行い、あらかじめ部屋に用意する菓子や紅茶の確認を行い、ミスがあったら早急に対応する。
その様子は軽いパニックのようだった。
そんな光景を見せられたシェリアは罪悪感なのか気分を悪くしてしまい、自室でアンナに介抱されている。
「会談……大丈夫か?」
「シェリアに任せるとか格好つけた人が言う事じゃありませんわよ?」
「……カレン。」
残された皇族2人も落ち着かない様子だったが、今となってはどうしようもない事だと諦めて会談の最終確認に入る。
皇族の護衛である私がすることは無い。
強いて言えば、どんどん内装が変えられる部屋のレイアウトを何度も何度も覚え直すことが私のしなければならないことだろう。
そろそろメイドたちには落ち着いてほしい。
2人がかりでテーブルが運ばれていくのを眺めながらナナはため息を吐いた。
「……そろそろ来てもいい頃だが。」
会談まであと30分をきった頃、模様替えされた面会室のソファに座っているキールズ王子が心配そうにつぶやいた。
ソファの前に設置されたテーブルには覚めてしまった紅茶の入ったティーカップが1つ取り残されたように置かれている。
カレン王女は退屈だと言って自室に行ってしまったのだ、まだ戻ってくる様子はない。
ナナもカレン王女に無理矢理連れ出されてしまった……あっという間の早技だった。
後ろで控えているメイドたちも落ち着かない様子でキールズ王子を見つめていた。
「……アンナはいるか?」
「いえ、まだシェリアお嬢様の看病を…」
キールズ王子の質問におずおずとキールズ王子の横に進み出たメイドが返事をしたその瞬間。
「ここに居りますが…御用でしょうか?」
「ひいっ!?失礼しましたアンナ様!」
そのメイドの横にふっとアンナが現れた。
…さっきから立っていたのかもしれないが、それを知るのはアンナだけだ。
「シェリアの様子は?」
「もう落ち着かれました。」
その言葉にひとまず安心だと放置していた紅茶を一口飲む。
……いつの間にか淹れ直されていて暖かくなっていることに驚きながら、更にいつの間にか用意されていたクッキーを一枚食べる。
「落ち着かれましたか?」
「…あぁ、驚きを通り越してな。」
「それは良かったです。」
彼女の姿をキラキラと輝く眼で見つめているメイドたちにキールズ王子はため息を吐き、もうここは大丈夫だとメイドたちを面会室から追い出す。
「…慕われてるな。」
「一応、メイド長と言う設定ですので。」
こんなメイドがいてたまるか、と突っ込みたい衝動を抑えたキールズ王子は自分を誇らしくさえ思った。
「本題に入ろう、聖国王は大丈夫なのか?」
「……あら?聞いていないのですか?」
「知っているのか?」
ええ、とアンナは純粋に驚いた様子でキールズ王子の質問に答えた。
「つい先ほど、聖国王を連れた小隊が正体不明の人物に襲われたと報告がありました。」
「……聖国王は?」
…冷静に、とにかく冷静にキールズ王子は頭を…思考を働かせる。
「現在行方不明で、カレン王女がナナ様とミルド……サマを調査に出しました。」
「……ミルドさんに対しての敬意だけが欠けてるぞ。」
まったく…こういう時ですら余裕を見せるアンナが少し恨めしい。
…あの時カレンが唐突に席を立ったのはこの事を知った為なのか?
それならどうして俺に伝えなかった?
……カレン。
「それではキールズ王子、お昼休憩の後はちゃんとお仕事を始めましょう。」
笑顔でコーヒーをテーブルに置いてキールズを見つめるアンナの声が面会室に響いた。
この話が完結したら新作を投稿する予定です。
期待せずに期待してください。




