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閑話1)とある鍛冶屋の独り言

本編が40話に到達したので、記念にちょっとした閑話を1つ。

このお話は『あっけない閉幕』と『答えよ【Respondez】』を読んでからお読みください。


次は50話で1つ投稿しようかな?

きっと次からは気分で書きます。

「爺、ナイフ借りるぜ。」

「返さねぇ奴に貸すナイフはねぇよ。」

鉄を打っている俺はその声に振り返ることなく答える。

「何言ってるんだよ爺、死んだら返すさ。」

「だったら今すぐ死にやがれ、今まで貸した124本のナイフがそっくりそのまま戻ってくるんだろうな?」

『奴』が大笑いする。

この顔を何度ハンマーで整形してやろうと思ったことか…。

「何言ってんだよ!全部壊れちまってるに決まってるだろ?」

「知ってるから言ってんだよクソ野郎!」


結局、その日は二本のナイフを『貸した』。

これで126本目だ。


「爺、これより長いナイフは無いのか?」

次の日、『奴』は昨日貸したナイフを投げ返してから言ってきた。

…たまにあることだ、別に驚かない。

「…あるぜ、とっておきのやつがな。」

「なんだよ、そのとっておきって。」

俺は鍛冶場の奥にある倉庫から一本のナイフを取り出す。

「…これだよ。」

「…魔剣か。」

学の無い『奴』はご自慢の『目』でこいつの正体を暴く。

『奴』の観察眼は一級品だ、俺も一目置いている……目だけに。

「この魔剣は俺が打った。」

『奴』は少し驚いた顔をしたが、すぐにいつもの無表情に戻る。

…いけすかねぇが、いつものことだ。

「…なるほど…して、その能力は?」

「無い。」

『奴』が「はぁ?」と間抜け面を見せる。

そうだ、その顔が見たかったんだよ。

「この魔剣に能力は無い。切れ味も普通だ、一般的なナイフと変わらん。長さは少し長めだが、別に珍しく無い。」

「…だが魔力を帯びてるぞ?」

「魔鉄なんてうちには腐るほどある。」

「…確かに、魔力を蓄えさせればいいだけか。」

『奴』はそういった後、ニヤニヤ笑いながら言った。

「ちなみに、名前はあるのか?」

「いや…決めてねぇな。」

「じゃあ『グランディルダガー』だな。」

「…なんだそりゃ。」

「さあな。」

『奴』の考えてることはさっぱりだ。

しかし、名前をつけるほど気に入ったのか?


「いるか?今ならやるぜ。」

「……いらねぇ。」

「そうかよ、つまらねぇ奴だな。」

「まぁ、俺が死んだら借りてやるよ。」

『奴』そう言ってわらった。

「そうか、なら死んだら言え。」

「おう。」

そして、『奴』は帰っていった。

気づけば、俺に投げた二本のナイフは無くなっていた。

「あいつ…いつの間に取ったんだ?」


これは、ほんの少し昔の思い出。

俺もつい最近まで覚えていなかった記憶。


「まさか…覚えていたとはな。」

「何がですか?」

俺の独り言にタニアが反応する。

「いや、なんでもねぇよ。」

「?…そうですか?」

「あぁ。」


本当に、何でもない。

「馬鹿野郎のことを考えてただけだ。」

死んだ時に合言葉として魔剣の名前を『借りた』あいつは俺に126本のナイフ以上のものをプレゼントした。


黒髪赤目で、ナイフ以上に鋭い意思を持った美しい少女。

自身の人生を弄んだ組織を破壊した奴からの最期の置き土産。


「グランディルダガー…嬢ちゃんにやるかな。」

「グランディルダガー?そんなのありましたっけ?」

タニアは怪訝そうに聞いてくる。


「あぁ、死んだ奴に貸した俺の作品だ。」

「……?」

俺は大声で笑った。

この閑話はいつか書こうと思っていたというより本編で載せようと思っていたのに書けなかったお話です。


…携帯充電器はタニアちゃんを少し気に入っています。

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