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幽鬼の姫は終焉に揺蕩う/~Ghost Princess~  作者: 花夏維苑
第二章 『灰色の王国』
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二章第37話  『ライフェナの欠点』

今回は試験的に、地の文と会話文の改行が一行です。

読みにくかったり、このままでいいよって方はお教え下さい!




 王都の東の空に巨大な魔法陣が現れる、数十分前――。


 ノワンブール王国の五の姫の一人であり、『覇龍の大剣』に認められた赤い炎の少女――ライフェナは、無数の魔導機械兵に囲まれながら、宙に浮かぶその親玉である男と睨み合っていた。


 周りに、少女の仲間らしき兵士はいない。

 無数の敵に単独で、しかし物怖じせずに、じっと静かに闘志の炎を燃え上がらせている。


「流石は姫の中でも最も強いとされる『炎の巫女』。これ程の数の敵を前に、身震いの一つすら起こさないとはな」


「生憎と貴様に負けるつもりが全くないのでな。私はきっとお前を倒す」


「我の最高傑作達に囲まれながら? 冗談はよしたまえ」


 男の叫びに呼応するように、ライフェナを囲む機械兵達が一斉に「ヴゥゥン」という低い音で威嚇する。

 一般人が同じ状況であったら、直ぐに卒倒しそうな光景でも、ライフェナは余裕の表情を崩さない。


「……やれ!」


 そんなライフェナの余裕に顔を顰めながら、男は背中から生えた機械を振りかざす。

 魔導機械兵を操作するための装置、本人曰く『手』だというそれの指令を受けて、機械兵達が一斉に動きだした。


「ふむ、わざわざ出てこずに、先程までのように見えない所で隠れていれば良かったものを」


「隠れていた訳では無いわぁぁああああ!! ゼェゼェ、先回りをしていたと言っただろう!? それに、我が子が目的地にいつまで経っても来ないというのに、心配しない親がおるか!」


「……我が子? この命の宿っていない鉄くずがか? ついでに聞くが、この鉄くず共に入った膨大な数の『魔力核』はどこで手に入れた? 返答次第では……」


 迫り来る機会兵達を『覇龍の大剣』が放つ炎熱で豪快に、なぎ飛ばしながら、依然として宙に浮かぶ男に問いかける。

 すると男は、不気味に笑い、


「そうだ、我が子だ。魔力核をどこで集めたか? 決まっているだろう。……元々、生物に宿る器官だ、もちろん、生物からさ。中でも、人の魔力核は純度がいい」


「貴様ッ……!!」


「ばああぁぁかぁぁああ!! ゼェゼェ、何も酷いことはしていない。こうやって、金属で出来た最高の身体に、生まれ変わらせてやってるんだからなぁ!? しかも、我々のような時代の開拓者の役に立つときた。これ程、元の人間達にとって、光栄なことはあるまい!」


「……外道が!! 『龍舞の一閃』ッ!!」


 あまりにも命の価値観がズレた男の発言に、怒りを顕にしたライフェナが大きく、男目掛けて跳ね上がる。

 そしてそのまま『覇龍の大剣』の刀身に宿した熱を、炎と共に男の身体に叩きつけた。

 が、それは男の背中から生えた機械が放った冷気により、威力を減らされてしまう。

 熱を掻き消された刀身は、敢え無く男の本物の手によって掴まれ、男はニヤリと笑いながら掴んだ刀身を、ライフェナ諸共、投げ飛ばす。

 

「……! なんだと!? ぐぅっ!」


 再び地面を黒く塗りつぶす機械兵の海の中へと、勢いよく戻されるライフェナの口から、小さく呻き声が漏れる。


「はっはっは!! 我を侮りすぎたな! 隙ありだ、やれい!!」


 ライフェナが投げ飛ばされた位置を中心に男の命に従い、素晴らしく統率の取れた動きで、機械兵たちは素早く取り囲み、次々と積み重なり、二メートルほどの山を形成する。


「しまっ……」


 どうにか抜け出そうとは必死に手を伸ばし抵抗するライフェナ。

 しかし、自分の身のことなどお構いなしに押し寄せてくる無数の機械兵の波を、十分に身動きの取れない状況で押し返すことができるわけもなく、慈悲なき冷たい鉄くずの中へとライフェナの身体は完全に埋もれ切ってしまう。


「これが我が最高傑作の力だ!! 王家のガキをころせぇぇぇぇえええ!!」


 男が天を仰ぎ、叫ぶ。

 その地面では、山となった機械兵たちが同時に妙な駆動音を立てている。

 そして大気を揺らす凄まじい音と衝撃とともに、ライフェナを取り囲んだそれらは――、


 ――爆散した。



※※※※※※※※※※※※



 立ち昇る黒煙と、そこから放たれる熱気。

 その光景を見下ろしながら男は笑い、自らが作った作品が素晴らしい結果を残したことへの喜びで身体を震わせる。


「はっはっは!! やったぞ、姫を一人、消してやった、我らが『黒』に栄光あれぇぇぇええええ!! ……さて、あくまでもサブプランではあるが、ほかの姫の消去も試みてみるとしようか」


「……おい待て。どこへ行くつもりだ」


「――な、ぐふぉおっ!?」


 黒煙を掻き分け、飛び出してきたライフェナに大剣でなぎ飛ばされ、地面を転がりながら変な声を上げる男。


「はあ、まったく侮っているのはどちらだ……しかも、自ら爆発させておいて『我が子』とはよく言えたものだな」


「馬鹿な! 爆発をもろに食らったはずだ!」


「ああ、食らったとも、存外、痛かった。だが、それだけで潰れる私ではない」


 男は、爆発の中心にいたはずのライフェナが軽傷で、自由に動けていることに驚愕の表情を浮かべる。

 

 ――とはいえこの数は厄介だ。であれば、やはり、あの男を倒すのが手っ取り早いな。


 しかし、それも一筋縄ではいきそうもない。

 直前の不意打ちの攻撃。あれは勿論、手加減などしていない。

 男と背中の機械諸共、ぶった斬ったつもりだったが、背中の機械が思ってた以上に硬かった。

 

「……こんなことなら、背中の機械など狙わずに、素直にあいつの身体だけを斬るべきだったか」


 ライフェナが小さく呟く中、背中の機械からモクモクと煙を出しながらゆっくりと立ち上がる男。

 

「それに、エリファ達を試したのも悪かった。此度の戦、私情を挟みすぎた。……これだから、団体戦は嫌いだ。私は()()()()()()()()()()()()というのに。団体では如何せん無駄な、いや悪行が目立つ」


「なにをぶつぶつ言っておる?」


「ああいや、すまない。()()()()()()()()に甘んじているなと、自己分析をしていた」


 戦闘の最中だと言うのにも関わらず、自己分析すること自体、状況に甘んじているのだが。

 しかし、この『確信めいた安堵』からくる油断は、意識しようと心掛けていても、なかなか消え去ってくれない。

 その戦にあってはならない油断、あるいは気の緩みが見え隠れしてしまった結果、エリファ達を長くここに引き止めてしまった。

 今までに何度も、こう私情に塗れた行動をとった結果、あくまで一時的であるが、状況を悪化させることがあった。

 

 ――これは悪い癖だ。

 それは間違いないのだが、「悪い癖だ」と咎める人物がこれまでいなかったのも問題だろう。

 現に、悪いと気づいたのは、ついここ最近だ。

 それまでは別に、これを悪い事だと思ってすらいなかった。


「まったく、誰か教えてくれれば良かったものを。いつの間にか、いや、最初から、この恵まれた状況を当たり前だと勘違いしていた。恵まれているということすら実感しておらんかった……おっと」


 ここだと言わんばかりに、さっきまでの五月蝿さが嘘のように、一つの音も立てず背後から迫った機械兵を、ライフェナは造作もなく炎で焦がした。

 しかし少々、隙を見せすぎている自分にライフェナは「いかんいかん」と首を横に振って、鞭を打つ。


「ちぃっ……独り言を言っておるから、好機だと思ったが……」


「……とにかく、今は、個人行動だ。周りには、倒すべき相手以外、誰もいない」


 悪い癖というのも、集団で行動する時の話だ。

 むしろ、『覇龍の大剣』、『時跳びの魔術』の能力上、個人行動、特に個人戦闘では真価を発揮する。

 『覇龍の大剣』の炎熱は周りの人間を巻き込んでしまうし、『時跳びの魔術』は便利ではあるが、効果が自分の内だけに限られる。

 

 ――いや、違うな。個人戦闘が得意なのではなく、個人戦闘に縛られていると言っても過言ではあるまい。なんにせよ――、


「――相手だけを見ろ、ライフェナ・フラクトール・ホワイト。お前は、強い」


 そう言って、自らの前に構えた『覇龍の大剣』。

 その刀身から、この戦が始まって今に至るまで、見せたことのないほどの熱と、火焔を撒き散らす。


 離れた位置に立つ男が、確かな熱を感じ、目を細めながら身を仰け反るが、それを気に止めることなくライフェナは息を吸い――、



「――いくぞ、ここからは全力だ」



お久しぶりです。作者の異音です!

これからまたどんどん書いていきます!

新作の方はまだまだ時間がかかりそうです。

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