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プロローグ 『幽鬼の姫』
――幽鬼。
それは、所謂、ゴースト、あるいは霊的なもの。
だがこの魔法があり、魔物もいる世界では、恐怖の対象などではなくて、全く怖がられることはない。
むしろ、弱きものの象徴として、虐げられ、迫害された。
五百年前、とある森の奥深くへと逃げ込んだ幽鬼達は、自分たちの境遇を呪いに呪い、力を求めた。
他の生物に見つかれば面白半分に殺されていく同胞たち。
多大な犠牲を払いながらも、幽鬼達は決して諦めることは無かった。
ありとあらゆる呪いと、負の感情、長年の執念、それら全部をまとめても壊れることのない器に――、
一つの魂。
――今、世界に幽鬼の力を認めさせるため、人目につかぬよう集めたそれらから、『幽鬼の姫』は誕生する。