花園警管内 さくらんぼ狩り1-2
「課長は神城に甘いんですよ。」
大原警部補は、溜息をつきながらドサリと椅子に腰を下ろした。
「大原係長こそ、えらい怒っとるな。どうした。いつぞや、捜査車両を高速で大破炎上させた事故と比べたらかわいいもんだろう。」
「それがですよ、なんせあいつがクソガキの原付に差し込んだのは、私の警棒なんですよ!」
大原警部補は、無惨にもひん曲がった警棒を課長に見せつけた。
大原警部補の視線が岩山課長に移った隙をみて、神城はしれーっとその場を離れる。
「俺が壊したと思われるでしょう。せめて、やるなら自分のを使えってことですよ!なんでわざわざ俺のをーーーってオイ!神城ォ!」
神城の姿は遥か遠く、刑事課の出入り口扉にちょうど手をかけたとこだった。
「警棒はぁ、係長が当直席に忘れてたんですよぉー!」
手を口元に当ててメガホンがわりにする様子で、わざとらしく課内みんなに聞こえるように吠えた。
返事は聞かないとでもいうように、扉を後ろ手でバタンと閉め、神城は出ていった。
警棒や手錠などの装備は、鍵のかかるロッカーに収納する規則となっている。
それを怠った係長が悪いんですよーと言いたいのだ。
「警務には、俺から言っておくから。」
ラ王の目が、弱冠同情を帯びていた。