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友情の香り

第6回目 お題は「外反母趾」と「ワキガ」です。

外反母趾とは足の親指が小指の方へ曲がっていく症状の総称。

ワキガとは正式には「腋臭症」といい、主に脇から発生する悪臭のことを言います。

 人生とは不平等だ。

 高橋は常にそう感じながら生きてきた。特に得意な科目もなく、運動もそれほどできるわけではなく、顔も普通だ。そのため、学校ではいじめられることも無いが、だからといって華々しい学校生活を送るわけでもない、そんな存在であった。

 そんな高橋には、どうしても好きになれない人が2人存在した。それは、この学校で一目置かれているあるカップルだ。


「やっぱ、あの2人ってお似合いだよね。」

「私もあんな人と付き合いたいな。」


 学校の生徒は口々にそのカップルのことを噂する。スタイルがよく、顔も整っていて、勉強もできる。そんな完璧な2人が付き合っているのだ。まさに完璧なカップル。

 でも、だからこそ高橋は好きになれなかった。自分のように目立たない奴のことなんて、どうせあの2人の目には止まりもしないのだろう。そうやって妬んでは、自分の心が汚れていくことを自己嫌悪していた。


 ある昼休み、高橋が中庭のベンチに座って昼ご飯を食べている時だった。誰かが高橋を呼ぶ声が聞こえて、顔をあげると例のカップルが立っていた。


「え…」


 高橋はひどく動揺した。何故この2人が。しかもさっき僕の名前を呼んだぞ。と、えも言わぬ不安が高橋の中を駆け巡った。もしかしたら、いつも妬んでいるのが、嫌な顔して見ていたのがバレていたのかも知れない。動揺しながらも、高橋はそれを表に出さないように2人と向き合った。 


「やあ、高橋くん。僕は西城というんだ。よろしく。それと彼女は白石。」


 完璧カップル改め、西城君と白石さんは簡単に自己紹介をした。そして、以前から高橋と喋ってみたかったことを伝えてきた。


「な、何を言っているんだ。僕をからかっているのかい?」


 今置かれている状況が理解できず、高橋は2人を疑っていた。しかし、高橋の問いを2人は強く否定し、そして何故高橋と話してみたいと思っていたのかを教えてくれた。


 2人はある秘密を抱えていた。実は西城君と白石さんがちやほやされているのは、この高校に入学してからのことで、小中学校ではいじめられていたそうだ。もちろんそんなこと高橋には信じられなかったが、その理由も教えてくれた。

 2人にはある隠し事があったのだ。西城君はワキガに悩んでおり、白石さんは外反母趾らしいのだ。白石さんのお母さんはお洒落をするのが好きで、小さい頃から白石さんにもかわいい洋服などを着せていた。そしてハイヒールを履かされてりもしていたため、足先の発達に影響して重度の外反母趾になってしまったそうだ。左足の親指にいたっては、脱臼するほどにまで曲がっており、小学校ではそれが気持ち悪いといじめの対象になったそうだ。

 西城君は、ただただ脇が臭かったそうだ。


 華やかな彼らにそんな悩みがあったなんて高橋は知らなかった。ずっと悩み続け、辛い思いをしていた西城君と白石さんは、穏やかな学校生活を送っている高橋が羨ましかったそうだ。2人のことを妬んでいた高橋は自分を恥じ、正直に話した。2人とも笑ってゆるしてくれ、握手を交わした。

 さっきから何か独特なにおいがすると思っていたが、おそらく西城君の脇だろう。だが、そんなこと今は気にならない。


 人生とは不平等だ。


 高橋は今でもそう思っている。


 だが、不平等だからこそ、それぞれに尊敬できるところが生まれるのだ。


 そう考えられるようになったのは、あの2人と出会えたからだろう。


 十数年ぶりに2人に会えることを楽しみにしながら、高橋は待ち合わせ場所でそんなことを考えていた。




お題が難しかった。

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