スタンプラリーで一生を終えたい/アイドルのことは嫌いでも、オタクのことは嫌いにならないでください!
ある日の狩人は、シャッター商店街をさまよっていた。
何やらパンフレットを片手に、シャッター通りをうろついていたのだった。
(・・・俺は今日、観光がてら「マネキネコくん市」っていう名前がついた市にやってきた。そして、さっきそこの観光案内所でもらったパンフレットによると、え~なになに~・・・マネキネコくん市は市内を横断する一周27kmほどのスタンプラリーコースが大変有名で・・・)
そこまで手元のパンフレットを黙読できた狩人であったが、そこから先の文章は色落ちしてまったく判読できなかった。
「くっ、・・・あの観光案内所のオバちゃん、一体いつ製のパンフレットを俺にくれたんだ・・・」
そこで狩人はパンフレットを裏返す。
「・・・しかも、裏面黄ばみすぎだろ・・・なんかやだわ・・・」
そして狩人は、歩きながら左右を見つめる。
(にしても2km地点まで歩いてきたけど・・・ずっとシャッター街が続いてるし、見た感じ全然観光名所って所はないし、むしろ人がいない・・・ホントにただ歩いてスタンプラリーを集めるだけなのか・・・)
そこで、ふっと狩人は思い出す。
(そうだ、・・・観光案内所でパンフレットともう一個、音声ガイドの流れる携帯カセットテープをもらったんだった。そのガイドを聞けば、いろいろスポットとかわかるかもしれない)
カチャ
そうして狩人は携帯カセットテープを準備し、イヤホンを片耳につける。
音声ガイドが流れる。
ピン~ポン~パンポ~ンーー
(お、始まるぞ・・・!)
音声ガイド「・・・異世界からおこしの、勇者ドラゴン君。勇者ドラゴン君♪・・・お父さんがお探しです♪」
「いや!なんで、デパートとかの迷子案内が流れるんだよ!!つーか俺、迷子扱い!?」
音声ガイド「黒の目出し帽、防弾チョッキ、自動小銃をもった屈強なお父さんから、伝言を預かっています♪」
「どこがお父さんだよォッ!!?メチャクチャ、テロリストじゃねぇか!!」
超低音ボイスのお父さん「勇者ドラゴン。たった今我々はこのデバートを占拠した。このデパートを無事に返してほしければ、今すぐ2階婦人服売り場まで来て、我々とファッション対決を行い、勝つことだ。」
(なんで・・・。)
超低音ボイスのお父さん「・・・それと、下手な真似はしないほうがいい。我々がいかにして本気でファッション対決を挑みにきたのか、少し見せてやろう。」
そこで、少し声が離れる。
超低音ボイスのお父さん「・・・さぁ、そこの真珠のネックレスをつけたマダム。こっちにきてもらおう・・・・・・よし、そこで両膝をつけ。・・・聞いているか?勇者ドラゴン。これはお前の罪の証だ。今この瞬間、俺はサバイバルナイフを、抜いた。次にすることは」
「ま、まさか!?だめだ!や、やめろ!」
超低音ボイスのお父さん「ふうぅぅん!!」
マダム「きゃあああああああああ!!!・・・真珠がアアアァァァァァッ!!!」
超低音ボイスのお父さん「ハハハッ真珠のネックレスを、爆散させたぞ。・・・どうだぁ?これがァ・・・我々のぉ・・・本気だァ・・・・・・」
「いやいや、ややこしいわ!!やること案外軽いじゃねぇか!!あんたテロリスト向いてねぇよ!」
次の瞬間だった。
プツッ・・・プープープー
狩人がツッコんだ後、通話は一方的に切られてしまった。
(・・・メンタル弱えよ・・・やっぱ、あんた、テロリスト向いてねぇぜ・・・)
↓続く
音声ガイド「・・・ということでこの度は、マネキネコくん市にお越し下さいましてありがとうございます♪ただいまから、観光案内の音声ガイドをお送りいたしますので、是非とも、観光をお楽しみ下さい♪」」
(さっきまでの下りはなんだったんだよ・・・)
狩人は、そうツッコミながらも本題の音声ガイドに耳を傾け始める。
ちなみに音声ガイドは、いかにもといった感じの若い女性の自動音声だった。
音声ガイド「・・・私、今回観光ガイドを務めさせていただきます、ペリータと申します♪どうぞよろしくお願い致します♪」
(お、あれ・・・意外と本格的だ・・・・・・!これなら結構、没入感が出てテンション上がるなぁ~よし、ちょっと集中して聞いてみるか!)
ペリータ(音声ガイド)「早速ですが、まず観光前の初めに。マネキネコくん市をもっと御存知頂きたく、マネキネコくん市という”市”について、簡単にご説明させて頂きます♪」
(ふん、なるほど・・・確かに、名所だけを回る前にその土地の事を知ったら、何気ない場所でも楽しめるかもしれない・・・!)
ペリータ「マネキネコくん市という名前がつくことになった由来。・・・諸説ございますが、それは今から17年前に上映されたある一本の映画からとられたと言われております♪その映画は『マネキネコくんVSダルマさん』というーー」
(へぇ~特徴的な名前だなって思ってたけど、映画からとられてたんだな~・・・でも、なんだろ・・・何となく迫力がねぇ・・・)
ペリータ「ーータイトルの特撮映画でありまして♪その映画の感動のラストバトル♪人類の英知を集結し完成した巨大ロボ。マネキネコくんが、人類の悔しさの集合から生まれてしまった悲しき巨大怪獣ダルマさんを沿岸部の方へとジリジリと追い詰めまして♪」
「へ、へぇ~」
ペリータ「そして、最後ダルマさんはうっかりと、足を滑らせてしまい海洋へと転落♪どんどんと沈んで行ってしまい、その果てに海溝に挟まってしまい♪仕方なくダルマさんは眠りにつくというオチになるのです♪」
(シュールすぎる・・・)
ペリータ「そうした結果♪マネキネコくんは戦いに勝利したので、映画の舞台だったこの市の名誉市民を贈呈され、その記念で『マネキネコくん市』と名付けられたのです♪」
「サラッと現実に繋がってますけど!!?」
ペリータ「ちなみに♪マネキネコくん市の北東側に位置しております♪通称”黒い海”ですが、その黒い理由は、ダルマさんが目から流した墨汁と言われております♪諸説ございますが海洋汚染の悔しさに涙したという思いが込められているそうです♪」
「いや、どこまで現実!!?」
ペリータ「はい♪市についてわかっていただけたところで、次は観光スポットの案内でございます♪」
(・・・お、これだよ、これ~最初からこっちが本命なんだ・・・)
ペリータ「ここで非常に残念なお知らせをしなければならないのですが♪・・・現在、マネキネコくん市に観光スポットはござい♪ません♪」
「えぇ!!?」
ペリータ「数年前に当選したマネキネコくん市の市長、招徹さんがご自身の育毛剤にすべて市税を投じたため、犠牲として市はすべてシャッター街となってしまったのです♪」
「町を生贄に髪を生やしたのか・・・なんて・・・そんな・・・とんでもねぇ魔王だな・・・ッ!」
ペリータ「そのようなため♪おハゲさん人権擁護市として、マネキネコくん市のスタンプラリーを一周するごとに、なんと一本♪髪が生えるのでございます♪新たなお命の芽吹き、美しいですね♪そしてさらに嬉しいことに100週すればボーナスとして追加で8本♪ぜひ、フサフサを目指してがんばっていきましょう♪」
「えぇ・・・・・・じゃあ、もう帰ります・・・。」
ペリータ「・・・♪・・・・・・おハゲですね♪」
「いや!俺はハゲじゃねぇよ!!」
完
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ある日の狩人は、清掃のアルバイトをしていた。
ガラガラガラガラ・・・「えっ~と今日の、清掃場所はっと・・・」
狩人は歩道で清掃道具一式の台車を押しながら、片手でスマホの画面を見ている。
(最近、俺は清掃のバイトをして金を稼いでいる。・・・この仕事はアプリから毎日、清掃依頼の場所が指定されて自動で仕事が舞い込んでくるシステムだ。・・・待ってるだけで清掃依頼が入ってきて、結構便利なシステムなんだけど・・・・・・たまに、とんでもない依頼が入ってくることもある。昨日なんか、下水道を綺麗にとか指定されて、「いや!!無理だよ!!」って断ったりした。)
「お、でも今日は・・・よかったぁまともだ・・・ライブ中のアイドルの楽屋。これなら、普通にこなせそうだ。よし!じゃあ!早速行くか!」
そうして狩人は気合を入れて、ライブ会場に向かった。
ーー楽屋前。
「よし、ここの部屋だな。それじゃあ!始めると・・・」
狩人がドアノブを掴んだ瞬間だった。
センター系美少女アイドルA「いやー今日も、ホントくだんない一般人ばっかだったわー」
(えっ!!?中に誰かいる!?)
すっかり無人だと思っていた狩人は、咄嗟に開けるのをやめた。
好感度系美少女アイドルB「案の定、オタク全然見当たらなかったねー」
クール系美少女アイドルC「・・・激しく同意。」
(えぇっ!!ライブ中じゃなかったのか!?・・・アイドル、普通に楽屋にいんじゃん・・・どうしよ・・・これじゃあ清掃ができない!・・・・・・くぅっ・・・でも、指定された時間は間違ってないもんなぁ・・・)
センター系美少女アイドルA「でもさ、今日の一般人共らの顔みた?あたしら、ちょうーやる気0で、振り付けもタコ踊りして、口パク全開で歌詞ずらしてやったら、めっちゃッ唖然としてたんだけどwもう我慢できなくて、舞台上で思わず吹いちゃったもんwオタクがいねぇなら一曲もやらねーよって安定の早退w」
好感度系美少女アイドルB「にしてもさー地下アイドル時代のオタクたちみんなどこ行っちゃったんだろ・・・メジャーになってこんなにオタクいなくなっちゃったら、私たちずっと地下アイドルのほうがマシだったよねー」
クール系美少女アイドルC「・・・でも、皮肉なことに一般人共らに・・・受けてしまった。」
(いやいやどういう!!?)
扉越しに聞こえてくるアイドルたちの会話に狩人は困惑する。
センター系美少女アイドルA「ほんそれ!一般人共らってホントそういうとこマジでわけわかんないよね。ね、覚えてる?あたしたちが、初めてメジャーデビューした時のこと?ドームでさ、三万人のオタクが広がってるって抑えられない胸の高鳴りの中、舞台裏で待機して、いざ舞台上にでたら、はぁ?って思わずマイク通してフリーズしちゃったよね~」
(なんかいろいろと真逆すぎんな!?)
好感度系美少女アイドルB「あーあれね。最悪のデビューだったよね。よりオタク、もっとオタクを求めて、3人でメジャーデビューしようって決めたのに、あんなゴキブリの巣窟みたいな熱狂した一般人共らを目にしたら・・・もうね・・・あの後しばらく三万人の一般人共らの光景がトラウマで、嘔吐止まらなかったもん。それで一時期、ガリガリだった時の自分の写真とか見たくないぐらい。」
(こ、好感度どこいったあああああぁぁぁ!!?)
クール系美少女アイドルC「・・・何とか我慢して半分までライブこなしたけど、限界だった。でも、アンコールがきてしまった。悪魔のような歓声が忘れられない・・・。」
(えぇ!盛り上がったのかよ!!?)
センター系美少女アイドルA「・・・そうそう!あったあった。あの日アンコールも無視して、こっそり抜け出して帰りのバスに乗り込んだらさ。なんか一般人共側の記者にやられちゃったんだよね」
(どういう派閥分けだよ・・・)
好感度系美少女アイドルB「あれ、そういえばネットニュースになったんだよね確か。」
クール系美少女アイドルC「私、あの記事保存してる。」
クール系美少女アイドルCは、迷彩リュックからスマホを取り出し、2人に見せる。
クール系美少女アイドルC「『激辛!!痺れる!!デビューライブで早退!爆誕!1000年に一度の3人組ユニットアイドル現る!!ーすべてのアイドルをただの小娘にさせるー』っていう見出し・・・・・・うっ、やっぱ一般人共らってキモチワルイ・・・」
センター系美少女アイドルA「うっわぁ・・・そう、この記事がさらに一般人共らに響いたんだよね。最悪だし。おかげさまで、さらにオタクが遠のいたっていうね。はいーおっつー」
好感度系美少女アイドルB「あの記事書いた記者は、マネに言って消してもらったんだけど、一度ネットに上がった記事はどうしようもないし・・・なんかスッキリしない・・・はぁ、オタク・・・恋しい・・・」
(いろいろとやべえぇよ!!)
マネージャー「ちなみに私は重度のアイドルオタクで、彼女たちを献身的に支える召喚獣みたいな存在です!アイドル・最高!アイドル・神!アイドル・森羅万象!(ガッツポーズ)」
そこでアイドルたちの会話が一旦、もの悲しく途絶える。
その後だった。
センター系美少女アイドルA「あーーーーーオタクーーーーどこにいるーーー!一般人共らのゴミスマホよりオタクの神一眼レフーー!コミケで囲まれたかったな・・・『パイズリポーズ!お願いしまーす(ニヤニヤ』とかも言われたかったなぁ・・・」
好感度系美少女アイドルB「ちょっと、そんなこと言わないでよ・・・私だってオタクと一緒に全国の時刻表集めて、手繋いでせーので一緒に乗り鉄とかしたいよ・・・」
クール系美少女アイドルC「・・・オタクと一緒にネトゲーして、ボイスチャットで将来について語り合いたい・・・子供を何系のオタクにしたいとか。あ、あとサバゲのフィールドデートもイイ・・・。」
とそれぞれの願望を口にする。
「いやいやホントにアイドルの発言カヨォッ!!?・・・あ、・・・しまっ・・・」
狩人は思わず、声を出してツッコんでしまった。
すると廊下の曲がり角から、身長3mの黒スーツの警備員が現れ、猛ダッシュしてくる。
警備員「チョット、チョット・・・ソコノ、ユウシャサン!!・・・ココ、カンケイ、シャ、イガイ立ち入り禁止!!禁止!!マサカ、ヌスミギキィ!!?」
「あ、え、いいぇ、俺は違うです!俺はただせ、清掃にきただけで・・・!!」
警備員「ヌスミギキ!!ユウシャイエドモ、トテモ重罪!!重ゥゥゥザァァァァァァイ!!」
「ち、ちがうですってええええええ!!お、おれは、ただアイドル楽屋の清掃の依頼でええぇぇぇ!!てか、でかい!でかすぎる!コワすぎるううううぅぅ!!」
3m黒スーツの警備員の迫力のあまり、狩人は台車ごと逃げていく。
黒スーツは猛ダッシュで追いかけていく。
ガチャ「・・・・・・」
そこで騒ぎを聞きつけたアイドルたちがドアを開けて、楽屋から姿を現す。
センター系美少女アイドルA
好感度系美少女アイドルB 「勇者とか・・・キモッ」
クール系美少女アイドルC