ブボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ
ある日の狩人は車の教習所へ来ていた。
(今日は、運転免許の受験にきた。どうやら、この世界では何歳でも乗ることができるらしい。ゲームの世界であろうが、歩き疲れた俺にとって交通手段が今もっとも重要だ・・・・・・ゴクッ、それにしても緊張するなぁ・・・)
そのような事を考えながら、狩人が1人待っている時だった。
ブボボボボボボボボボ・・・
一台の高級車が狩人の前に止まる。
(いきなり高級車かよ・・・)
ブボボボボボボボボボ・・・バタッ!
扉が開き、1人のおっさん試験官が出てくる。
ブボボボボボボボボ
「・・・はい、あなたが今日の受験者、勇者ドラゴンさんで間違いないですね。」
ブボボボボボボボボボボ
「あ、はっはい!今日はよろしくお願いします。」
ブボボボボボボボボボボ
「えぇ~と、それではですね。」
ブボボボボボボボボボボ
「早速、試験を始めていきたいと思うのですが~」
ブボボボボボボボボボボボ
「まずはその前に~」
ブボボボボボボボボ
(エンジンうるせぇよ・・・)
ブボボボボボボボボ
「あぁ、そうでした。」
ブボボボボボボボ
試験官は、忘れていたエンジンを切って、狩人の方を向く。
・・・・・・
「ブボボボボボボボボボボボボ・・・」
「・・・いやいや!!お前がエンジンになってんじゃねぇ!!なんで、エンジン切ったらドライバーがエンジンになるんだよ!!・・・つーかここまで、どんだけエンジン音が占めてんだよォッ!?呆れるわッ!!」
「はっ、あ、おぉっと、これは失礼しました。エンジンの守護霊が私に乗り移ってしまいました。ついつい油断していると私を乗っ取られてしまいます・・・アハハ」
(くっ、こっちは緊張して受験しにきてるっていうのによ・・・ちゃんとやってくれよ・・・)
「エンジン、ニンジン、エジソン・・・見分けがつきますか?」
「やかましいわ!!さっさと進めてくれよ!!」
「ハハ、私なりの受験者を和ませるための持ちネタです。・・・緊張は解けましたか^^」
(・・・・・・バカにすんじゃねぇ・・・)
そこで試験官はチェックシートを取り出す。
「取り直しまして、えぇ~それでは、乗車試験の前に~まずは私との面談をしてもらいたいと思います。」
(や、やっと始まったか・・・いよいよだな・・・)
パチン!
(・・・?)
試験官が指ぱっちんをすると、コップに入ったメロンソーダが空中に出現する。
「これを飲みながら、面談をしましょう。」
(えらく、ゆったりと・・・)
狩人がコップをとろうとした時だった。
「ハイ、バシャアアアアン!!」
「うわぁッ!!・・・・・・ちょっちょっと!!一体何するんですか!!」
試験官が2人分のコップをはたいて、メロンソーダが高級車のボンネットに派手にこぼれてしまった。
フロントガラスには、アイスがべったりと、くっついている。
「はい、ここで尋ねます。・・・この高級車の値段は5000万円です。今、そのボンネットの上には、メロンソーダがこぼれています。勇者ドラゴンさん、あなたは、このメロンソーダをすすりますか?」
「(くっ、急に・・・けど、真面目な雰囲気だし、答えるか・・・)じょ、常識的に考えれば、そ掃除して、綺麗にするだ、だけですよ・・・すするなんてとんでもない・・・」
狩人は緊張しながら答えた。
・・・
「ブボォォン!!正解です!!・・・素晴らしい~・・・」
「いっ、一体・・・これは・・・」
「えぇ、勇者ドラゴンさん、あなたは人としての尊厳があると認められたので、乗車が認められました。」
「・・・な、何を試したんですか!?」
「えぇ、さっきの質問は、ドライバーになるに当たって人としての尊厳を失っていないかどうか?というものでした。・・・・・・少し余談をしますと、凡クラの平民受験者は、5000万円の車にこぼれてしまったメロンソーダをM字で飛び乗り、ぺろぺろと舐め始めるのです。あるいは、吸引器のように吸う。ただのこぼれてしまったメロンソーダなのに。これはいけない悲しいものです・・・。」
「へ、へぇ~・・・・・・。」
「我が教習所のモットーとしては、100の鉄くずより1の人命・・・これを大切にしています。そのためには、人としての尊厳が非常に重視されるわけです。・・・人としての尊厳が、たった5000万円の鉄くずより低い・・・そのような受験者は1発失格にしているわけです。」
(ツッコミたいけど、なぜかツッコめねぇ・・・)
「安心して下さい。失格者にも人としての尊厳を取り戻してもらうために、我が教習所では、更正講座を設けています。・・・これまたウハウハです。」
(あ、あれッ、いつもと違って緊張のせいか、ツッコミが浮かばない・・・ッ!)
「例を挙げますと講座を受けた、ヤンチャな兄ちゃんさん受講者には、10ヶ月間の人力車になってもらいました。・・・あぁ~懐かしいです。」
ーー試験官の回想が始まる。
「クチャ、クチャ、俺が失格だと、うん、だとコラーテメー!!喧嘩売ってんのか!?ぺろぺろ舐めて綺麗にするのがどこに問題があるんだよォ!?5000万円の味最高じゃねぇかよ!!ペエッ!!」
ヤン兄の噛んでいたガムが、試験官の顔にくっつく。
「君は人力車で引っ張りなさい。」
「はぁ?・・・はぁ!?お、俺にいつの間に、人力車をッ・・・!!」
ヤン兄の人力車は、準備完了していた。
「では、みなさんお願いします。」
「・・・ごっつぁんです」
その挨拶と会釈と共に、次々とヤン兄の人力車に力士たちが乗っていく。
それは100人まで続いた。
「ふ~ん、これぞまさに力士のトーテムポール・・・総重量100t・・・力士たちを積む積むしちゃいましたね。」
「お、おかしいだろ!!お、重い、重いってばァァッ!!」
ヤン兄がガチギレで叫ぶ。
「100人乗っても大・丈・夫!!な人力車ですから壊れることはありません。さぁ、レッツゴー!レッツゴー!!人としての尊厳を取り戻しましょう!」
「て、テメェ!!オイコラ!!マジで、ふざけんじゃ・・・!!」
そこから10ヶ月・・・
「うぅぅ・・・グスッ、もう膝が、膝が壊れたよォォッ・・・うごけぇぇ、うごけって!!マジで!!・・・人としての尊厳ってこんなに尊いものだったのかよぉぉぉ!!」
最終日ヤン兄はガチ泣きで、崩れていた。
そこに試験官が現れ、励ましの声をかける
「さぁ、後1kmです。・・・後ろの力士さんたちも応援しています。」
「うはああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ヤン兄のガチ泣きが街中に響いたのだった・・・。
ーー「・・・という思い出深い受講者がいました。」
(もう、どうしていいか俺にもわかんねぇわ・・・)
狩人はツッコミを諦めた。
「その後、彼は立派に馬の調教師になりました。ヒヒーン!!」
「どういう流れだよ!!脈略なさすぎだろ!!あと、ヒヒーンって何ッ!?ふざけてんの!?」
「さ、話はこれぐらいにして、早速、乗車しましょう、勇者ドラゴンさん。」
「あっ、はっはい!」
バタンバタン!!
狩人と試験官は高級車に乗る。
「はぁ、やはり何度乗っても乗り心地最悪ですね・・・」
(ま、マジか・・・この座り心地が・・・教習所の人ってすげぇ・・・)
「たった5000万円の鉄くず・・・車庫に入れる価値もありません。・・・ハハ、だから鳥の糞だらけで塗装もはげてたでしょ?」
「そ、そりゃあ、・・・さっきみたいなこと・・・ゴモゴモ・・・」
「それに比べて、我が教習所の車庫を見て下さい。・・・戦車が入っています。」
(ここはホントに、教習所かよ・・・)
「まさにあれこそ他の鉄くずとは比べものにならない、車!!洗車する価値があるってもんですよ!!アハハ!!」
(た、確かに・・・戦車は5000万よりもっとしそうだもんな・・・)
「じゃねぇ!!さっきから聞いてるとおかしいでしょ!!ここホントに車の教習所ですか!?」
「・・・?勇者ドラゴンあなたの試験番号は?」
聞かれた狩人は名札を取り出す。
「え、えーっと・・・007です。」
「は~ん、なるほどねぇ~」
(何を納得してんだよ・・・)
試験官が顔を隠す。
「ヤツらは、空から見ている・・・気をつけろ・・・」
(め、めんどくせぇ・・・)
「この場所がヤツらを強襲・・・おっと教習所ってことはバレてないはずだ。」
「もはや自分の世界に入りきってんなァ!!(・・・ほっとこ)」
「はい!!雑談終了!!・・・ところで運転する前に、勇者ドラゴン・・・あなたは車の歴史をどこまで知っていますか?」
「あっ、えっ!!(や、ヤバい、何も答えられねぇ・・・くっここは・・・)・・・え、偉い人が発明したんだと思います(キリッ)(な、なんてバカな回答を俺は答えてるんだァァッ!!)」
「ブボオオー!!はい、違反点数一点とし、減点です。」
試験官がチェックシートに書き込む。
そして狩人へのダメ出しが始まる。
「なんですか?偉い人が発明って?・・・この世にあるものは、すべて偉い人が発明したに決まってるでしょ。・・・偉くない人が発明したものってあるんですか?君みたいな人が発明しているのは汚物だけでしょ。やーい汚物マン!!」
「ぐおおおおおおおお!!や、やめてくれええええええ!!(自分でも恥ずかしいし、メチャクチャダメ押ししてくるし、急に圧迫試験になってるし、ま、マジで緊張では、吐きそう・・・グオオオオオオオオ)」
狩人は心に汚物を発明した。
「ハァ・・・軟弱者・・・」
(グオオオオオオ!!・・・ガハッこ、これが・・・グオオオオオ!!)
狩人は弱かった。
1分後。
「はぁ、ちなみに車の歴史は古いのですよ。時は、縄文時代・・・狩猟の効率に関わる交通手段として・・・」
「時代ぶっとんでんなァ!!うっ・・・また」
「それから時は、鎌倉時代・・・武家社会においても、マイカーの所持でその身分が大きく・・・」
「ハァ、ハァ、ハァ・・・だからァ!!じ、時代がァッ・・・うぉっ・・・また・・・」
「それから時は、江戸時代・・・参勤交代では渋滞の車列ができたということで・・・」
ーー江戸時代
プープープープー
江戸へと渋滞が伸びていた。
排ガスの中、ごんでん八郎飛脚が走っていた。
「てやんでぇ!!てやんでぇ!!・・・うっ、ふんどしが・・・」
江戸城
「しょ、将軍さまあああああ!!」バサァァァン!!
忍者がふすまを破壊して、将軍様のところにきた。
「どうした!!無能!!」ファサ!!
将軍様が、扇子を広げる。
「え、江戸中に排ガスがァァッ!!公害ですゥゥッ!!公害ですゥゥッ!!」
「ナ、ナニィィ!!よし、大砲を貸せ!!」
ガラッ
将軍様が大砲を持って天守閣に出る。
「憎き渋滞め。鉄くずもろとも、この将軍様が成敗してくれる!!・・・大江戸天守閣黒船なぎ払いビィィィィィィム!!どりゃああああああああ!!」
プウウウウウウズドオオオオオオオオォォン!!
将軍様の放ったビームで、すべてが吹っ飛んだ。
無惨な光景が広がっていた。
「ふぅ、これぞ一騎当千!!」
ーー「と、将軍様は呟いたそうです。」
「いやいや!!ツッコミ放題の天国だな!!もはや分身してーぐらいだわァ!!・・・うっ」
「・・・それにしても、今日のところは発進するのは止めときましょう。勇者ドラゴン、あなたの乗り物酔いが酷すぎる。乗り物酔いを対策してこない。はい、ブボオオー!!違反点数2点とし、減点です。・・・・・・ハァまた、やる気があるなら、この教習所にくるといいでしょう。はい、よーパン!!一本締め、ありがとうございました。」