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画面の中から出てこいやァッ!!

ある日の狩人は、公園にやってきた。


「はぁ・・・朝からただ歩き回ってただけだな・・・・・・よっこらせっと。」


狩人はベンチに座る。


(シャッ!テンション上げていくか・・・)


「誰にもエンカウントせず、ただ1人歩き続ける日々だけど、最近になって楽しみができた。それは、何とジャジャーン!!」


狩人はポケットからスマートフォンを取り出す。


「このスマホの中に入っているアプリ、その名も!!『ドキドキッ!スマートカノジョ』ってのに最近ハマっている。・・・早速起動するか・・・ポチ、ポチと。」


アプリが起動されると、画面の中に高校生の女の子が映し出される。


「・・・あ!ドラゴン君!戻ってきてくれたんだねっ!・・・エヘヘ//嬉しいな//」


(そう、実にスマホの中に彼女ができるという、俺にとっては何とも生きる活気が湧いてくるアプリだ。・・・この世界に来て初めて希望を感じるぐらいだ。)


「ナニナニィ~ドラゴン君、今嬉しそうな顔してたでしょォ~」


「あ、え、あぁ、そ、そうかなぁ~。」


狩人はニヤついた顔で答える。

それに対し、彼女は考え込む素振りを見せる。


「・・・う~ん、まぁでも、あんまり勘違いはしないでほしいかなァ~。」


「え、えぇ?それってどういうこと・・・?」


狩人は困惑と不安な表情を見せる。

対して、彼女は毅然とした表情で正面を見る。


「・・・この作品って女子が圧倒的に少ないじゃん?だから、私は無理矢理こういう役回りをさせられたっていうか・・・こうでもしないと登場できないっていう感じかなっ!エヘヘ//」


(う、裏側見えてんぞ・・・)


「えぇ~、そんなツッコミつまんない~!・・・ドラゴン君ならもっとおもしろいツッコミできると思うんだけどな~」


彼女は期待の眼差しを送る。


「あ、え、えっと・・・(メチャ、ハードル上げてくんな・・・っていうか華麗にスルーされた・・・)」


狩人は必死に考える。

数秒後


「パ・・・パンチラ!!し、してるぞォッ!」


狩人はやや照れながらもツッコミを入れた。


・・・・・・


「・・・あれっ」


狩人は画面を直視する。

彼女は俯いて黙っていた。


「な、なんか、ごめん・・・」


彼女との恋愛度が下がった。


「ごめんなさい。」


彼女との恋愛度が下がった。


「はい、もう二度といいません。」


彼女との恋愛度が下がった。


「・・・う、うおおおおおお!!どんどんと恋愛度がアアアァァ!!」


狩人は頭を抱えて叫ぶ。

彼女との恋愛度が下がった。


(ダ、ダメだ・・・今は何を言っても、下がっていくッ!こうなれば一度再起動だッ!!)


彼女と

狩人はスマホを再起動する。

そこからもう一回アプリを起動する。


「このアプリでのやり取りは、私と君の2人だけの、プライベートだから、ぜったい、ぜっっっっったい動画サイトに上げたり、ライブ配信はダメだからねっ!・・・それと黙って、スクリーンショットを撮ることもぜったい、ぜっっっったい禁止!・・・いい?万が一破ったら、私の実家で話し合いだよ!」


(改めて聞くと、世界観に溶け込ませた警告だな・・・)


「あっ、ドラゴン君。しばらく会ってなかったけど元気だった?全然、会いに来てくれなかったから寂しかったよぉ~もうプンプンだよぉ!」


彼女はすねた表情をする。


「アハハ、ご、ごめんってぇ~・・・(よ、よかった。さっきの記憶は消えてる・・・!)」


「久しぶりにドラゴン君と会ったことだし、なんか欲しいなぁ~」


「あ、な、何が欲しいのかな?今、手持ちのプレゼントアイテムには、オヤジの靴下があるけど・・・(ログインボーナスで1000個も溜まってやがんだ。さすがにもう受け取ってくれ。)」


彼女は考える素振りを見せる。


「う~んとねぇ~・・・じゃあ、今、期間限定プレゼントガチャやってるから回して欲しいなぁ~」


(くっ、やっぱり出してきやがったか・・・このアプリは、上位のプレゼントアイテムには、ガチャシステムを採用している。そして、ことある度にシレッとガチャを回して欲しいとおねだりしてくる。・・・何ともまぁ良く作られたシステムだ。頼まれたら断れない心の脆弱性を突いた方法で貢ぎ物をさんざん間抜けな男たちから・・・


「うん、いいよ!!(ち、違ぇ・・・俺は一体何をッ・・・!!)」


「ありがとー!!エヘヘ//今、最高に嬉しい!!」


彼女は笑顔を見せる。

狩人はアホだった。


ガチャ画面


「お~い!ドラゴン君!これこれ!このガチャだよ!・・・今限定のバージンロードガチャ」


彼女は真横に立って指差しする。


「えぇと何々・・・このガチャで最上級アイテム、ウエディングドレスを引き当てた方には、彼女を永久開放することができ、何と今なら上級クラスの家具一式アイテムと指輪がついて・・・永久開放ォォッ!?」


「うん//そうだよ・・・//」


「え、えっとえ、え、え、え、え永久開放って、彼女を一生・・・」


「もう~//言わなくてもわかるでしょ//・・・は、恥ずかしいなぁ~・・・//」


「ま、マジか・・・」


「うん//・・・もし私を永久解放してくれたら、今有料のスクリーンショットも無料になって・・・そ、それと//・・・セ、セ」


「セ、セっ・・・!?」


狩人は鼻息を荒くする。


「セクシーショットも解禁になるんだ//」


「・・・・・・。」


「あれ・・・?ドラゴン君、もしかしてそれだけじゃあダメなのかな・・・?」


彼女は物悲しげな表情をする。


「・・・そ、そんなことない!!そんなことないよ!!・・・うん、嬉しい!!セクシーショット嬉しい!!チョー嬉しい!!セクシーショットサイコー!!」


「・・・よかったぁ~!!喜んでもらえないかと思っちゃったぁ~」


「よ、よぉし~、ガンガン、ガチャを回していくぞぉ~。有り金全部使ってでも・・・あ、でもそれでも当たらなかったらど、どうしようか・・・」


「大丈夫!!」


彼女は励ましの笑みを見せる。


「えっ?でも、俺ってただでさせ運ないし、ここに書いてあるウエディングドレスの排出確率は、無職が宇宙を飛び越えて宇宙になる確率ってよくわかんないし・・・そんなのカードバトルの主人公並みの引きなんて俺はもってない・・・」


狩人は落ち込み始める。

その時だった。


「ドラゴン君!!」


彼女は懸命の呼びかけをする。


「はっ!?」


狩人は我に返る。


「私がついてるんだよ?ドラゴン君ならきっとやれる・・・。それに私も協力するから!」


「それって・・・」


「金融会社に申し込んでおいたから後は、回し続けるだけ・・・それに分割、金利手数料はこっちで負担するから・・・永久開放した後、私と一緒に頑張って働いて返していこっ?ねっ?」


「か、彼女・・・」


狩人は涙目で感動し始める。


「うおおおおおお!!俺は勇者として生まれたァァァ!!ここで天命を知ったのだああああ!!うおおおお!!ガチャを引くために生まれ、ガチャに生きるのだああああ!!俺がガチャだああああ!!」


狩人はガチャを始める。


「がんばれーがんばれードラゴン君!がんばれーがんばれードラゴン君!」


彼女はチアリーダー姿になって応援し始める。


ガヤガヤガヤ


そして、その時公園に昼間の散歩をしにきた園児たちがやってきた。

その先頭にはセンセーがいる。

園児たちは、ベンチに座り一心不乱にガチャを回し続ける狩人の前に並ぶ。


「アオリセンセー!!ガチャ回してるおにいちゃんがいるー!!」


「あーホントだー!!」「すごーい!!」「センセーぼくもやりたいー!!」


(くっ・・・大抵、不審者を見る目は、子連れの母親がメジャーだろ・・・なんで、こんなに大量なんだよ・・・)


狩人は、ガチャを引きながらもツッコむ。


「ハーイ、みんなー・見ちゃダメです・よー!!おにいちゃんの邪魔になるから・ねー!!」


「なんでー?」


「おにいちゃんは、いまとっっってもがんばってるから・よー!!ふれないで・おこうね~!」


(ち、チクショウ・・・メチャクチャ反面教師にされてやがる・・・まぁ、この子たちの今後のためになるなら、仕方ねぇ・・・)


狩人はチラッと園児たちを見る。


「あっ!ドラゴン君!!ダメだよ!!集中して!!」


彼女は狩人にアドバイスをする。


「あ、う、うん」


「センセー、ぼくママとパパから聞いたことがあるんだ。ガチャでがんばることは、無意味だって。はさん?してようやく気づいたって、言ってたよー!!」


(メチャクチャやってたな!!オイ!)


「そう・よー!!・・・・・・みんな初めは希望を見せられて、最後はね・・・絶望するのよ・・・。これが世の常・・・。大人たちは、そんな灰と焼かれた痛みでできている悲しい闇の生き物なの・・・。」


(何かあったのかよ・・・)


「だから、火星組のみんなは・ねー、おにいちゃんみたいになっちゃ・ダメですよーー!!」


「えらくクールだな!!SF映画か何かかよ!!というか、センセーはそんだけ闇を醸し出しておきながら反面教師じゃないのね!?」


狩人がついに口でツッコんだ。


「はーーーーい!!ぼくたち、わたしたちは、光の生き物として常に輝いていくことを胸に誓います。どんな困難でも屈せず、周囲と協力し、希望を見いだし、心に花を咲かせ、明日を前向きに歩み続けます!!」


「いやいやいや!!物わかり良すぎだろ!!てかっ!!急に成長してんじゃねぇ!!どこからそんな文言が出るんだよ!!見習いたいわ!!」


狩人がついにベンチから立ち上がってしまった。


「あーーーー!!おにいちゃんが立ち上がった・ねーー!!火星組のみん・なーーー!!鬼ごっこの時間だよーー!!こわいこわ~いおにいちゃんから逃げ・ろーーー!!危なくなったら、やさしいお家に飛び込めーー!!」


「キャーーー!!」


園児たちとアオリセンセーは瞬く間に散っていた。


「・・・・・・。」


「・・・ハァ、く、クソォ・・・俺の闇はまだ全然小せぇことを知っとけよ・・・。」


「ドラゴン君は、まだお子様のように一皮むけてないもんねっ!」


彼女が笑顔で言う。


「確かに、俺は勇者といえどもまだまだ・・・ってどういう意味ッ!?」


そして狩人はベンチに座る。

次の瞬間だった。


パラララーン!!


「はっ!!き、きたああああ!!ウエディングドレスまさかのきたあああ!!やった!!やった!!彼女やった!!永久開放だ!!これで一緒に・・・」


ウキウキで狩人は画面を直視する。


「・・・あれ?彼女がいない・・・」


空しくBGMだけが響く。

その時だった。


「・・・えぇ~とおにいさんが勇者ドラゴンさんで間違いないですかね~。・・・わしらは、取り立て業をやっとるもんですわ。」


公園にYAKUZAが5人やってきた。


「じゃあ、さっそく支払ってもらいましょうかねぇ~。」


「な、なんのことでしょうか・・・」


「アァン!?・・・えぇ覚悟ですわ・・・おにいさん。ほんならちょっと痛い目にあってもらいましょうかァ!?」


YAKUZAは日本刀を取り出す。


(どういう展開ですかねぇ・・・コレ・・・)


YAKUZAの1人が日本刀を地面に転がす。


「えぇか?・・・おにいさんとわしで3本先取したほうが勝ちや。はよ、ポントウ拾えや。」


「なんで試合形式なんだよ!!」


「アァン!?・・・なんや、おにいさんポントウ派じゃなかったんかい。ほんなら西部劇のようにチャカの早撃ちで決めましょか。」


(武器の問題じゃねぇよ・・・)


「あぁ、なるほどなぁ。あのな、わしらはリンチ嫌いや。後ろのヤツらは、ただの(役者)事務所から派遣されたエキストラや。支給は交通費と昼の弁当だけや。こういう現場でミッチリと演技の勉強していかな、なぁ。・・・手はださん、安心せい。」


(なぜ、待遇語った・・・ってか面倒見いいな・・・お疲れ様です。)


「くっ、仕方ねぇ・・・」


狩人は、落ちている日本刀を拾いにいく。

その時だった。


「もろたでぇ!!・・・隙ありやあああ!!」


「な、ナニッ!!」


シュッシュッシュッ!!


「ぐ、ぐわあああああああ、ふ、服がああああああ!!って、何裸にしてくれてるんだよォッ!!痛めつけるんじゃなかったのかよ!!・・・恥ずかしいわ!!」


「な?裸になって恥ずかしいやろ?・・・心が痛むやろ?・・・その痛み、大切にしいや・・・ほなな。あ、後の取り立てられへんかった分は、このスマホの中の彼女さんで代用や。彼女もろていくで。・・・いつでも助けにくるんやったら、きいや。相手したるわ。ここから国道沿いに数十キロ歩いて、バスに乗り換えて、大仏前で下りる。そこから大仏さんのすぐ隣に、セーブポイントあるから、セーブした後は、港に向かうんや。そこで待っとったら、フェリー来るわ。それに乗るといろんなとこ観光できるわ、楽しいで。ほんでや、その最終日がわしらの城や。・・・そしたら、そこで旅を通して成長した君と、いい酒を交じえたいもんやな・・・。」


そう言い残しYAKUZAとエキストラは公園を後に(撤収)していく。


(意味わかんねぇ・・・)


その時、後ろ姿のYAKUZAの持っていたスマホ画面が点く。

そこには、彼女があっかんべーをしている姿があった。


「なんか綺麗にまとめたつもりかもしれませんけど・・・・・・まったく収集ついてねぇからな!?」




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