リュック・・・それはカンガルーの袋♡
―次回の運、これって一番大事ですよね!?―
ドクター「まぁ、私がサイコパスであることはさておきですね。ゾンビ化が確定したウォレッシュさんには一応、お薬の方を出しておきますね。」
そう言うとドクターは目の前の引き出しを開けてあさり始める。
イザベラ「えっ?だってゾンビ化はもう止まらないんでしょ?・・・それなのに今更薬だなんて!」
ドクター「えぇおっしゃる通り進行を止めたり遅らせたりというのは私どもの医学では不可能なのですが・・・あれどこ入れたっけな・・・そのいわゆる、あっ!いやこれは『ベレッタ』だ。違う。・・・あの~まぁ、あれですね末期医療用のお薬って感じですね。ゾンビ化になる苦しみを抑える用です。・・・あれ、ナース!『コルト・パイソン』ってどこにあるんだっけー?」
ナース「確か今は先生が身に着けているはずです。」
ドクター「あ!そうだった!・・・ありました。これです。」ゴトッ
ドクターはケツポケットからコルト・パイソンを机に置いた。
イザベラ「キャアアアァァアアア!!銃!!銃!!この人ドクターなのに銃持ってるうぅううう!!」
ドクター「ちょっと。ちょっと静かにしてください。ここ病院ですよ?他の患者さんに迷惑です。・・・撃ちますよ?」
・・・・・・
静かになった後、ドクターは説明を進める。
ドクター「はい。えっと、このお薬は見てお分かりの通り回転式拳銃で、弾倉をこうやって動かして6発の弾丸が入ります。そして弾丸を入れた後は弾倉を元に戻し銃口を自分の頭に向けるのもいいですし、口を開けて口内に突っ込んでもいいのですが、とりあえず銃口をご自身にピタッとつけて頂いて後は引き金を引くことで服用していただくことになります」
ウォレッシュ「先生、そのコルト・パイソンはいつ服用すれば?」
ドクター「そうですね~。明確にいつとは決まってないのですが、出来れば理性のあるうちが望ましいかと思います。タイミングとしましては、例えば人間を見てあ~食べたいなぁ~とか、人肉とか血液の臭いに興奮してしまうといった自覚があるうちに、服用して頂くのがよろしいかと。」
ウォレッシュ「わかりました。」
ウォレッシュはコルト・パイソンを受け取った。
ドクター「もし万が一、ご自身でコルト・パイソンの服用を逃してしまった場合、そちらの奥さん、イザベラさんがウォレッシュさんに服用させていただくことになるのですが、その場合は銃口を相手に向け・・・」
イザベラ「ちょっと私、この人の奥さんじゃないんだけど。」
ドクター「え?・・・あ、そうなのですか。てっきり私はウォレッシュさんの奥さんかと。えっとじゃあお二人の関係は」
ウォレッシュ「あぁ。彼女は赤の他人なんだ。・・・実は今朝、地下鉄の階段を上がった所で一緒に余命宣告を聞いてくれる人を募集していたんだ。そしたら彼女が、」
イザベラ「そうなのよ。彼ってば一ドル紙幣を差し出して、『今日俺は余命宣告されるかもしれない。もしよかったら病院で一緒に余命宣告を聞いてくれないか』ってお願いしてくるの。聞いた瞬間まぁなんて素敵なイベント!立ち会えちゃうなんて超ラッキー☆って思ってすぐに了承したのよ。こんな機会めったにないでしょ。それにチップもくれるしね」
ドクター「・・・・・・はぁ。えー・・・じゃあ、お二人は今日知り合ったばかりの他人ということで?」
ウォレッシュ・イザベラ「Yes!」
ドクター「そうでしたか。では、もしウォレッシュさんがゾンビ化してしまって手遅れになってしまった場合は、イザベラさんにコルト・パイソンの服用をお願いしときましょうか。せっかくなんで連絡先交換しといてください。」
イザベラ「えぇ。いいわよ。銃口をウォレッシュの頭に向けて引き金を引くだけ。これぐらいのことなら私に任せて。」
ウォレッシュ「あ、じゃあ俺の住所と携帯番号のメモとあとキャッシュカードも渡しておくよ。先が短い俺にはもう金なんていらね。好きに使ってくれ」
イザベラ「わかったわ。万が一の時は私に任せて。責任をもってあなたを銃殺してあげるわ」
ウォレッシュ「あぁ頼んだ。」
イザベラはウォレッシュからすべてを受け取った。
そして、診療を終えた2人は立ち上がる。
ウォレッシュ「先生。今日は本当にありがとうございました。なんか、こうもう思い残すことがなくなった気がするんだ。とても晴れやかな気分だ。」
ドクター「まぁそう悲観なさらず。先は短いですが、残りの人生どうぞお大事になさってください。」
ウォレッシュ「ありがとう。先生」
ドクター「えぇ。私も余命宣告できてよかったですよ」
そこでウォレッシュとドクターはハグをかわす。
ウォレッシュ?「ア゛ーーーーー」ガブッ!
ドクター「うわっ!もうゾンビ化してる!」
なんとハグのタイミングでゾンビ化したウォレッシュがドクターを噛んだ!
イザベラ「キャアアアアァァアアアアッ!!!」
バシッバァン!!バァン!!・・・バァン!バァン!バァン!バァン!・・・
咄嗟にイザベラはパニックになり、ウォレッシュからコルト・パイソンを奪い取り、ウォレッシュとドクターを銃殺してしまった。
ナース「先生ー!今の銃声は!?どうかされました!?」
奥から慌ててナースがかけつける。
ナース「キャアアアァァアアアアアア!!血!!血!!血ィィイイイイイイ!!?」
バァン!
パニックになったナースはケツポケットからデリンジャーを取り出し銃撃、イザベラを撃ち殺した。
ナース「ハァ、ハァ、血、血が・・・私、血なんてみたく、ない・・・」バタッ
大量の流血を見たナースはショックのあまり、死亡してしまったのだった......The END.
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(まさかのサイコホラー展開・・・)
狩人はツッコミながらも、前回から引き続きリュックを求め住宅街へ向かっていた。
π「あ、ところで勇者ドラゴンさん。ちょっといいですか。今、気づいたことがあります」
「え、なんでしょう」
π「今、あなた幼女にストーカーされてますね」
(・・・まさか人生でそんなことを告げられる日が来るとは・・・・・・)
π「あ、勘違いしないでくださいね。覚えていますか?前々回の前あたりで登場した“例の幼女ゾンビ”です。」
狩人はやや思い出すしぐさをする。
「あーあのイチゴ牛乳の。って!もう復活した!?や、やばいじゃないですか。もう一回謎の電波で撃退しないと・・・!」
π「えぇ、私もそう考えていたんですが、どうやら今の所襲ってくる気配がないんですよね。ただじっとあなたの後ろを追ってきているだけなんですよね今のところは。」
そこで狩人は振り返ろうとする。
π「あ!ダメです!振り返っては絶対ダメです!」
「な、なんで」
π「目線があったりすれば、突然襲ってくる可能性があるからです。こういうのは相手に悟らせないように、気づいてないようにするのが一番です。・・・まぁ、顔はまっすぐ向けたまま横目での確認ならいいでしょう。できますか?」
狩人は横目で何とか後ろを確認しようとする。
「横目と言われても・・・・・・う~ん、イマイチ見えない・・・顔を前に向けたまま後ろを確認なんて無理だろ・・・」
π「じゃあ私の言う通りにしてください。左目を左に~、右目は右に~寄せてください。」
「左目は左に~・・・右目は右に~寄せる・・・と、こんな感じ?おぉ、すごい!後ろが見える!・・・ホントだ!イチゴ牛乳の幼女が追ってきてる!」
π「あのー今のあなた斜視のようになってますよ」
「えっ!?本当ですか!?わ、あわわわ!ご、ごめんなさい!!」
狩人は謝って、両目を元に戻したのだった。
「う~ん。でもこのままずっと幼女ゾンビに追われるなんて怖すぎる・・・そのうち襲ってくるんじゃ・・・」
π「・・・私の仮説ですが、もしかするとあの幼女ゾンビは奇行種なのかもしれませんね。通常なら、人間を見つけたゾンビは真っ先に襲い掛かってきますが、後ろの幼女ゾンビは確実にあなたのことを見ているのにこうして襲ってこない。だから通常のゾンビとは違う行動をする奇行種の可能性があります。まぁ、一度電波で撃退した影響も出ているのかもしれませんが。」
「じゃあずっと付いてくるけど襲ってはこないってことですか?」
π「さぁ。私に聞かれても。幼女ゾンビに直接聞いてみては?」
「いや!そこまで言っといて投げやり!?(・・・頼りねぇ~・・・・・。メチャクチャ不安だ・・・う~んまぁ、今のところ襲ってこないならそっとしておいた方がいいかもしれない・・・本当に付いてくるだけなら、何の支障もないし・・・)
狩人は幼女ゾンビに不安を感じながらも、今は構わないように決めたのだった。
――そうして住宅街にたどり着く。
π「あ、そろそろ目的地ですよ。結構、住宅が見えてきました。」
「ここでリュックを探して手に入れるんでしたよね。そんなうまいことあるかなー」
その時。
π「あ!ゾンビ!!」
「えっ!?ど、どこ!!」
狩人は慌てて身構える。
π「ほら、あそこに。ふ~んあれもおそらく幼女ゾンビ同様に、『四つん這いになってアスファルトを舐め続けるゾンビ奇行種』ですね。ま、危険性はなさそうなので無視しても大丈夫でしょう。進みましょう。」
「どんな奇行種だよ!!」
π「あ!ゾンビ!!」
「えっ!!どこ!?どこ!?」
狩人は慌てて身構える。
π「ほら、あちらに。あれは~・・・『逆立ちをし続けるゾンビ奇行種』ですね。問題なさそうです。進みましょう。」
「いや!奇行種多いな!!もう3体目の遭遇ですけど!?」
π「あ!ゾンビ!!」
「えっ!?また奇行種!?」
狩人は慌てて身構える。
π「ほら、隣に。・・・『露店で商売するゾンビ奇行種』ですね。」
「もはや人間じゃねぇか!!・・・てか!?い、いつの間に・・・ッ!?」
そこで露店商ゾンビが狩人に話しかける。
露店商ゾンビ「ア゛ー」
π「えー何々、ゾンビ語を翻訳してあなたに伝えます・・・うちの店はサバイバル生活を始めたばかりの生存者のためにリュックを販売しているんだ。よかったら一つ買っていかない?だそうです」
(まさかの目的物発見・・・)
π「ちょうど我々が求めていたものじゃないですか。これはいい。勇者ドラゴンさん。ありがたくこの露店を利用しましょう。」
「いや、でも、ゾンビ・・・」
露店商ゾンビ「ア゛ー」
π「よくこの通りはリュックも持ってない新米生存者が通るんだよね。だからここで売ってあげたら儲かるって気づいて商売を始めたんだ。大丈夫、ゾンビの店だからって品質は劣ったりしないから安心して買っておくれ、だそうです。」
「生存者って定番化してるの!?」
そして露店商ゾンビは、3つのリュックを取り出して並べる。
π「おーこれ御三家リュックですよ。この中から一つ選べってことですね」
露店商ゾンビはビシッとグッドジェスチャーをした。
露店商ゾンビ「ア゛ー」
π「えっとまず、右端のものはいわゆるジェットパック型のリュック。空を飛んで素早く目的地にたどり着けるよ。過酷なゾンビワールドもこれさえあればすべてのイベントをすっ飛ばしてクリアーだ!・・・ただその分値段は結構するけどね。・・・ちなみに入手経路は米軍だから、性能も安心安全さ!」
「いきなりリュックじゃねぇ・・・」
π「いやー私事ですがこのジェットパックを見ていると、1984年ロサンゼルスオリンピック開会式を思い出しますねー。あ、ネット検索したらその時の動画がありました。ほら、勇者ドラゴンさん、こんな感じです。」
そう言うとπは立体映像で開会式を映し出す。
「へぇー人ってもうこの時には空飛んでたんですね~すごいなぁー」
π「懐かしい。あの時、まだ私はパイナップル社工場の在庫でスヤスヤ眠っていましたよ~ノスタルジックです。」
(この時計・・・一体何年出荷されてなかったんだ・・・)
π「ですが、勇者ドラゴンさんこのジェットパックはあなたには早すぎますね。これを使用すればイージーすぎるサバイバル生活になってしまいます。実質2週目用のチートリュックです。却下。」
「いやイージーでいいだろ!!てか何週もいらねぇわ!」
露店商ゾンビ「ア゛ー」
π「そうかい。なら次のリュックはこれだね。この真ん中のリュックは一見普通のリュックだけど・・・中を開けると・・・」
露店商ゾンビは実演し始める。
露店商ゾンビ「ア゛ー」
π「リュックの中に小さいリュック、小さいリュックの中にはさらに小さいリュック、さらに小さいリュックの中にはもっと小さいリュック、もっと小さいリュックの中にはもっともっと小さい・・・」
「マトリョーシカかよ!!」
π「あら、勇者ドラゴンさん。お気に召しませんでしたか。私的には結構いいリュックかと思ったのですが・・・」
「いや!どこがいいんだよ!実用性皆無だわ!!」
露店商ゾンビ「ア゛ー」
π「う~ん残念だね~これもダメかい。なら、最後左端のリュックは普通の登山リュックだけどやっぱりこれもいらないよね?」
「あ、それにします(ニッコリ」
π「本当にこんなつまらないリュックでいいのですか?長いサバイバル生活ですよ?後悔しませんか?」
「(むしろ最初からこれを紹介しろ)なんと言おうと俺はこれ一択ですので。このリュックが手に入るまで動きませんから!」
π「・・・はぁ。意固地ですねぇ。わかりました。ア゛ー(→どうやら主はこの何の変哲もない登山リュックに決めたようです。申し訳ない)
露店商ゾンビ「ア゛ー」
π「センスを疑う。・・・だそうです。」
「なんでだよ!!」
そこで狩人はある事に気づいた。
「で・・・あ、でも今俺一銭も持ってない・・・」
π「大丈夫です。今回はパイナップル社の方で立て替えておきます。後日、勇者ドラゴンさんの現実世界の住所へ利子300%マシマシで請求書を送っておきます。」
「ヤクザすぎるわ!!」
露店商ゾンビは「ア゛ー」と顎が外れそうに口を大きく開く。
「えっ、とぉ彼は何を・・・」
π「パイナップルペイのアプリを用いた電子決算の支払いということなので、時計をつけた手をこの口の中に突っ込んで下さい、だそうです。」
「絶対噛まれるだろ!!・・・いやですよ!!なんでそんなことになるんですか!?支払いですよね!?まさか俺の肉が支払いになるってことか!?・・・とうとうゾンビの本性を現しやがっ!」
π「あー、どうやらパイナップルペイの磁気読み取りマイクロチップが喉ちんこにあるので、そのために手を突っ込む必要があるらしいです。」
(なんでそんな変な所に・・・)
露店商ゾンビ「ア゛ー」
π「安心してください。絶対、絶対、絶対に噛みませんから。だいたい商売は信用がすべてですよ!お客様である生存者を噛んじゃったりしたら、次から商売何てできないじゃないですか!・・・と訴えていますよ。勇者ドラゴンさん。」
「いや、だから、ゾンビが商売行ってる自体が・・・」
露店商ゾンビ「ア゛ー」
π「あー痛い!顎が痛い。ずっとこのまま口を開けているのもしんどい!今にも外れそう!ああああぁあ苦しいぃぃい゛・・・っと苦しんでますよ。」
(とりあえず一旦閉じろよ・・・)
「いやでもな~・・・う~んゾンビの口に手を突っ込むなんてやっぱりな~・・・もし、噛まれたら怖すぎるっていうか・・・終わりだよ!?」
π「ならウソをついているかどうか私が判定しましょうか。私の3Dスキャン機能を使えば、相手がウソをついているのかどうかわかりますよ。」
「そんな機能があるなら最初から言ってくれよ!!」
π「では私をゾンビの顔にかざしてください」
「よし、こうか」
そこで3Dスキャンが行われる。
5分後。
(長い・・・普通にカップラーメン待つより長い・・・)
ピィィン!
π「結果が出ました。・・・・・・う~んどうやらゾンビなので、表情筋が死んでいるためウソをついているかどうかわかりませでした」
ズコッ!
狩人はこけた。
(なんの意味もない時間を増やしただけだった・・・)
π「もうこの際、勇気を出して手を突っ込んじゃいましょう!ゾンビの口を真実の口だと思えばいいんです!あなたならできます!・・・大丈夫!私があなたを保証します!」
「どうみても他人事だろ!!・・・くぅ~結局最後は度胸ってか・・・いいぜ勇者たるもの~うぉおおおどうにもでもなれえぇえええ!!」
狩人はヤケクソ気味にπがある方の手をゾンビの口に突っ込んだ。
・・・・・・ピッ。チャリ~ン♪
こうして狩人は登山リュックを手に入れたのだった。