UKRニュース速報 入異世界管理法違反の疑いで狩人容疑者を逮捕
生首が飛んで行った後。
「オホホホホホホホ!!生首が飛んでいきましたの!!・・・それでは、この辺で。おいとま~♪」
占い師のおばさんは、そう言いながら最後狩人に軽くお辞儀し、その一室から出ていった。
(結局、最後までキャラ、定まってなかったな・・・)
一室に残された狩人が、心の中で控えめにツッコんだ時だった。
(そんなん占い師のババアに決まってるからやろ!!憑依や!!憑依!!)
そんな言霊が、狩人に聞こえてくる。
(・・・!!)
言霊は続ける。
(わしは絶対この世からババア共をターミネートしに戻ってくるんや!!・・・そん時はサイボーグの肉体つけて、完全体として戻ってくるからな・・・せいぜい、米でも湯がいて待ってろや!)
そう言い残すと、言霊は消える。
「くっ・・・やっぱりこのアパートは、呪われているのか・・・早いとこ立ち去ったほうがいいな・・・」
そうして狩人が、アパートから出ようとした時だった。
「は~い、動かないで~!」
そういう掛け声と共に、スーツ姿の男たちがその一室に入ってくると、狩人の前に立つ。
「我々は、入異世界管理局の者だ。・・・勇者ドラゴンだな。」
「え・・・。は、はい。」
「じゃあ、これ令状ね。・・・え~18時24分・・・32.8951796574秒。勇者ドラゴン、お前を入異世界管理法違反の疑いで逮捕する。」カチッ
スーツの男は、そう早口で述べると、狩人の手に手錠をかけた。
「いやいや!!逮捕の秒数刻みすぎだろ!!・・・じゃなくてッ!なんで俺が逮捕されなきゃいけないんですか!?」
「はいはい、言い分は後で聞くから・・・ついてこい。」
「ま、待ってくださいよ!!俺、何も悪いことなんてしてませんよ!!それに何なんですか!入異世界管理局って!?」
突然逮捕されてしまったことに、狩人は取り乱していた。
それに対し、スーツの男は憐みの表情で狩人に付き合い始める。
「・・・ハァ、そこからか・・・あのね。我々は、異世界転移、転生者の取り調べをしている機関でね。君たちが現実世界と呼んでいる場所から、ここ。つまり異世界に転移または転生するには、一、10t以上のトラックにより轢死。二、規定高度3000m以上のブラック企業のオフィスからの飛び降り。三、何股もかけた事による因果関係が認められる場合に限り、交際相手からの刺殺あるいは撲殺。または、その両方。それらの死因しか認められていないんだよ!!わかったか!!」
「物騒すぎるわ!!どんだけ現実世界絶望的なんだよ!!嫌すぎる・・・」
「・・・それに比べて、勇者ドラゴン。君は、ゲームを起動しただけで異世界転移してきたみたいじゃないか。・・・ダメだよ。まったく~。そんなんじゃ~。」
(くっ、こっちだって好き好んで、転移したわけじゃ・・・ッ)
「ま、そういうわけだ。・・・それにしても、今まで随分探したぞ。よく近所のコンビニをうろついたものだ。」
(捜査網のスケール感なさすぎだろ・・・)
「公園の公衆便所とか・・・」
(かくれんぼかな・・・)
「そういえば、一時期は、水槽の中も探したりしましたよね!!」と後ろの男が言う。
「俺は魚か何かかよ!!ホントに、人を逮捕する気あります!?」
そこで思い出すかのように別の男が口を開く。
「・・・あ!そうそう、そういえば捜査の終盤は、歯ブラシ持って、歯磨き粉つけて口の中なんかも探しましたよね~なつかしいな~!」
一人の男がそう言うと、スーツ男たちはそこで思い出話に花を咲かせ始める。
「あぁ!あった、あった!・・・あの容疑者一網打尽の捜査な~。あれで一気に一掃できたんだよな~。すんげぇアジトでさぁ。メチャクチャスッキリしたよなー。」
(ただの歯磨きじゃねぇか・・・)
「・・・いやーあの捜査の時さぁ、面倒見てた後輩が青ざめた顔して『先輩!・・・俺・・・歯磨き粉つけるの、忘れました・・・!』って、突然言い出してさ~。もう、そん時はどうなるかって・・・オレも思わず、取り乱して『お前!!急いであんパンのあんこで磨け!!って』怒鳴っちまった笑・・・したらさ後輩がさ『マジっすか・・・俺、シュークリームのカスタード派なんすよね』って笑」
「アハハハハハハハハハ!!」
(・・・・・・この人らの世界観どうなってんだ)
そこで先頭の男が狩人の方に向く。
「・・・最高裁がお前の運命を決めるんだ!!」
「突然、それっぽいセリフ言うんじゃねぇよ!!・・・・・・ところであのぉ、一つ質問いいですか。」
「だめだめ。何を聞かれても、私は黙秘するよ。弁護士!弁護士呼んで!」
「なんでッあんたがかよ!!」
狩人は強引に質問することに決めた。
「・・・・・・逮捕された後ってどうなるんですか・・・?」
「・・・仕方ない。答えてやろう。・・・入異世界管理局拘置所に移送された後、お前はそこで毎日20時間ミカンの皮を剥き続けてもらう。」
(いや割とマジで地獄だな・・・)
「そして、時が来れば、強制送還というわけだな。だが、ほとんどの者は剥き続けている間に、それが生きがいになり、強制送還を拒否するがな。」
ここで、ミカンの皮を剥き続けて早58年。
未完俊三師を紹介しよう。
むきむきむきーー
わしはひたすらミカンの皮を剥き続けてる。
人生のすべてがミカンの皮を剥き続けてきたと言ってもよい。
ミカンの皮を剥くことに関して、わしを超えるものはいまだいてない。
最近の若いもんは、ミカンの皮の剥き方が全然成ってない。
「こう剥いて、こう!もっと親指をグワアアアアアッッッと入れ込むッ!ーー」
いくら精魂込めて教えても、一枚剥きにできないし、しまいにはミカン汁を飛ばしよる。
どれだけ手を汚せば気がすむのか、一体
特にここ10年のミカンの皮を剥く人材にはひどいものがある。
最近の人らは、こうもミカンの皮に接していないのかと思うと、かなしくなる。
その中でもわしに言われた、印象に残ってる発言がある。
「ミカンの皮を剥く・・・?えっ?ミカンって缶詰に入ってるやつスッよね?」
これは時代の流れか
わしがオールドタイプといいたげな、その若もんの眼差しはどこか鋭い。
あぁ、ミカンの皮どこへゆく
・・・・・・・・・
「まてまてまてまてえええええええ!!急に誰だよ!!何だよこれは!!」
「・・・勇者ドラゴン容疑者、お、お前!?ミカンの皮を剥き続けた果てに、ミカンの皮に愛されミカンの皮にそのすべてを奪われた、師を知らないとでも!?」
「どうでもいいです(わざとらしいな・・・)」
「ふっ、まぁいい使いまわしみたいな顔しやがって、もういくぞ。」
そう言うと、スーツ男たちは狩人を連行し始める。
「意味わかんねぇよ!!(けど、妙に傷つく・・・ッ!)」
ーーカタッカタッ・・・
狩人がアパートの階段を下りている時には、すでに報道陣が集まっていた。
パシャッ!パシャッ!カシャ!カシャ!
「・・・あ!今、狩人容疑者がアパートの部屋から出てきました。狩人容疑者が、たった今階段を一段一段と下っています・・・!」
女子アナウンサーが中継し始める。
「顔は、とても使いまわされたような表情をしています・・・!」
「だから、どういう意味だよ!!」
その時、記者の一人が叫ぶ。
「使いまわされた今のお気持ちは!!?」
(いじめッ!?)