お客様の中で常識のある方はいらっしゃいませんかー?
バタン!
神は、あきれた表情で聖書を閉じた。
「・・・ハァ、仕方ないの。聞く気のないやつに、朗読してやっても意味ないわい。・・・まったく最近の勇者は、人の話を聞かないやつばかりじゃの。人の話に耳を傾けんから、次何してよいかわからなくなるんじゃ。そのわりには、主張だけは一人前を装おりおってからに。」
(妙に人生論的な説教だな・・・やめてくれぇ・・・)
「・・・まっ、朗読は聞かなくとも、勇者ドラゴンよ、。この聖書だけは持って行くがよい。・・・旅のお供として暇な時は、読むんじゃぞ。・・・さっそく、おぬしのアイテム欄、すなわち心の中に加えておいたぞい。」
狩人は、「聖女の嫁がこんなにかわいいわけがないよな?」を手に入れた。
(いらねぇよ・・・何勝手に、心の中に加えてんだよ・・・)
「ちなみにそのアイテムは、ワシの力でキーアイテム指定にしといたからノ。売ったり捨てたりすることはできんぞい。・・・棺の中まで持って行くがよい。」
「もはや呪いのアイテムじゃねぇか!!」
「・・・そうでもしないとおぬしの身に危険が及んでしまうからの。」
「え?」
そこから神は、語り部の顔になる。
「昔、昔・・・脳天気な勇者がおった・・・。」
(なんで急に怪談調なんだよ・・・)
「ある日、その勇者は神から聖書を授かったのじゃ。それはたいそう、元気な聖書じゃった・・・。」
(子どもか何かかよ・・・)
「ここから悲劇の始まりじゃ・・・。勇者は、本屋に行きよった・・・いらないアイテムを売却するために・・・そしてレジカウンターの前に立った時ッ!!」
ビクッ!!
急な大声に狩人はびびる。
「あろうことかッ!!間違えて聖書を売ってしまったッ!!・・・これを見ていた神は激昂した!!天空から大きな稲妻が勇者へ降ってくる!!ガラァァァン!!ゴォォォン!!・・・・・・それは一瞬じゃった。ピカッと光った後に残されたのは、勇者の骸がただただ、そこには立っていた・・・。」
「いやいやどうみても、この話アナタの経験談ですよねッ!?」
そこから神は怖い顔をする。
「・・この話には続きがあっての・・・その聖書の買い取り価格・・・なんと、1円じゃったのじゃ。(キャー)」
「・・・・・・。」
「後の話・・・聖書を1円で買い取ってしまった本屋は倒産し、今は存在しない・・・。というわけで、聖書はキーアイテムになったというわけじゃな!!オッホッホッ!!」
「つまり、神様・・・あなたが自分の聖書を売られたことに腹を立てたって事ですよね・・・。だから、強制的にキーアイテムに・・・」
「スキップ」
「へっ?」
「スキップじゃ。スキップ。ワシは他人の話なんぞ聞かんでも、会話ができる。だからお主の発言も、すべてスキップじゃ!!オールスキップでクリアーじゃッ!!ホッホッホッ!!」
「さっき言ってた事とまったく反対ですけど!?」
「やかましいわい。これもスキップじゃな。・・・まったく最近のノベルはキンキンするわい。ノベルのテキストなんぞ、オールスキップで読破するのが当たり前じゃノ。スキップ機能のおかげで年間2000冊読破も可能じゃ。神の活字(紙)離れじゃな!!オッホッオッオッ!!」
「一体、何を読んでんだよッ!!めくってるだけじゃねぇか!!・・・(ダメだ、いよいよ収集つかねぇ・・・)」
「オッホン!!では、そろそろ話題を変えるかノ。次に進めとカンペがでたわい。せわしないのぉ~。それとあのカンペは、タッチパネルじゃの。ここにも紙離れがァ!!」
(番組かよ・・・つーかもうそれはいいから・・・)
「あ~勇者ドラゴンよ。最近、鍛えとるか?というわけで、鍛えてこい!」
「へっ?」
狩人は、時空に飲み込まれた・・・。
ーー「えっ~とここは・・・」
狩人は目を開ける。
椅子に座っていた。
「やっと目が覚めたようだな!!ひよっこ新兵!!」
そう怒鳴り声で言ったのは、ベレー帽をかぶった軍人だった。
「俺はグリーン大佐だァ!!そして今、お前は特殊部隊イエローベレーの入隊契約書にサインしようとしているッ!!というわけでさっさとサインしろォォッ!!このウジ虫勘違い勇者がァァッ!!」」
グリーン大佐は、顔面を近づけて狩人に怒鳴った。
(また、この急な展開か・・・いよいよ俺も慣れてきたなー。サインサインとっ)
「・・・じゃねぇよ!!急になんでこんなことになってるんですかァッ!?」
「黙れえッ!!つべこべ言わずにサインしろォォォ!!さもなければ、貴様の陰毛を引き抜くぞォォ!?いいのかッ!?」
「(地味だが・・・痛てぇな・・・)じゃねぇ!!・・・そ、そんな俺は、特殊部隊なんかに入りませんからね!?おかしいでしょ!!急にワープさせられたらこんな事になって・・・」
「黙れええええええええ!!!!死にたいのかアアアアアアアアッ!?コラアアアアアアア!!!やる気あるのかアアアアッ!?やる気がなかったら今すぐ家に帰れええええええええ!!!アップルパイ作りでも手伝ってこイイイイイイ!!」
グリーン大佐は、狩人にメチャクチャ顔近づけて怒鳴る。
「(すげぇ量の唾が・・・)じゃ・・・俺にはやる気ないんで・・・帰りますね・・・ハハッ」
狩人は、椅子を引いて立ち上がる。
「すまなかった。まぁ、その、まずは座ろう。」
グリーン大佐は、狩人の肩を無理矢理押さえつけて座らせる。
「・・・・・・。」
「あぁ、その・・・私はグリーン大佐だ。私が大佐になれたのも、常に怒鳴っているおかげでな・・・。入隊当時から、私は同期の顔に唾を浴びせ怒鳴ってばかりだった。上官にも負けじと唾を浴びせ、怒鳴っていた。すると、いつにまにか私は、大佐まで上り詰めていた・・・。」
「へ、へぇ・・・(なんすか、コレ?)」
「私は数多くの戦場をくぐり抜けてきた・・・このバーチャルリアリティでな。」
グリーン大佐は、ヘッドセットを取り出す。
(遊んできただけじゃねぇか・・・)
「そこで多くの・・・仲間を、上官を失った・・・。当時、足手まといの私を守るために・・・。やはり持つべきは友だと・・・今となっては感じる日々だ。」
(随分と楽しそうですね・・・)
「この私の顔を見ろ・・・大きな傷があるだろう。・・・これはな、大佐として貫禄をつけるために貼ったシールなのだ。500円もした。」
(話が見えてこねぇ・・・)
「だから、勇者ドラゴン!!君も是非、この特殊部隊イエローベレーに入らないか!?イエローベレーは、365日24時間いつでも君を待っているぞ!」
「・・・全然話の流れの意味がわからねぇよ!!どうやったら、そこから入隊の話に繋がるんだよォッ!?話下手かよォッ!!(つーか暇してんなぁ・・・)」
「今入隊した君には、その場でXLサイズのコーヒー一杯をプレゼントだ!!」
「特殊部隊とどういう関連があるんだよ!!てか量多すぎるわ!!トイレ止まんねぇなッ!!」
「さらに入隊特典として、毎月、激うまレーション、迷彩セット一式が届くぞ!!これで君も特殊部隊だ!!」
「嫌がらせかよ!!染める気まんまんだな・・・」
「あぁ、思い出深いな・・・この激うまレーションで私の肉体はできている。・・・母の手料理よりうまい。断言しよう・・・。」
(やめたれ・・・悲しむぞ・・・)
「私が中学生の時だ。・・・」
なぜかグリーン大佐の回想が始まる。
ーー「うわッ!グリーンの弁当また、キャビアとA5和牛だぜ。ダッせぇ!!ハハハハッ!!」
教室にいる全員がグリーンを笑う。
「それに比べ、ブルー藤はすげぇよな。唐揚げとプチトマト、卵焼きに白米だぜ。いいよなぁ~。」
「おい!ブラック中を見ろよ!!・・・のり弁だ!!」
「えっ?嘘嘘!!」「すげぇー!!」「やっぱ金持ちは違うなぁ~」「彼女にして!!」
教室にいる全員がブラック中を囲む。
「いや!!見ろ!!レッド木の弁当!?・・・あいつの空箱だ!!弁当箱だけだ、すげええええええ!!」
教室がお祭り状態へと突入する!!
全員がフィーバー!!放送室から音楽が流れ、校内すべてがダンスフロアと化す!!
ーー「こんな地獄のような日々が毎日続いたのだ・・・」
「あれ、なんかいろいろおかしいぞっと・・・というより最後のは、もはや放棄されてるじゃねぇか!!・・・もっとツッコむと、なんで登場人物の名前が戦隊物ぽいんだよ!!・・・あと、ダンス何ッ!?」
「まだ、私の地獄の日々は終わらない・・・」
ーー便所メシをしにきたグリーン。
パカッ
「・・・また一皿一万円寿司の詰め合わせかよっ・・・グスッ、全部クソババァッのせいだ!!」
ジャアァァァ
グリーンは、寿司をすべて便器に流した。
ーー「まてまてまてえええええええ!!す、すべてがおかしい!!(あれ・・・俺がおかしいのか・・・?)」
「そしてある日のことだった。」
ーー便所
「・・・今日は、妙に重い・・・あれ、これは・・・?」
弁当箱の風呂敷を開けると、そこには一通の手紙が入っていた。
グリーンはそれを黙読していく。
グリーンへ
ごめんなさい。
わたしの作るお弁当のせいで・・・いえ、私のせいで、今まであなたがいじめられていること知らなかったの。
あなたが中学校のダンスフロアで、ただ棒立ちしているだけ・・・そんな苦しいことを毎日経験していたなんて・・・もう何て言ったらいいか・・・言葉を忘れてしまいます・・・(泣)
これからは、もし苦しかったら、会話が成り立たないかもしれないけど、ちゃんと言ってね(介護してね)
だけど、便所の隠しカメラをハッキングして覗いたけれど、お弁当捨てているわね。
それはダメよ。中身を捨てるなんて、なんてもったいないことをしているの。
そんな子に育てた覚えはないわ。
木っ端微塵に散りなさい。
グリーンママ(クソババァ)より
パカッ
ーー「その日の弁当箱の中身は時限爆弾だった。ちょうどお昼時にセットされていたのだ。・・・こりゃあ、軍法会議行きだなと、私は中学生ながら悟ったものだ。」
「・・・・・・。」
ーードカアアアアアアン!!
「なんでもかんでも爆発落ちにすんじゃねぇ!!」