こんな主人公・・・俺は許さねぇ・・・!!(憤怒)
狩人は、目を覚ます。
「・・・あれっ、なんだここ・・・」
狩人は、無駄にまぶしい雲の上に、棒立ちしていた。
その時だった。
「ほぉ、ようやく目覚めたようじゃな。勇者ドラゴンよ。」
その声と共に、神々しい老人が、舞い降りてきた。
「・・・え~っと、あなたは一体?・・・それに俺って確か、コンビニ強盗の状況にいて・・・くっ、それよりも無駄にまぶしいこの場所は・・・」
「まだ、混乱しとるようじゃな、勇者よ。無理もない。ここにきて、端折るレベルを超えての急展開じゃからの。ワシが説明してやろう。」
その老人は、まだ把握できていない狩人を、よそに説明し始める。
「まず、ワシの正体は神じゃ。いわゆるGOD・・・じゃ!!」
「・・・え」
「そしてこの場所は、ヒトが死んだ時に送られる”待機雲”じゃ。つまり、おぬし勇者ドラゴンは死んだのじゃ。」
「・・・えぇぇぇぇぇ!!ど、どういう事ですか!?一体俺の身に何が・・・!!」
「慌てるでない。・・・ワシは神じゃ、すべて上からちゃんと見ておったよ。・・・あのコンビニでな、潜入捜査官の設置した電子レンジ爆弾があったじゃろ?」
「・・・あぁ!はい!、はい!!ありました!!」
「あれがの、偶然爆発してしまったのじゃ。それでコンビニごと吹き飛んで、おぬしは、死んだ。それだけのとるに足りないことじゃ。」
「・・・そ、そんな!!な、なんでそんな急に!!それに、とるに足らないって!!俺が死んだら、主人公不在じゃないですか!?・・・まさかの交代ですか!?後釜は、どんなヤツなんですか!?」
「安心するがよい。この世界に、完全な死というのは存在しないのじゃ。・・・仮にヒトが死んだ場合、この場所、待機雲で10時間、待機すれば、また生き返ってどこかにリスポーンするのじゃ。だから、どんどん死んでもらって構わんぞ。」
「よかった~・・・俺生き返れるんですね!ヤッター!!・・・・・・じゃ、ねぇよ!!この世界、緊張感なさすぎだろ!!・・・取り乱した俺がバカだった・・・。」
「ちなみに死に戻りプランというのもあってな。また、コンビニ強盗の場面から始めることもできるんじゃが、するかの?自力で切り抜けない限り、何度も体験することが可能じゃ。」
「・・・あっ、いいです。おとなしくここで、待機したいと思います・・・はい。」
「・・・そうか。まっ、おぬしの自由だからノ。・・・念入りに言うがワシは神じゃ。すべてをお見通しじゃ。実のところ、書き手がめんどくさくなって、こんな急展開を迎えただけなんじゃ。」
「そ、そんな!?作者の、めんどくさいという乱暴さがまかり通っていいんですか!?こうなったら登場人物全員で、ボイコット・・・」
狩人が、それを口にした時だった。
「太陽権!!ほぉあああああああ!!」
神が光る。
「うっ、うわああああああ!!め、めがあああああ!!・・・って!!いきなり何すんだよ!!何だよ!!この茶番は!!」
「勇者、ドラゴンよ。太陽の所有権は・・・誰に、あると思う?・・・そう神であるワシじゃ。だから、太陽権を使うことができるのじゃ。」
(すっげぇ・・・勢いで、流されたな・・・)
狩人は、ボイコットをあきらめた。
それでいい。
「くっ・・・!!あ~もう、わかりましたよ!もう黙って待ちます!待てばいいんでしょ!!待てば!リスポーンして、ちゃんと今度は、冒険してやる!!(ハァ、振り回され損だな・・・)」
「・・・勇者ドラゴンの、やけくそガス抜きも済んだことじゃし、ワシもそろそろ神の国に戻るとするかの。次の”99代神の国総選挙”が控えておるしな。神といえども、忙しいもんじゃの。」
「えっ、神様って交代とかあるんですか?」
「もちろんじゃ。神の民から、投票によって任されなければ、なれないのは、ヒトの世と変わらんよ。」
「へ~大変なんですね・・・。もっと、超越的に、ただ過ごしているのかと・・・」
「とんでもないわい。やることは山盛り。それにの。神の民からボロクソに言われ、聖域通信、神読新聞、神日新聞、神のまとめ・・・数多くの神メディアも意識しなくてはな。おかげで、ノイローゼになるときもあったわい。ワシは通院して治ったがの。耐えられなかった先の神の中には、堕落し、悪魔や大魔王になり果てる者もいたそうじゃな。そうやって神の国と魔界との第10次神域大戦に発展し、従事した数多くの神の民たちが、悪魔のかっこよさに魅了されてな。特に美男美女の民たちは、みんな向こうに行きよったわい。おかげで人口が、減って減って減るばかりでな・・・」
「へ、へぇ~(妙に、社会的だな・・・お、重い・・・!)」
狩人は、話題を変えようとする。
「あっ、投票ってやっぱり、選挙活動みたいなのもするんですか?(ダメだ・・・話題が、あんま遠くなってねぇ・・・)」
「ほぉ、そうじゃの。ここは、少しヒトの世と違うやかもしれんな。」
「え?そうなんですか。(よかった、神様の顔色がちょっとよくなった!)」
「うむ。立候補は、聖書を書き上げねばならんのだ。それがヒトの世でいう、マニフェストじゃな。ちょうど、この手元にある・・・」
神は、懐から一冊の本を取り出す。
「『聖女の嫁がこんなにかわいいわけがないよな?』というこの本が、ワシの聖書じゃ。」
「メチャクチャ、ライトノベルじゃねーか!!しかも、微妙に歯切れの悪いタイトルだな、おい!!読者に投げかけてどうすんだよ・・・いや、でも待てよ。手に取ってもらうにはいいのか?えっいやいや、印象的に残るほうが・・・」
狩人は、迷宮に入り出す。
「じゃねええええええ!!!・・・ハァ、ハァ、ハァ、まったく危ねぇところだった・・・犯罪史に残る未解決事件並の迷宮に入るところだった・・・な。ふぅ。」
「何をゴチャゴチャ言っとるんじゃ、おぬしは。普通に生きるのもつらいじゃろ?」
(神だからって勝手に、決めつけないでくれ・・・た、楽しく毎日送ってますー・・・)
「ま、せっかくここまで食いついてくれた勇者ドラゴンのために、少しぐらい・・・この神!が、神の朗読!!をしてやってもいいかの。心して聞くが良い!!居眠りするヤツは、地獄へ案内じゃ!!」
「ハ、ハハ・・・やだなー神様ったら(アンタ、もう実は堕落してる悪魔だろ・・・)」
「では・・・あぁ、お、オオン!!うっ、うっ、あああ、ん!!・・・」
「・・・!?」
「ちょっと、喉の調子を整えるわい。飴玉飴玉と・・・」
神は時空から、のど飴を取りして口に入れる。
(焦ったァ・・・、一瞬、本文の内容かと思ったぜ・・・よくある、じじいの爆音喉ならしだったか・・・)
そして神は、のど飴を丸呑みする。
「いやいや!!舐めろよ!!意味ねぇ!!」
神は、反応せず本を見開く。
「って聞いてます!?(それにしても神であろうが、老人が飴玉を丸呑みとかヒヤッとするな・・・)」
「では・・・改めていくぞい。
俺は、神野 領。どこにでもいる、卒業生全員が”刀大”に進学し、定員を埋めてしまうことから別名”刀大付属高校”とまで世間から揶揄され嫉妬される難高校の一年生。その入試では、トップ合格で、すでに一年にしてセンパイ・・・フッ(笑)の成績すらも超える成績。そして実の生みの親は、皇族だけど、俺自身は、わけあって愚民に成り下がり、皇族の血が流れていることを隠して、慎ましく一般世間で暮らしている。ここまで聞いたら当然、どんな矮小な脳でもわかる通り、育ての親は別にいるわけだが・・・父親はソフトウェア事業で「天窓」というブランドを開発して世界的に成功した総資産5兆円を有し、母親は、小さなアイドル事務所から、自身のルックスと実力だけでトップアイドルまでに駆け上がったらしいが・・・まぁ関係ないな。
とりあえず、どこにでもいる至って普通のつまらないゴミのような高校生だ。
「・・・・・・・・・」
「まてまてまてまてええええええぇぇ!!もうどこからツッコんでいいかわからねぇよ!!!何だよ、この盛りに盛った肥はッ!!!最後の発言で原子レベルで小さい謙遜してるようだけど、読者に対する嫌みでしかねえええよ!!ハッハアァ!!最初のページでコイツの好感度、もはや地に落ちるしかねぇなッ!!!えぇ!?神野くんよお!?聞いてるか!?俺の鋭く的確なツッコミを聞いてるかよおぉぉ!?何とか言えやああああああああアアアア!!オラアアアアア!!」
パタン
神は、ため息をついて本を1回閉じた。
「勇者ドラゴンよ。そなたがいろいろと満たされていないのは、わかる。しかしな、これはあくまで本にでてくる架空の登場人物じゃぞ?そこまで入り込んでどうするのじゃ?自分を見失うでない、よいの。」
神は、諭す。
「ハァァァ、ハァァァ、ハァァァ・・・」
狩人は、怒り狂った目で、呼吸を乱しながらも何とか落ち着ける。
バサッ
「落ち着いたかの。それでは・・・神!の神!による!神の!ための朗読を続けるぞい。・・・心して聞くがよい。」
というわけで・・・続く!!テヘッ☆