なぁ?地球って塩辛味らしいぜ
「クソ・・・いつまで待たせんだよ。」
角で待ちかねた、強盗は、イラついた口調でそう呟く。
「・・・・・・。」
待っても、待っても、少し前と違って警官が突入してこない。
とても静かなものだった。
「あぁッ!!さっさと突入してこいよッ!!・・・オラァッ!!・・・画が固定でつまんねぇんだよぉ!!俺を放置するなあアアァァ!!放置からのキックは許さねぇ!!そんなシステムには、俺が除外投票を入れてやるよ・・・!!いいのか!?アァッ!?」
(まさに発狂ボイスチャットだな・・・。)
そうリハビリ感覚でツッコミを入れたのは、狩人だった。
狩人は、何とか自力で冷静を取り戻していた。
おかえり。
「うるせぇ!・・・やっぱり俺がいないと誰がツッコミを入れるんだって事になるだろ?だから、こうして復帰してやったんだぜ。復帰祝いでも送ってほしいもんだな。」
「おい勇者テメェ!!・・・何1人ブツブツ言っている。お前のボイスチャットはいらん。人質らしくおとなしくしていろ。」
(いやいや急にクールになるなよ・・・。)
強盗は、コンビニのガラス越しに外のパトカーを見ている。
「・・・それよりも、サツ共は、ビビって芋り始めている。パトカーの中でコソコソと話し込んでいる。・・・だが、俺は角待ちを続けたい。代わりに、勇者ドラゴンお前が、この指向性マイクをあそこに向けろ。」
強盗は、そうしゃべりながら縛られている狩人に近づくと、背後から指向性マイクを取り出す。
「・・・人質の拒否権はもちろん・・・」
「ない。」
「ですよねー。」
狩人は一時的に解放され、強盗と共に、ガラスの前に立つ。
「よし、じゃあこの指向性マイクを、あの後部座席に座っている2人のところに向けろ。」
「こんなんで、本当に音が拾えるんですか?」
「当たり前だ、どれだけ高価な物か。・・・このマイクで宇宙人の独り言を拾ったこともあるぐらい超高性能だ。」
「どんだけ遠くの音拾うんだよ!!マイクっていう領域じゃねーよ!!」
「いいか。その時の、音声がこれだ。『・・・今日の献立は何にしようかしら。そうだわ!そろそろ地球が育ってきたころね!・・・ちょうどいいわ。地球にしましょう。ウフフ!』」
(地球は、主婦の献立レベルなのか・・・。)
「俺がこの音声を拾った時、あまりの恐怖にその場で吐いてしまった。・・・俺は生まれてから、ずっと強盗をやってきた。だが、唯一、このときばかりは、地球を救わねばと強く思った。だから、俺はまずこの音声をネットにアップして、人類に警告を発した。・・・だが、やつら人類はどう反応したと思う?」
「そりゃあ、信じてもらえるわけないでしょうね・・・。」
「そんなのまだマシな方だ。やつらの大多数はこう反応した。『つまんね』・・・とな」
「俺は葛藤した。こんなやつらを救う意味があるのか、救う価値はあるのか・・・と。だが、救えるのは俺だけだ。一体どうすればいい!?っとな」
(なんで、強盗がヒーローの葛藤してんだよ・・・。葛藤するところが違うだろ!)
「その時、ある声を聞いた。それは地球の声だった・・・。『ふう、ちょっと食べ過ぎたかな、ウプッ。減量しなくちゃな、ウプッ・・・あぁ、ラーメンを食べると眼鏡って曇っちゃうんだ、知らなかったな。人類君、今年は異常気象になっちゃうけど、堪えてね。来年以降は、ちゃんと安定させるから許してね。はい仲直り。』これを聞いて、俺は救う決心をした。」
(うん。意味不明だ。)
「それから俺が最初にとった行動は、『宇宙航空研究開発しちゃうよ?』の施設に強盗をした。
やつらは強かった。なんせビームを撃ってくる警備兵がいたのだ。スーパーアーマーや角待ちを駆使したが、それはもう熾烈な銃撃戦だった。」
(この話はどこに向かっている・・・。)
「何とか全滅させた俺は、施設の最深部についた。すると、そこに現れたのが、二足歩行のクリーチャーだった。その時、俺は呟いたね。『クソッ!やつらこんな兵器までも・・・!』しかも、撃っても撃っても倒れない。さすがにこのときばかりは覚悟した。最終手段をとった俺は、施設ごと吹っ飛ばすことにした。タイムリミットは5分。その最後の5分に俺は何とか施設の電波塔を操作して宇宙にメッセージを送ることができた。」
(やっとか・・・。)
「こう送った。『・・・オカンw地球はやめろwww』と」
(・・・クライマックスなのに緊張感ねぇ!)
「目的を果たした俺は、ぐったりと死を待つことにした。・・・だが、その時だった。『迷子の迷子のbabyを拾いに来たぜ!!待たせたなァ!!相棒!!』そんな颯爽の声と共に、クリーチャーにロケットランチャーがぶち込まれた。俺は、上空を見た。ヘリが飛んでいる!あいつらが助けにきた!俺は残りの力を振り絞って、壊れた天井から落ちてくるがれきをQTEで避けて避けて、走った!そして、最後はジャンプ!!」
(あぁ、これは1回は掴み損ねて、落ちるけど仲間が手を伸ばしたことで、掴まれて助かるパターンだな。)
「俺は、ヘリのはしごを掴んだ。だが、すべった!その時だった!!仲間が、下りて俺の腕を掴んだ!助かった・・・!そう思った瞬間に、仲間は俺にこう言った。『あれぇ・・・・・・すいません、人違いでした(^_^;』そう言って、俺の手を放してヘリは飛んでいった。」
(あれだけノリノリだったじゃねーか・・・。)
「・・・っとまぁ、俺は地上に落下して入院する羽目になったが、健康保険で何とかなったのだ。入っててよかったぁ!健康保険~♪」
「いや、聞きたいのはそこじゃないです。」
「あぁ、そうだな。後日、俺のメッセージアプリに謎の人物からメッセが送られてきた。『そうね、やめておくわ。地球には、数多くの生命が住んでいるからそっとしておくようにってお昼のワイドショーで偉い人が言ってたわ。献立にするにはかわいそうよね(^0^)・・・だから、今日の献立は、太陽?っていうものにするわ。わざわざありがとね(*^O^*)』・・・このメッセは、宇宙人に違いない。そう確信した俺は地球を救えたことにニヤリと笑った・・・。ここでエンドロールを流して下さい。主題歌は、かっこいいやつで。」
(それって結局助かってねぇ・・・よな?)
「おい、勇者!そんな事はどうでもいいから、さっさとこのヘッドホンをつけてマイクを向けろ。俺は引き続き、聞きながら、角待ちを続ける。」
「いやいや、あんたがさんざん話したんだろ・・・。はぁ、もういいや。これをつけて、マイクを向ければいいんですね。」
狩人はヘッドホンを装着する。
「あれっ・・・なんだ、この電波ソングは・・・アニソンが流れているぞ・・・。」
「おっと、俺のibod classicのイヤホンジャックに繋がったままだったぞ。言えよ!!恥ずかしかったぞ。」
「知らねーよ!!つーかアニソンとか強盗らしくねぇな・・・。」
「これは160GBあるんだぞ。これで(違法)ダウンロードし放題、だぜぇ!!」
(強盗らしくないなと思ったけど、やっぱり強盗でした・・・。)
「・・・でもな、ソフトウェアの領域とか何とかで、159GBも食ってんだよ。どんだけ食いしん坊なソフトウェアなのかと激怒した俺は、分解したんだよ。そこから自分で増量して500TBまで増やしてやった。いいだろ?これでハイレゾ音源も気兼ねなく(違法)ダウンロードできるぜ。」
(こいつッ!!)
「よし、マイクに繋げてっと・・・さっさと音拾えや、勇者。」
強盗は、自分もヘッドホンを装着して角待ちの位置に戻る。
狩人は、マイクをパトカーに向ける。
「・・・何で俺がこんなことを・・・。」
狩人は悲しくそう思うしかなかった。
しっかり経験という名の下積みをしろ。
でないとレベルアップできないぞ。
(今回の地の文担当さんは、随分と挑発的ですねぇ・・・--#)
強盗と狩人がそんなやり取りをしている間、潜入捜査官がついに動いていた。
電子レンジの爆弾を、イジイジしていたのだった。
「・・・どうやったら手動で起動するのか、私にはわからないな・・・。まったく、困った子だね。まっ、そこが、かわいいんだけどね。爆弾ちゃん☆」
潜入捜査官は、ウインクした。