彼が覗くなら、私は待つわ・・・。いつまでも・・・!
「ドラゴン君、ドラゴン君。起きるんだ。」
(ん・・・あれっ、俺いつの間に寝てたんだ・・・。)
狩人は、潜入捜査官に起こされて、目を開ける。
「あ、おはようございます。あれから、少し事態は良くなりました?」
「まだ君は寝ぼけているようだね。ほら、目の前の景色を見てごらん。」
「・・・なっ、これは・・・!!」
狩人が見たのは、コンビニが警察によって包囲されている光景だった。
パトカーが何台も取り囲んでいる。
「寝て起きても、何にも変わってないってことですね・・・。」
その時だった。
「あっ!外の警官が、こっちに向かってきますよ!!これで助かるかも!!」
「何だって・・・!!よせ、突入はやめるんだ!!」
狩人の喜びを聞いた潜入捜査官が、外に向けて思いっきり、叫び出す。
「な、なんでですか!あなた助かりたくないんですか!」
「違う・・・!!ドラゴン君!!君が寝ている間に強盗は・・・!」
その時、警官が店内に足を踏み入れた。
ズドォン!!
警官が吹っ飛んで壁にめり込んだ。
「・・・フフッ、はい、1キルっと・・・。」
どこからか強盗の声がする。
「角待ちショットガンをしているんだ!!」
同時に、潜入捜査官が言い切った。
「そうだ・・・そこの潜入捜査官が言うとおり、俺はウェーブ戦を耐えるために、ここで角待ちをしている。お前たちの位置からでは見えないだろうがな・・・。」
(か、角待ち・・・ショットガン、だとッ・・・!)
狩人は、うろたえるが何とか反発する。
「そ、それでも強盗か・・・!強盗なら強盗らしく戦え!!」
「バカをいえ。のうのうと踏み入れるほうが悪いな。」
「ぐっ、そんな隅っこで縮こまってねぇでさぁ・・・!」
「ドラゴン君!!やめるんだ!!」
「でも!!角待ちショットガンって、そんなのあり・・・なのかよッ・・・!そりゃぁ・・・ねぇよぉ・・・なぁ!!」
狩人は、青年の葛藤を含んだ叫びを上げる。
「こらえるんだ!こらえるんだ!ドラゴン君!!・・・私たちは、私たちが今できることをやろう。いいか、深呼吸だ。深呼吸。」
「スーハースーハー・・・ありがとうございます。少し落ち着きました。」
「そう、それでいいんだよ。囚われの身であっても常に冷静でいるんだ。そうすれば必ず、活路は開かれる。」
「活路・・・活路!!そうだ!このコンビニには裏口があるぞ・・・!そうすれば、角待ちショットガンの餌食にならずに・・・」
その時だった。
ドオオーーン!!
「な、なんの音だ!?」
「・・・ハハハッ、はい、2キル目っと。楽勝、楽勝。」
何が起こったのか理解できない狩人に対し、潜入捜査官の渋い顔のカットインが入る。
「・・・ドラゴン君。いいか?今から言うことを、冷静に聞いてほしいんだ・・・。」
「なっ、何を言うつもり、なのですか・・・俺にこれ以上・・・。」
「さっきの音は、裏口でクレイモアが爆発した音なんだ。」
「えっ・・・」
強盗が得意げに口を挟む。
「そうだ。そこの潜入捜査官の言うとおり、間抜け勇者が寝ている時に、俺は裏口までの通路にクレイモアとセンサー爆弾をドミノのごとく詰めてセットした。裏口にたどり着くことは、まず不可能だろうな。」
「いやだあああああああ!!」
狩人は、発狂し、頭を壁にゴンゴンと打ちつける。
「や、やめろ!ドラゴン君!!落ち着くんだ!落ち着け!」
「だ、だってぇ!!唯一の活路の裏口が、裏口にまでぇ・・・!そうなったら、もうどうしたらいいっていうんだよおおおおぉぉッ!!」
「・・・くっ、私だって、悔しいさ。でも、そういうときこそ冷静に・・・」
「冷静になって、何ができる!?教えてくれよぉッ!!冷静になって一体何が・・・変わる!?冷静は、この状況を変えてくれるのかよ!?」
「そ、それはッ・・・」
そのやり取りを聞いていた強盗が、口を挟む。
「まっ、おとなしくそこで見ているといいさ。・・・次々とキルされていく警官共をな。」
それから、度々警官たちは店内に突入してくるが、やはり角待ちショットガンの餌食にされる。
狩人の目の光が消えていく。
警官たちは、壁にめり込んでいく。
「・・・はい、35キル目・・・。最高、最高。これだから、角待ちショットガンはやめられんな。ドンドンこい。もうウェーブ数もわからなくなったな。」
一方、外の警官たちの中に混じって1人、鋭い視線をコンビニに送る刑事がいた。
「・・・う~ん。これは、中で角待ちショットガン、裏はトラップといったところか・・・。」
その刑事は、缶コーヒーに口をつけると缶を放り投げた。
1人の警官が近づく。
「どうやって突破すればいいのでしょうか。一応、言われた通りに、警官たちを小出しに突入させていますが・・・。」
「なに。彼らは時間稼ぎの駒だよ。もう、真の狙いの手は打ってある。」
「真の狙いといいますと・・・?」
「特殊部隊『SVV∀⊥』をここに来るように、要請してある。」
「ほっ、ホントですか!私、彼らの大ファンなんです!一ヶ月前の握手会にも行きまして、妙に手が乾燥してたのを覚えています!!もう一度、握手したいなぁ~!」
「まっ、いつか入れるように君もがんばりたまえ。彼らが到着すれば、こんな事態すぐに解決するだろう。」
そして、30分後。
特殊部隊の『SVV∀⊥』の1人が到着した。
「・・・おはよう、相変わらずのようだね。・・・それにしても、君が特殊部隊の『SVV∀⊥』一員か。初めまして。私は、その辺の安月給刑事だ。自販機の前では、必ずおつりと底をチェックするのが日課だ。」
「あぁ、お目にかかれて光栄だ。あんたが、噂の刑事さんだな。誰だか知らないが。俺は、年がら年中ずっとギリスーツを着ていることで有名なマイケルジャック・マイケルだ。好きなことは、このスナイパーライフルのスコープを覗くこと。これで世の中を見通したりする。」
その男は、全身ギリスーツでスナイパーライフルを手に持っていた。
「あぁ、よろしく。それにしても、その服臭うぞ。たまには洗濯したらどうかね。」
「これは、香水だ。」
「・・・・・・。」
「・・・HAHAHAHAHAHA!!」
「では、さっそく本題に入るとする。」
「あぁ、是非そうしてくれ。」
「では、あのコンビニが見えるか?」
刑事は指をさす。
マイケルジャック・マイケルは、スナイパーライフルを構えて、スコープを覗く。
「あぁ、見えた、見えた。ターゲットはあのコンビニだな。OK、OK、よく分かった。」
バァァン!!
発砲した。
ーー店内。
「・・・アハハ、アハハ、アハハハハハ・・・あぁ~あそこに角待ちがいるぞ~。こっちにもいる~。あ、今度は角待ちが飛んでるぞ~!!お~い!!」
狩人は壊れていた。
「くっ、ドラゴン君・・・。」
その時だった。
プシュン!!
「・・・!!うわあああぁぁッ!!」
狩人の頭、数ミリ横の壁にスナイパーライフルの弾丸がめり込んだ。
「これは!!スナイパー!!伏せろ!!」
潜入捜査官も反応する。
「スナイパーごときが何ができる。角待ちの前には、無力同然だ。お前が覗き続けるなら、俺は待ち続けてやるぞ。」
強盗も反応する。
「こ、今度は、スナイパーかよおおおおぉぉ!!いやだあああああッ!!嫌だ!!どこ!?どこ!?どこから見てるの!?嫌だ!!見ないでくれ・・・!見ないでくれえぇぇぇぇ!!」
狩人は、また狂った。
ーー外。
「よし、グッドキル。・・・これで俺の仕事はおしまいだ。じゃあな。」
「待て待て。」
「なんだ。」
「あの店内の中に、角待ちショットガンがいると言おうとしたのだ。ターゲットは、そいつだ。」
「・・・そういうのは、先に言ってくれないと困るな。これからは、気をつけてくれ。」
「・・・相手が言わんとしようとしていることぐらい、そのスコープで覗いて、見通してほしいな。」
「・・・・・・。」
「HAHAHAHAHAHAHA!!」
「・・・じゃあ、ブリーフィングをするから、あのパトカーの中の後部座席へどうぞ。」
刑事は、マイケルジャック・マイケルに指示する。
「俺は、レディーファーストなんだ。お先にどうぞ。」
「私の外見から、女性と判断しますか。すばらしい目ですね。」
「あぁ、少し、少しだけ。言わせてほしい。俺の裸眼は、最悪だ。こうやってスコープを覗かないと、よく見えないんだ。・・・・・・あぁ、確かに、あんたは男だったよ。~♪」
「・・・今度、缶コーヒーでも驕りますよ。」
「いや、俺はエナジードリンク派でしてね。」
「・・・・・・。」
「HAHAHAHAHA!!」
そして、2人はパトカーの後部座席に座った。