黙らせる方法?・・・・・・容易いことですよ、冷凍すればいい
狩人は、コンビニ店内を物色する。
ある物に目がつく。
(これは・・・?アイスを入れる冷凍庫か?ガラス部分が凍てついてて何も見えないぞ・・・。まぁ、ちょうどアイスほしかったんだよな~。)
冷凍庫の中に手を入れる。
(あれ?このゴツゴツとしたアイスはなんだ・・・まるで人の頭のように大きい!・・・いやいやそれ以上だ!でかすぎる!全体が繋がっている!これはまるで人体のようなアイスだ!・・・しっかし人体型のアイスとはおもしろいなぁ。よっこらしょ!)
冷凍庫の中から掴んでいたものを引き上げる。
「・・・ほ~う。この人体よくできているなぁ~。推定年齢41歳ぐらいの小柄なおっさんだな。メタボ具合もよく再現されている。それにこの精巧な目や鼻も・・・・・・ぎょええええぇぇ!!」
「うっす!どうしましたか~?」
さっきのチャラ男店員が飛んできた。
「これは本物だ!ひ、人が・・・凍って・・・!」
「あぁ~それっすか。その凍ってる人、うちの店長なんすよね~。それは、商品じゃないんで、ショーケースに戻しておいてくださいっす。」
「どうしてここで凍ってるんだよ!」
「まぁね。なんというか、その冷凍庫の中の温度は、-273度設定なんすけど・・・かくれんぼした時に、そこに隠れたみたいなんですよね~。店長もバカっすよね~。」
そんなことを言いながら、レジカウンターに戻って行く。
だが、その時、狩人の中に何かが火をつける。
あいつは嘘をついている。店長をこんなかわいそうな姿にしたのは、あのチャラ男に違いない。
このチャラ男を、野放しにしていいのか。今ここで、やつを追求しなければ、一体誰が、あいつを追求する・・・!こんなこと許されない!今、勇者の勤めを果たす時だッ!!行け勇者ドラゴン!
狩人は、レジカウンターを挟んで、その凶悪チャラ男と面と向かう。
「あなたは嘘をついている。違いますか。」
それを言い放った瞬間、チャラ男の雰囲気は、がらりと変わった。
「ほう。それを言いまスッか・・・。宣戦布告というのでいいスッよね?」
(この堂々とした態度と備わった度胸・・・あくまで自分が逃げ切れるとでも思っているのかッ!!フッ、いいだろう。その余裕も今だけだッ!)
「まずあなたは・・・店長を殺害した。これは間違いありませんね?・・・なんせ、今さっき証拠を2人で見ましたもんね?」
「フッ・・・困りますね・・・スッ。」
「なんだと?」
「あれは、ね。凍ってるだけなんッスよね~。全然生きてますよ、スッ。」
「しかし!どちらにしても、店長の生命活動はッ!止まったままだ。生きているか、死んでいるかと言われれば、死人だ!」
「はぁ~コールドスリープって知ってます?」
「なにぃ・・・」
「ここで、俺ッチは、さっきの自分の嘘を認めますよ。俺ッチが店長をあの冷凍庫に入れた。かくれんぼなどなかったッス。」
「あっさり吐きやがって・・・。自首するとはな。」
「話を聞け・・・まだ終わっていないスッよ」
「ふざけるな!これでお前はお・わ・り・だ。」
「俺っチは店長を優秀な人材とバイトリーダーながらに思ったス。だから来たるべきXデーに向けて、人類のために店長を保存することにしたっス。だから~殺意なんて、まったくなかったス。むしろ善意っス。」
「てめぇ!!ふざけるなよ!!」
ドーン!ガシャーン!!
狩人は、そのふざけた妄言に憤怒し、レジカウンターを、叩いて、置いてあったチョコやガムのカゴを床に散乱させ、チャラ男の胸ぐらを掴む。
「そんなふざけた言い分が、ここで通ると思っているのか!?あぁん!?」
「・・・へへへへ・・・・」
「・・・。」
「クヘヘヘヘヘヘヘへへ!!クヘヘヘヘヘ!!」
「てっめぇ!!何をッ!!ふざけるな!!」
「いや~おかしくってよ~。・・・なぁ、勇者様よおぉ?」
「っ!」
「お前らはみんなそうだ・・・力を振りかざすだけしかできない。そう肩書きを振りかざすことしかできない無能バカなんだよおおおぉぉぉッ!!なあぁぁ?」
狩人は、チャラ男を突き飛ばす。
チャラ男が後ろにぶつかったせいで、煙草が床に散乱する。
「いいか?勇者さまよぉ・・・俺はな。店長を凍らせた。ただ、それだけなんだよ。これのどこが罪だ?なぁ?何の罪にあたるんだ?教えてくれよ?」
「くっ!」
「そのおかげで、俺はバイトリーダーにして、このコンビニを支配した。なんせ店長は業務ができないからな。うるさいやつがいなくて、業務がはかどるっスね~。・・・俺ッチはね。いつもお客様に、10000円札を渡してるんスッよ。たとえ、お会計が10円の買い物客であろうがね。」
(大赤字じゃねぇか・・・)
「俺ッチはね。計算ができないんッスよ・・・。計算をしているとね。視界がブルースクリーンになってしまう・・・。だから、全員に、どんなお客様にも10000円札を渡すようにした。すると、そこには笑顔が見える。このお客様の笑顔に救われる日々だったッス。」
(だろうね。)
「お客様の増加率は、1000パーミル。5円のチョコは飛ぶように売れ、レジ裁きも高速になって、結果を示した。なのに、なのにッ!店長は、俺ッチを怒鳴る日々!!」
(よくクビにされなかったな・・・)
「なぜ!お客様の笑顔がそこにあるのにぃ!!なぜ!!そう思う日々だったスっね・・・。だからある日、思いついた。そうだ・・・冷凍すればいい・・・。」
(なんとしても追求せねば・・・ッ!これじゃあ店長が・・・報われない!)
狩人は、大きく息を吸う。
「待った!」
「はっ?」
「・・・そうだ。そうだよ。そんな行いは人としてどうなんだ・・・?罪に当たらなくても倫理的には、どうかって聞いてんだあぁぁぁ!?(どうだ、人間的に揺さぶりをかけてやったぞ!自責の念につぶれるがいい!!)」
狩人は、そう言いながら胸ぐらを掴んで、つばを思いっきりチャラ男の顔にシャワーし、睨みつける。
「・・・・・・。」
(こ、この目は、まったく・・・何もか、感じていないだとッ・・・!?)
「・・・・・・。」
(いや、ここで引くな。ここが正念場だ。これを逃せば、チャンスはないッ!)
「・・・・・・。」
(・・・よし、切り口を変えてみよう。)
狩人は、胸ぐらを放した。
ホットドッグなどが入ったショーケースを開けて、オレンジ色の部分を、チャラ男の顔に当てる。
「なぁ?お前悲しくならないか・・・?ご両親が悲しむぞ?(見たか!「両親の涙」だ!)」
それでは解説しよう!「両親の涙」とは、うわっ!何をするッ!
「えぇい!解説、コメンテーターは私の稼ぎどころなのだ!邪魔なやつ(地の文)は引っ込め!」
そういいながら現れたのは、さっき、空に飛んでいったはずの評論家のおっさんだった。
机を店内にセットし、椅子に座る。
「原稿~!!!・・・・・・よしよし、あぁ~えぇ~と「両親の涙」とはですね。非常に、寒々しい稀薄な人間関係となった現代社会にとってもなおやっぱりご両親という存在は、心にダイレクトアタックできる要素だと思いますね~。そのような存在が涙を見せたらどうですか?想像してみて下さい・・・・・・えっ?尺が押してる?今、2763文字目?えぇっ?2775、7?あぁ・・・えぇ、次どうぞ。」
「・・・俺ッチは、孤児院出身なんですよね~。両親はいない・・・ッス。(ヘヘッ食らえいやがれッ!「闇のチラ見せ」!!)
「えぇ~と、どこだ。最近は老眼も始まってきてですねぇ・・・えっ?早くしろ?・・・おい!君どこの?・・・いやだからどこの所属だって聞いてるんだよ!!・・・えっ!局の社長の息子?夏休みの社会見学でってこと?・・・・・・スウゥ~大変失礼致しました。お見苦しい姿を見せてしまい、誠に誠に・・・申し訳ありませんでした。えっと名前は?・・・ナガトくん?そうかナガト君か~!いい名前ですね~。その~巷でいうスクールカーストって言うんですか。それの頂点に君臨してそうな感じするね~。これ終わったら、おじさんナガト君におごるから。ねっ?だから、今回のことは忘れてねっ?・・・ねっ?あと、社長によろしくって言っといてね?・・・ねっ?」
狩人とチャラ男の戦いは次回に続くッ!!・・・・・・持ち越すほどの内容か?
(いやいや・・・おっさん邪魔すぎだろッ!!)