まずは作戦を練るんだ!!
狩人は歩きながら、作戦を考えていた。
(う~ん・・・それにしても暴走族が相手となると単車で走ってるってことだよなぁ~。スピードは速い。
・・・よし、ここでいったん自分の攻略知識を確認するか。まず、もっともオーソドックスなやり方は、乗り物ごと爆発させるだな。)
その時、狩人の歩いている横にスーツを着た評論家のおっさんが現れた。
一緒に歩き始める。
「そうですね。これは非常に合理的かつ早い方法だと思います。それ以上にね、なんと言っても思いきっりがいいですよね。現代社会というストレスを溜めやすい時代にも関わらず、関わらずですよ!何かを破壊するということができない世の中ですからね。困ったもんですよ。ほんっとどうなってるんだって話ですよね。呆れますよ・・・(静かな憤怒)」
(まぁ~確かに、派手に爆破は爽快だよな~。整いすぎた世の中には特に刺激的だ。)
「ちょっとね・・・話は脱線しますけれどもね。車の運転ってね。これまたイラつくことが多い!
おい!どけ!とかね。チッ!とかね。1回乗っただけでみんな座席で言うと思うんですよね。
だから、私は提案したい。運転中はRPGを撃ってもいい!こうすれば、非常に毎日が刺激的で、毎日がアトラクションになると思うんです。自分がアクション映画の主人公になった気分になれて、邪魔な他車を排除できる!どうです素晴らしいと思いませんか?」
(・・・・・・・・・いやいや、ば、爆破はやめよう。あくまで依頼者はこらしめろという指示なんだ。それに転移前に見たパッケージにはこのゲーム、対象年齢はA指定だったはず。・・・はず。)
狩人とおっさんは歩き続ける。
(よし、気を取り直して・・・。こらしめろということは、単車から降ろす必要が出てきたな。
と、いうことはだ。洋ゲー流に従うなら俺が車を運転して、単車に激突がメジャーだが・・・。
ところで、車を調達することってできるんですか?)
「うーん。そうですね。やはりそこもオーソドックスにいきましょう。」
(つまり・・・?)
「一般人を車から降ろして奪ってということですね。」
(あ~確かに、よくありますね~。でも、勇者がそんなことしても大丈夫ですかね?)
「う~んそこは、仕方がないと思いますね~。なんたって、主人公ですから。そんなモブのことなんてほっとけばいいんです。ローンが残っていようが、派手に運転して、ぶつかってやればいいんです。どうせモブのものなんですから。モブの背景なんて誰が気にするんですかね~。ほんっと呆れますよ・・・(静かな憤怒)」
(・・・・・・モブを踏み台にか・・・確かに主人公の特権ではあるけれ・・・って!!)
その時、ようやく狩人は、おっさんに気づいた。
「誰だよ!?俺の脳内と会話してんじゃねぇ!つーかおっさん、ストレス溜まりすぎだ・・・。この1000円やるからスーパー銭湯でもいってこい・・・な?おっさんはさ・・・働き過ぎなんだよ。
自分が疲れているのかもわからないほど疲れているんじゃないのか?たまには自分に閉じこもってみなよ!!」
「ド、ドラゴンさん・・・・・・グスッ・・グスッ・・あ、ありがとう・・グスッ・・ござい・・ます。」
「あぁ、もっと泣くんだ。おっさん、おっさんは・・・どんなときも批判し続け、批判し続けて、必死に戦って、必死に社会の敵を演じてきたんだよな・・・!自分をどこまでも犠牲にして・・・!すべては社会を回すために。でもさ、おっさんであっても心は、人間なんだぜ。それを忘れるなよ・・・!」
「うおおおおおお!!私の魂の汚れが浄化されていく!!心が、こころがどんどんと少年にいいいぃぃぃ!!」
評論家のおっさんは体が発光して、宙に浮き始める。
「・・・・・・ありがとう、勇者ドラゴン。あなたのおかげで私本来の、姿を取り戻すことができました。この、姿。未来のすべてが、光。何にでもなる可能性をもった体。私の、少年だったときを思いだしました。この姿で、また一から・・・明日から生きてこうと思います!」
「あぁ、がんばれよb」
「はい!!本当にありがとうございました!!それでは!」
評論家のおっさんはそれだけを言い残し、空高くそのまま飛んでいった。
それを狩人は見上げる。
綺麗な空だった。
「いや~・・・・・・・・・意味不明だったなぁ~。」
1000円を失い、結局クエストの作戦も練ることができなかった狩人であった。
だが、人々の悩みを解決する。
それもまた、勇者の役目であった。