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第一撃「遅れてきた男」

 星色町に星が降る。

 もう何度目かわからないが、やはり星はこの大地に降り立った……




 無敵剣ファシバ率いる統剣軍の襲撃から一年。

 神蔵雷は中学生となっていた。

 しかし、その学校も休みがちで、出たとしても、ほとんど友人と会話することもない。

 星色町は小さな町であるから、クラスメートも幼い頃から気心が知れた者ばかりで、人見知りでそうなるということはあり得ない。

 雷を蝕んでいるのは間違いなく一年前の出来事。

 統剣軍の一員として悪事に加担した過去。

 それは洗脳などではなく、自らの意思での行動だった。

 なぜそんな事をしたのか。

 雷は何度も自問した。

 だが答えはわかりきっている。

 姉だ。

 彼の姉――神蔵いおんは、完璧超人だった。

 意志が強く、成績優秀、スポーツ万能で家事もこなす。

 それは、彼女がはじめからそうだったというわけではない。

 二人の両親は、それはとても気楽な人物だった。

 危機感がないと言ってもよい。

 会社は平気で遅刻し、或いは無断で休み、怪しい儲け話に簡単に乗る。

 結果、仕事はクビになり、多額の借金が残った。

 いおんはしっかりしなくてはいけなかったのだ。

 もし彼女がそう自覚して行動していなければ、家族は今頃全員野垂れ死にしていただろう。

 その後、母親が死に、それによって目が覚めた父親と、その再婚相手のしっかり者の女性により神蔵家は持ち直したのだが……。

 雷は何も出来なかった。

 いおんがはじめから強い人間でなかったことを知っているからこそ、それが天賦の才でないことも知っている。

 だから、才能だと諦めることも出来ない。

 だが、雷にはその努力が出来なかった。

 それは妬みを生む。

 結果、雷は偶然ファシバに情報提供者に選ばれた際、力を求めて協力してしまった。

 それどころか、力を得て暴走した。

 その重大さに気づいた時、雷は耐えられなくなってしまったのだ。

 

 そして、彼の足は、自然とある場所へ向いていた。




 星色町で最も巨大な建造物、それはダムである。

 十年ほど前に建設された星色ダム。凄まじく広大な面積が水に沈んでいる。

 雷は、ダムの縁にいた。

 足元の遥か下に水が満ちているが、落ちれば水など関係なく死ぬだろう。

 もちろんそこは立ち入り禁止の場所だ。

 だが、雷はかまわず侵入していた。

 危険など知ったことではない。

 いや、危険だからこそ来たのだ。

 雷は靴を脱ぎ、それを綺麗に揃えると、その上に封筒を乗せた。

 そこには「遺書」と書かれてある。

 そう、雷は死ぬ気だった。

 脳裏には、家族の姿がよぎったが……

 それを振り切るように飛び出した。

 小柄な体は重力に引かれ遥か下方のダムへまっさかさまに落ちてゆく。

 あと1秒もしないうちに雷の体は水面に叩きつけられるだろう。

 雷は一瞬の激痛を覚悟した。

 だが、その激痛はいつまで経っても訪れなかった。

 また、頭が下であるのに、むしろ痛みは足の方にある。

 それも打撲のような痛みではなく、圧迫される感じだ。

 雷がおそるおそる眼を開くと、そこには……

『よう。ぼうず。命を粗末にするもんじゃあないぜ?』

 はじめは何が何だかわからなかった。

 見えるのは、足を挟む何本かの金属の柱。

 それから、声。

 中年男性のものだが、どこか響きに合成音のようなものがある。

 似たようなものに雷は覚えがあった。

「機械……生命体……?」

『おう。ま、正確には金属生命体だがな』

 その声に合わせて雷の体が引き上げられた。

 とすん、とダムの縁に乗せられた雷の目に映ったのは、巨大な影。

 20メートル近い巨体が、ダムの水面に立っている。

 甲冑を思わせるフォルムだが、白騎士のそれとはだいぶ違う。

 白騎士のフォルムは角ばっている部位が多いが、この巨人は曲線と丸みが多く、手足なども円柱で構成されていた。

 この自称金属生命体は体のあちこちに緑に光る球体が埋まっており、心臓の鼓動のように明滅している。

 少なくともこのような姿は、白騎士や七星剣、そしてその敵たちにもない特徴だった。

「だ……誰……?」

『お、俺かい? 俺ぁスマッシャー。銀河の彼方からやって来たヒーローさ』

 言って、スマッシャーはがははと笑った。

『それより何だぼうず。明らかに自殺しようとしてただろ?』

「そ、それは……」

 スマッシャーはずい、と顔を近づけてくる。

 西洋の兜のような顔の、目に当たる部分が優しい光を放っていた。

『ほれ。おっちゃんに話してみ?』

「うるさい! あんたには関係ないだろ!」

 雷は背中を向けた。

『ほ。難しい年ごろだねぇ。じゃあ独り言が漏れるかも知れんが適当に聞き流してくれよ』

 スマッシャーは飄々とぶつぶつ喋るというなんだかよくわからない「独り言」を始めた。

『俺の星ではよぉ、一人前の印ってのがあってな。他の星に行ってそこで悪を倒し、ヒーローになって初めて一人前ってことなんだよ』

 スマッシャーは遠い空を見上げながら言う。

『俺は完全に出遅れてな。着く星着く星同期先輩後輩が先に着いてたのさ。そうやって宇宙を彷徨う内、気が付いたらオッサンになってた。これでもルーキーなんだがな。がはははは』

 雷は聞かないように努めていたが、それでも気になった。

 聞かざるを得ない。

 聞きたくなる。

 このオッサンルーキーの人柄が、強引に心に侵入してくる。

 何だかよくわからないが、面白い。

 ヒーローというより商店街のオヤジなのに。

『ところでよ、この星にピンチはあるかい?』

「独り言じゃなかったのかよ」

 ふてくされて雷が言う。

『そうだったか? がははははははは!』

「うるさいなもう。この星には何度もヒーローが現れてピンチを救ってるよ。残念でした」

『むう。それで探し回ってもそれらしい悪はいなかったのか。暗黒皇帝が向かってるって聞いたんだがなぁ』

「いつの話だよ。その後も……別の勢力が来た……けどそれも別のヒーローが倒しちゃったよ」

 別のヒーローというところで、雷の声のトーンが僅かに落ちた。

 が、スマッシャーがそれに気づいた様子はない。

『そうか。宇宙を旅してると時間の感覚はなくなってくるからな。ま、そしたらまた別の星系を探すか……あ、そうそう最後に一つだけ』

「何」

 雷がぶっきらぼうにそう言うと、スマッシャーは空を指差し、

『凄い悪意を持った奴らが飛んで来てるんだが、この星にはヒーローいるんだよな? そいつに任せた方がいいか?』

「えっ!?」

 上空には、巨大な塊が、それも猛スピードで、いくつも――

 轟音が多重奏で鳴り響いた。

 まるでそこに落ちるのが当然であるかのように、星色中学校の校庭に落下したのだ。

 校庭に立つ三体の巨人。

 いや、正確には人型ではないものの方が多い。

 一体は、ライオンの上半身とホルンをくっつけたような金色の金属器。

 一体は、下半身が二頭の馬で、その胴体の間から人型の上半身が生えている埴輪。

 そして、こぶ牛型の埴輪。

 どれも二〇メートル近くある。

 三体は、校庭に輪を作るように並んだ。

『フハハ。やっとだ。やっと我らが主が甦る』

 ライオンの顔が金属であるのに自在に歪み、言った。

『外よりの客、その力の衝突が主に力を注ぎ込ム。引き寄せた甲斐があったというもノ。カカカ』

 人型の埴輪が言う。

 それに呼応するように、こぶ牛が『ぶぉおおん』と唸った。

『3000年の眠りより、忌々しき楔より今解き放たれン』

『目覚め給え。我らが主!』

『ぶぉおおおおおおおおおん!』

 

『地球魔王・(おおかみ)(がらす)様!』

 

 2体の声が重なり、それにこぶ牛の唸り声が混じり辺りに響き渡る。

 原色を適当に散らしたような光が明滅し、そして―― 

『ぬぅ?』

 獅子頭が間の抜けた声を漏らした。

 何も起こらないのだ。

『どういうことだ? カセルプデス、お前の計算ではこれで主は甦るはずだろう』

『ふむ……どうやら、力の流れが滞っているようダ。或いハ……我らが主の力の絶対量が増えているのかも知れヌ』

 人型――カセルプデスが言う。

『成程……流石我らが王。眠りにつきながらも進化されておるという事か。……しかし、ではどうする?』

『とりあえズ……地下に潜りエナジーラインを刺激してみよウ』

『一人で十分か?』

『なにぶん範囲が広イ。もう一人欲しイ。グリフォリュア、来てくレ』

『承知』

『ゴブクリュバはこの地で暴れ、客を呼び寄せ戦ってくレ。力を注ぐのダ』

『ぶぉお』

 カセルプデスと獅子頭――グリフォリュアは硬いはずの大地に、まるでそこが水面かのように吸い込まれて行った。

 残されたのはこぶ牛――ゴブグリュバ。

『ぶぉおおおおおおおおおおおおおおん!』

 ゴブグリュバのいななきが辺りを震わせる。

 校庭の木々の葉が宙を舞う。

 その舞い散る葉を吹き飛ばし、ゴブグリュバが疾走した。

 一直線にダムに向かう。

 その進行方向にある建物をなぎ倒し、田畑を踏み潰し、ただ前に突進する。

『おい。ヒーローがいるんだろ? 何で出てこない? アイツ、このダムを破壊する気だぜ?』

 スマッシャーは迫り来るゴブグリュバを睨みながら、雷に言う。

「そんなこと僕に言われたって知らないよ!」

 ――どうしたんだよ! 練太兄ちゃん! セブンソードに乗ってたじゃないか! ……何で、何で助けてくれないんだよ!

『ちぃっ! こうなったら俺が止めるしかねぇな』

 スマッシャーはダムの縁から飛び降り、突進してくるゴブグリュバの前に立った。

『さぁ来やがれ!』

『ぶぉおおおおおおおおおおおおおん!』

 ゴブグリュバもスマッシャーに気づき、加速する。

 こぶ牛そっくりのその形態には当然ながら二本の角が存在する。

 その鋭い角が高速でスマッシャーの胴に迫る。

『ッしゃぁっ!』

 がぎん、という音が響き渡る。

 スマッシャーはゴブグリュバの角を掴み、受け止めていた。

『ぶぉおおおおおおおおおお!』

 ゴブグリュバは後ろ脚で大地を踏みならし、大きくわなないた。

 そして角を掴まれたまま再び突進する。

『くっ、バカ力め』

 ゴブグリュバの突進力は相当なものだ。

 スマッシャーの体はじりじりと押されていく。

 ダムの放水路として使われている川――雨天ではない現在は流量は少ない――に足がかかる。

 このまま押され続ければ、ダムの外壁にぶつかってしまう。

『ぬぅううううううううああああああああああっ!』

 スマッシャーは叫び、掴んだ角を支点に思い切りゴブグリュバを持ち上げた。

『ぶお?』

 ゴブグリュバはスマッシャーと垂直の形となる。

 そのまま後ろに倒せばブレーンバスターだろうが、後ろはダムだ。

『らあっ!』

 スマッシャーは持ち上げたゴブグリュバを前方の地面に叩きつけた。

 直下型地震のような衝撃が起こり、雷はあやうくダムの縁から落ちそうになった。

「もう、危ないなぁ! あやうく死ぬところ……」

 ――あれ? さっきまで死のうとしてたのに……

 雷の脳裏に何か考えが生まれそうだったが……

『つえあっ!』

 スマッシャーがジャンプからのキックを倒れたゴブグリュバに放ち、それによって再び起こった地震により、考えるどころではなくなった。

 スマッシャーはなおも攻撃を続ける。馬乗り――相手は牛だが――になり、拳を次々と叩きこむ。

「圧倒的じゃん……って、あれ?」

 そこで雷はおかしなことに気づいた。

 傷がついていない。

 ゴブグリュバに、一切の傷がないのだ。

『ぶぉおおおおお!』

 馬乗りになられていたゴブグリュバはいななき、大きく首を振ってスマッシャーを振り払った。

 そして体勢の整っていないスマッシャーに角を叩きこむ。

『ぐあっ!』

 スマッシャーの脇腹をゴブグリュバの片方の角が刺し穿った。

『ぶぉおおおおおおおおおおおおお!』

 ゴブグリュバはそのまま突進し、スマッシャーごとダムに体当たりしようとする。

『ぐうぅう!』

 スマッシャーは脇腹を貫く角を掴みなんとか踏ん張る。

 それでもじわじわと押されていく。

 スマッシャーは角を折ろうとチョップを何度も放つが、ひびのひとつも入らない。

『まさか……星体か!』

「せい……たい?」

 雷には何が何だかわからない。

『くそっ……! こいつは他星の力じゃ決して傷つかねぇ! どうすりゃいいんだよちくしょう!』

「何だって!?」

 ――じゃ、じゃあ……白騎士でも七星剣でも……あいつには勝てない……!?

『ぶるるるるるるるろろろろろっ!!』

 めきめきと音が響き、スマッシャーの装甲に脇腹からヒビが入っていく。

『ぐ……あ……』

「ど……どうすれば……」

 ――せいたいなんて意味わかんないし……ん? あれ……?

 雷の脳裏に閃くものがあった。

 ――僕は……知ってる?

 星体――それは星の内部から生まれた高度な精神性を持つ生命体。その星の上でしか生存できない代わりに、その星の上では絶大な力を発揮し、また、その星の力でしか傷つくことがない。

「何で……そ、そうか」

 雷は黒雷として統剣軍に協力していた。

 その際、統剣軍の持つデータベースをインストールされていた。

 即ち、その脳には宇宙全般の膨大なデータが存在しているのだ。

「あれが……役に立つこともあるのか……」

 雷がひとりごちている間にもスマッシャーはダムに向かって押し込められていく。

『ぬぅぅ……くそっ!』

「ああっ……どうすれば……」

 雷には何も出来ない。

 違う。

 ――知ってる。

 そう

 ――僕は事態を打開する方法を知ってる。

 それは統剣軍のデータに記載されていた、対星体戦法。

 そしてスマッシャーたち金属生命体の情報も――

 後は

「勇気を……出すだけ……だ……」

 急に体が震え始めた。

 なぜだろう。

 統剣軍に与した時にはこれほどの恐さはなかった。

 あの時は、反抗期に似た無軌道な暴走だった。

 責任など考えてはいなかったからだ。

 ――でも……今は……自分で決めたことに責任を持たなきゃいけない。

 だから怖い。

 ――怖いけど……

「やらなきゃ……ダメだ!」

 雷の震えが止まる。

 そして大きく息を吸い

「スマッシャーーーーーッ!!」

 力の限り叫び、飛び出した。

 ダムの縁から。

『お、おい……!』

 雷の体は、再びダムへ向かって落ちていく。

 しかし、その顔に絶望や恐怖はない。

「合体だーーーーーっ!」

『っ……! 無茶苦茶だぜおい!』

 スマッシャーの全身に配置された緑の半球が光を放った。

 その光が雷を包み込んでいく。

 合体。

 金属生命体のうち、スマッシャーの種族のものは、他の生命体と合体する能力を持っている。

 合体によって、その生命体の特質を得る事ができるのだ。

 これは、鉱物系の生命体であり長大な寿命を持つ彼らは、銀河を超えて活動することも多く、その中で獲得した能力である。

つまり、どの星に着いたとしても、その環境に適応できるわけである。

 雷は、統剣軍のデータからそれを知っていた。

 そして、その合体が、人間のようなタンパク質タイプの生命体には、とてつもなく肉体に負担をかけることも。

「ぐうう……」

『大丈夫かよおい』

「う、うるさい! いいから続けてくれっ!」

 雷とスマッシャー。

 二人はどちらも生命体。

 七星剣のように操縦するわけではない。

 スマッシャーの体である以上、あくまでスマッシャーが動かす。

 雷はあくまで補助的な存在だ。

 しかし、その志向性がシンクロした時、より大きな力を発揮できるのだ。

 ――姉ちゃんみたいに、ね……

『らあっ!』

 炸裂するスマッシャーの拳。

『ぶぉおおっ』

 先ほどまでと違い、明らかに相手の表皮にダメージを与えていた。

 陶器にも似た表面が砕け、虚ろな空間がむき出しになっている。

『よぉし、行けるじゃないの! ……って痛え!』

 ガッツポーズをしたスマッシャーだが、先ほど刺された脇腹の事を忘れていたらしい。

 腕を伸ばした反動で痛みに呻く。

『ぶおおおおおおん!』

 そこにゴブグリュバは怒りの声を上げ、突進してくる。

『でぇい!』

 真正面から受け止めるスマッシャー。

 そしてそのまま持ち上げる。

「お、おい腹の傷大丈夫……」

 雷が心配しかけたその時――


 ぐきっ


『あ、やっぱムリだわ』

 脇腹どうこうではなく、腰が破滅の音を立てた。

 そのままブレーンバスターのように真後ろに倒れる。

『ぶぉ!?』

 そして、山肌にゴブグリュバの角が突き刺さった。

『かーっ……』

 一方、スマッシャーは腰を押さえて悶絶している。

「何やってんだよ!」

『やっぱ若くねえなもう』

 ごきっ、と無理やり腰を押し込みつつ、スマッシャーはゴブグリュバに向きなおる。

『さぁて、そんじゃカッコイイところも見せときますか!』

 飛び上がるスマッシャー。

 高く。高く。

 雲を突き抜け、高度1万メートルまで到達する。

『いくぜ! ドリル……スパイラル……スクリュー!』

 そのまま宙返り、キックをうち放つ。

 スマッシャーの腰が、一気に回転した。

 ミキサーのように唸りを上げ、同心円しか見えないほどの高速回転のまま、ゴブグリュバ目がけ落ちていく。

 ゴブグリュバも山肌から角を外し、そのまま天に突き出す。迎え撃つ腹だろう。

 埴輪にしか見えないゴブグリュバの姿は、どこか滑稽ですらあったが、そんな生易しいものではない。

 大地より生まれ、大地の力を持つゴブグリュバ。

 その体は、粘土のように滑らかで、ダイヤより硬い。

 踏みしめる大地より力を得て、スマッシャーを貫かんとしていた。

『おおおおおおおおおおおおおおおおおお』

 稲妻。

 まさにそうとしか形容のしようがない。

 想像を絶するスピードで落下してきたスマッシャーとゴブグリュバが衝突。

 猛烈な閃光と爆音が辺りに轟いた。

 巻きあがる膨大な土煙。

 そして――

 一陣の風が吹いた。

 土煙の中から現れたのは、ゴブグリュバ。 

 その胴体に、巨大な穴が空いていた。

 直後、


 どばしゅ!


 地面をぶち抜き、スマッシャーが飛び出した!

 そのキックのあまりの破壊力は、ゴブグリュバをぶち抜くだけでは留まらず、そのまま地面に突っ込んでいたのだ。

 天空と大地を繋ぐ巨大なV字を描く軌道。 

 スマッシャーの着地と時を同じくし――

『OOOOOOOOOOOOOO』

 人間には再現しえない断末魔とともに、ゴブグリュバが大爆発を起こした。 

『ふっ!』

 華麗にポーズを決めるスマッシャー。

『苦節320年! よーやく、俺もヒーローの仲間入りだ! ヒャッホー!』

 飛び跳ねて喜ぶオッサンヒーロー。

「……それはいいんだけどさ……もういい加減限界だから……合体解除してくれない……?」

 憔悴しきった雷の呟き。

『あ』

 いっけね、と頭をかくスマッシャーであった。

 ちゃんちゃん。

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