眼鏡地味子になるのは必然です
どうしても眼鏡をとったら美少女という王道を書きたかっただけです。
『ヒロ姉は無防備すぎるからバリア代わりにこれ掛けとけよ』
中学から高校に上がる頃、一つ年下の弟に誕生日プレゼントと称して丸眼鏡をプレゼントされた。読書が好きで目が悪くなったのを勘付いたのだろう。
何て優しい弟。
ヒロは渡された丸眼鏡を掛けてみて少し照れながら、似合う?と微笑む。
弟は「まあいんじゃね?」と褒めてくれたので高校からコレを掛けて通うことにした。
春から高校生になるんだと胸を踊らせている私に微笑む二つ上の兄は慣れた手付きで私の髪をおさげにしていく。
『ヒロは読書するからこの髪型がいいかな、よく似合ってるよ』
優しい兄にそんなことを言われれば嬉しくなり、おさげにされた髪を触って微笑んだ。
その姿を見て、兄と弟は溜息をこっそり吐く。
全く、どう育てたらこんなに無防備な女の子に出来上がるのか。困っている人がいたら絶対に助けようとし、中学の頃は眼鏡もしていなく髪はサラサラのストレートで可愛らしい顔が露わになっていたせいか「場所がわからないんだ、ちょっと助けてくれないか?」と怪しい車に無垢な笑顔を向け「いいですよ」と乗り込もうとしたほどに人を疑わない。
高校では頭の良さで良い高校に行けることとなり、地元の知り合いがいないことを良いことに兄と弟は地味子にと改造することを決意した。
「メガネ大事にしろよな…」
と、さりげなく外さないでよ。と言った弟に便乗して、兄も口を紡ぐ。
「今日はいつも以上に綺麗に括れた。頑張っただろう?」
と、これまたさりげなく頑張ったと言って取らせないように誘導している。
優しいヒロは頑張ってくれたのか!と目を輝かせて「ありがとう」と言う。その姿に兄の心が多少痛まろうと、己の行いに悔いはない。
入学式なんだから、とスカートを一つも折らずに膝上5センチの格好で、紺色の線とリボンが可愛らしい半袖セーラー服の上には真っ白のカーディガンを着させその場で立たせる。
「うん、似合ってる」
綺麗な顔が微笑むと妖艶に見えて、実の兄だが照れてしまうヒロの姿は黒髪おさげに丸眼鏡で顔半分隠れている。地味子というアダ名が付きそうだが、そんなアダ名をつけた奴から始末してやる、といった兄と弟のシスコン魂が燃えた。
高校一年生になり、桜の花が咲き乱れる光景が目に焼き付く。
大好きだった少女漫画の記念すべき第一話に瓜二つのそれと解ると、坂木尋は蹲った。
三つ編みにした長い髪が揺れ動き、フレーム無しの丸眼鏡は落とさないように片手で支えた。
この世界が少女漫画だと自覚すると共に、死ぬ前の自分が男子同士を見てカップリングする腐女子であったと思い出した。
大好きだった少女漫画には出てくる様々なイケメンの絡みに悶えたほどである。
しかし、ヒロは自覚していなかった。 そのイケメン達に奪い合われる主人公が自分である…と。