「案内を頼む」
いつものようにチャイムが鳴り、先生が教室に入って来ると同時に号令を委員長が言う。
担任は若い女性で長島紗恵、彼女のあだ名はさえチン
彼女は生徒の中でも人気の先生だ。
彼女の声を聞きながら俺は窓の外を見る。
其処は晴れ晴れとした青空が広がって日差しが照りつけている。
だが、この空は疑似で本物ではない。
「・・・くん!月宮雪刀君!!」
「っ!!?」
突然の声に肩を揺らし前を見るとクラス全員の視線が雪刀に集中し教壇では頬を膨らませた紗恵が前屈みになり睨みつけている。
その横には無表情でこちらを見ているクリーム色の髪で鋭い目線の少年がいた。
葵が言っていた転校生とは彼のことか、と瞬時に理解すると顔を引きつかせる。
「先生の話、聞いてましたか!?」
「えーと、先生の声はいつも聞こえてますよ?綺麗な声ですね?」
「ええ、ありがとう。だけど、聞いてないでしょ?」
「あはは・・・」
紗恵は仕方ないと深いため息をつくと身体を元に戻す。
「彼は有栖川ナツ君。転校生よ?彼はL77からやって来て数日だから仲良くして下さい!それから・・・有栖川君の学校案内は月宮君がすること」
「は!?ちょっ!!」
「それでは朝礼を終わりにします」
立ち上がった雪刀を無視して委員長が号令をし紗恵は教室を出て行く。
面倒事を任され今度は此方が深くため息をつく。
「災難ねぇ?雪刀?」
ニヤニヤしながら葵は近寄って来た。
俺は重力に逆らわず椅子に座り込み頭を抱える。
「なんで俺が・・・」
「さえチンの話聞いてないからよ!それより見て」
顔を上げ葵が言った場所を見ていると既に女子に囲まれている転校生、有栖川ナツ
彼は淡々と机に教科書を入れ女子達の言葉は無視をしている。
男子はそれを遠巻きに見て噂を互いにしている。
「ま、転校生は珍しいからな?しかも顔は二枚目、俗に言うイケメンだからな」
「そーねぇ~でも、雪刀も同じようなモノでしょ?」
「は?」
「なんて事言わせるのよ!」
顔を真っ赤にさせる葵に俺は眉を寄せると彼女はハッ、とし雪刀を殴った。
その衝撃で机に額をぶつける。
「てぇ~~~何すんだよ・・・って・・・」
顔を上げれば葵の横に噂の転校生が立っていた。
表情を変えず彼はただ雪刀を見ていた。
その行動にカチコチに固まり口を引き攣らせる。
「月宮雪刀。放課後、案内を頼む」
「へ!?あっ、OK!OK!放課後な!」
有栖川ナツは用件だけ言うと自分の机に戻って行った。
残った二人は唖然とし有栖川を見ていた。
「なんか、クールだね?有栖川君」
「つーか、気配なかったんだけど・・・」
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