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「てめぇ!ここにいやがったか!!」
聞こえてくる怒号、周りに人がいないのが幸いと言うべきか運が悪かったというべきか
人里から離れた獣道に二人の少年が立っていた
陽「いや、あの……………」
しかし一人の少年、月風陽は困惑していた
何しろ相手は、目の前にたっていて自分に怒声を浴びかけてくるこの少年は自分の腐れ縁でもある黒空白土本人だったのだから
白土「てめぇのせいで…………杏奈が攫われたんだよ………………んで杏奈さらったやつからこう連絡が来た……………『てめぇを殺せば杏奈は帰ってくる』ってな」
陽「っ!」
一気になくなる距離、そして無くなるにつれて白土の拳が陽に近づいてくる
そしてその距離がほとんどなくなっている頃には陽は殴り飛ばされていた
陽「いって…………!何で俺が殴られるんだよ…………その話を聞く限り俺は杏奈ちゃんが攫われた直接の原因だろうけど……………なんでお前はそう簡単に信じ込んでんだよ…返してくれるかどうか分からないだろ…………それなら俺ら2人…………とは言わなくても協力者さえ募れば…………取替えせるかもしれないじゃないか………………」
白土「うるせぇ!俺はお前だけは認めてたんだがな……………なんだかんだ言って俺ら兄妹を救ってくれたと思っていたからな……………」
その言葉に陽は少し怒りを覚える
陽「ならなんで…………ぐふっ!!」
そして少し怒りのこもった声で反論しようとすればその言葉を遮るように白土の蹴りが顔に飛んでくる
白土「うるせぇんだよ…………俺は聞いてんだよ、杏奈をさらった奴に………お前に勝てるようにってお前の能力をな……………そんでもってそれで何をしたかをな」
陽「能力…………で何をしたか………………?」
陽は自身の中にある記憶を必死に遡った
しかしどれだけ遡ろうとも自分が白土を怒らせるようなことをした覚えはなかった
当たり前だ、この時の陽には知る由もないが…………『そんなもの初めからなかったのだから』
白土「お前の能力は創造と限界をとっぱらって対象を極端に上げる能力って聞いている
杏奈のお前に対する感情…………お前、『恋愛感情を作って杏奈がお前を好きになるように仕向けたな?』」
陽「っ!?そんなこと出来ない!俺の能力は存在していて………がっ…………!」
また蹴りが飛ぶ
最早白土にとっては陽がどんなことしていようと関係なかった
仮に、仮に白土の言っていることが可能であり本当にそのようなことをしていた場合、陽を殺したところで能力が解けるわけではない
白土「たとえ嘘だろうが嘘じゃなかろうがそれはお前を殺せば分かることだ
お前の能力だといろんなものが作り放題…………なら感情も難しくないないはずだ」
ーーーだが、白土にはそんなこと関係なかった
白土はただ妹に貼りつく虫を、害虫を追い払っていくか2度と近寄らなくする為に徹底的に潰すかの二択しかなかった
陽「は、話聞けよ……………俺は別にそんなことしてねぇよ…………第一!感情が作れるならお前がこうやって俺を殺そうとすることもなかったはずだ!!殺さないような感情を植え付ければいいんだから!!」
その言葉に白土の動きが止まる、実に簡単なことだったがその実に簡単なことは彼も理解していた
理解していたがーーー
白土「………確かにその通りだ………けど、お前が単純にお前がマヌケだったってことも考えられるだろ?」
ーーー彼は人の話を聞かないくせに妹に関してなら素直に聞き、そして自分の考えで動く様な奴だったのだ
だから、いくら言っても聞かないし自分の考えを貫き通すばかりなのである
陽「く、くそ…………!」
白土「逃がすかっての!!」
陽「はぐっ…………!」
逃げようとして後ろに振り向いた陽の背中を蹴っ飛ばし再び地面に倒れさせる
彼はここから彼を逃がす気はなかったが簡単に殺す気はなかった
彼は自分の望む答えが帰ってくるまで彼をいたぶり続ける
たとえそれが事実と異なっていても…………である
白土「ほら、言い訳してないでさっさと認めろや
『恋愛感情を作ってそれを杏奈に埋め込んだ』ってな」
陽は体を震わせていた
怒りでそうなっている訳ではない
恐怖だ、彼は改めて自分の知り合いがここまで恐ろしいヤツだとは夢にも思ってなかったのだ
陽「し、知らない…………知らないから…………」
白土「ちっ…………腕の1本いっとくか?それとも足の方がいいか?俺には及ばないがお前もそこそこ運動神経がいいほうだ
だとすると…………そうだな、足を折ろう
お前利き足は右だったか?なら右足を潰そう……………そうだな、脛を叩き割って潰すことにしよう」
先程も言ったが彼は妹に関しては人を躊躇なく傷つけることが出来る
度合いによれば殺すことだっていとわない
所謂…………サイコである、いたぶってから自分の望む答えを探そうとする
猟奇的なことも簡単にできるのが、白土という人間である
陽「あ………あ…………!」
陽は逃げられない、自身が今まで絡んできた相手がこれだけの異常者だと知って恐ろしさに身をかられていた
白土「つーわけで、死ーーー」
腕を振り上げた白土に対して陽は目を瞑ることしか出来ない
だが、目を瞑り目の前の凄惨な場面を見たくないと思いそのまま視界を目蓋で防いでいたが痛みが全然来ないので恐る恐る目を開ける
そこには白土の姿はなく、変わりに八雲紫が立っていた
陽「ゆ、紫………………?」
紫「大丈夫、怖いのはもうどこか遠くに送ったから……………大丈夫」
紫は彼を抱きしめ、赤子をあやすように背中を撫でる
陽は紫に抱きつき今味わった恐怖を必死に振り払おうとしていた
紫「大丈夫、大丈夫だから………………ほら、家に帰りましょう?」
陽は無言で震えながら頷いた、先程までの恐怖が身についていた
この世界の戦いにおいての決着方法は基本的にどちらが魅せれるかの弾幕ごっこ、しかし彼が今しがた味わったのはそんな生ぬるいものではなく純粋な殺意と恐怖を味合わせるようなものだった
陽「…………………」
紫「陽ー…………出ておいでー」
それ以降、彼は必要最低限以外八雲亭からでなくなった
紫や藍がいるなら外に出るがそれはあくまで終始一緒の場合である
一人で分かれる、もしくはそこまで腕が立たない人物と一緒の場合である
幻想郷にいる人物は大抵腕が立つが彼の場合白土より確実に強い人物だと思った人物でないといけないのだ
それだけ、彼の心に恐怖が植え込まれてしまったのだ
だが彼は同時に力が欲しいと考えていた、白土を倒す力を
どんなものでも殴り壊せそうな剛力に、素早い動きができる身軽さ…………ありとあらゆる魔法を使うことが出来る知識に全てを射抜く様な百発百中の腕
彼は欲しいと願った、ただひたすらに欲しいと願った
それが遅れる形ですべて揃うのも、後の話




