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東方月陽向  作者: 趙餡
150/183

???

レミリア「なるほど……………珍しい気の変わりようじゃないか?本来この幻想郷のルールにおいて外からの人間は基本的に何をしても構わない、という話だったはずだが?」


紫「今貴方が言った通りよ、ただ私の気が変わっただけ……………それに、偶には人間を側に置くのも悪くないのよ

この子結構料理上手だからね……………まぁ貴方の従者ほどではないのだけれど」


少年は焦っていた

何に対して焦っていたのかどうして焦っているのかはともかく、とりあえず焦っていたのだ

数刻前、彼らは真っ赤な屋敷に入った

門番もいたが直接屋敷の中にスキマで入り込んだのだ

恐らく彼にとってはそれが不法侵入のそれと被っているから焦っているのだろうと自分を無理やり納得させていた


レミリア「料理ねぇ…………咲夜」


咲夜「お呼びでしょうか、お嬢様」


目の前の自分より年下だと思っていた少女は人間ではなく吸血鬼、その彼女が指を鳴らすと突然彼女の横にメイド服の女性が現れる


レミリア「彼と料理勝負をしてみてはどう?

貴方に勝てないと思うけれどどんな料理か食べてみたいのよ、丁度いいからこのスキマ妖怪にも作ってやりなさい」


咲夜「分かりました…………じゃあ、行きましょう」


陽「あ、あぁ……………」


辺り一面には血のように紅い床、壁、ドア………この館の殆どが紅の色で染まっている

紅じゃないのは一部の家具や住んでいる人物くらいである

彼は咲夜に案内されて調理している場へと向かう


咲夜「ここよ、限度はあるけれど基本的に具材は何を使ってもいいわ

あとここでは河童たちのものを一部使わせてもらっているからあのスキマ妖怪の家とは勝手が違うかもしれないけれどそこは慣れよ

どうしても使い方が分からなかったら言ってちょうだい」


彼はキッチンへと視線を向ける

彼にはいまいち河童の発明品というものはよく分からないが目の前にあるのは所謂ガスボンベ式のコンロである

しかし彼が知っているものとは細部が異なるがガスは一応使えるようなので寧ろ八雲家のより世代的に自分と一緒なので使いやすい、具材は見てから使うのを決めるがまぁなんとかなるだろうと彼は考えていた






数十分後~


レミリア「咲夜のは………ステーキね

料理対決だと言うのに結構本気出したじゃない」


咲夜「作りなれてますので…………それに、料理で負けるわけにもいきません」


紫「陽のは……………これってまさか…………」


陽「……………親子丼、卵とか、ネギとか使わせてもらった

ご飯も」


特に得意なジャンルがあるというわけでもないので目に付いたものを手当り次第に使った、というのは喋らないでおいた

それを言ってしまうと咲夜から『舐めてかかっているのか?』と怒られると思ったからである


紫「…………うん、このステーキ美味しいわね」


親子丼に驚きつつも咲夜の作ったステーキを食べている

レミリアも渋々箸を伸ばして親子丼を食べ始める

その時に陽は内心箸も使えるんだなと思っていたのだがこれもまた心にしまう


レミリア「…………あら、咲夜に及ばないまでも意外と美味しいわね

外の世界の料理って言うのも偶にはいいかもしれないわね」


咲夜「お嬢様、それならば私が作り方を教わってお作りしますよ?」


陽は嫌な予感がしていた、嫌な予感というよりは予想だった

もしかして今の自分の立ち位置はなかなか詰んでいるものなのではないかと

ここでもし咲夜に料理を教わることになった場合この館にしばらく住まわないといけないのではないかと

そして仮にそれが成立しなかったとしてもレミリアが食べたいということはここで暮らして食べたい時は俺に調理を任せる、となるのではないかと彼は頭の中で思い描いていた


紫「残念だけれど彼は渡さないわよ

そちらには料理上手の従者がいるのだから我慢して欲しいわね」


レミリア「あら、残念ね

けれどそちらには自分の式がいるでしょうに…………確か狐の方は料理作れたはずじゃなかったかしら?」


紫「藍のことかしら?確かに彼女は料理は出来るけれど彼女ってば外の世界の本を読んでなんとか料理ができているようなものよ

私が食べたいのは外の世界の料理なのに藍の作るのは今の外の世界の年代換算で大体300~400年くらいの代物ね、美味しいのだけれど味が薄いのが多いもの

それでも私の体調を気遣った料理だから嬉しいのだけれど」


レミリア「あら、文句かと思っていたらいつの間にか惚気話を聞かされていたわ」


2人は笑顔で話していた、陽はその二人の笑顔は本当に楽しそうだと感じていたが同時に上に立つ者としての威厳をも何故か感じ取っていた


陽「………えっと」


結局俺はどうすればいいのかと思って声をかける

それに気づいたふたりが話が少しそれていたことを思い出したようにまた話を路線に戻す


紫「ともかく、私は彼を譲る気は無いわ

たまに料理を作ってくれ、という話なら受けなくもないけれど…………泊まりは駄目よ、彼まともに外を出歩けるほど強くないのだから」


レミリア「あら残念……………え?今貴方なんて言ったの?私の耳がおかしくなっていないなら外を出歩けるほど強くない、って聞こえたのだけれど」


レミリアは驚いていた

いや、おそらく幻想郷において彼女を知っている者は大抵『八雲紫が何の力もない人間を式神にすらせずに側に置いている』と思うことだろう

何の気の迷いなのか、錯乱しているのでないか

そう思うものがほとんどなのだろうが彼女は至って普通であり、正常であり、正気を保っていた

その上でこんなことをしているのである


紫「えぇ、貴方が聞いたとおりよ

私はこの子を『飼っている』のではなくて『置いている』のだから」


レミリア「……………ずいぶんと変わった、というには時間が経ってなさすぎるわ

別に貴方が外から来た人間は全員食べているなんて思うつもりは無いけれど…………その彼には一体どんな魅力があるのかしら?」


レミリアは気になった、あの八雲紫が全く強くない人間を置いているということは強さ以外の何かがあるのだと


紫「そうね………これくらいなら教えてもいいかも

彼は…………能力を2つ、それも満月や新月じゃないと、と言った類じゃなくて本当に彼は二つの能力を使えるのよ」


レミリア「へぇ…………確かにそれは珍しいわね

そんな人間もいるのね」


二つ能力、と言われて彼女がまず最初に思い浮かべたのが人里の上白沢慧音である

しかし彼女は二つ能力を持っている、というよりは『妖怪に変化した時の能力』と『人間でいる時の能力』の二つの能力と言っていいのかどうかわからない能力だった

それに比べて彼の、陽の能力は完全なデュアルスキル、能力の二つ持ちであったわけだ


レミリア「…………面白いわね、あなた」


陽「ど、どうも……………」


褒められて悪い気はしないがそんなことより早くここから帰って八雲邸に戻りたい、と切実に思っている陽であった


レミリア「…………そうだ、どうせなら紅魔館を見て回っても構わないわよ

大きな図書館もあるしちゃんと門番もいるから挨拶もしてらっしゃい……………咲夜」


咲夜「はい、みなさんに話を通してまいります」


随分と信頼されているんだな、と密かに陽は思った

何も言っていないが主人のやりたいことを即座に理解する完璧な主従関係とはこのことなのだろうと






大図書館~


パチュリー「いきなり、それもこんなところに来るなんて随分と物好きな人間がいるのね

けれどここにあるのは基本的に魔道書だから貴方に読めないと思うわ」


陽「…………確かに」


紅魔館に存在する大図書館、そこに存在する本はまず一日で数え切れるか?と聞かれれば普通の人間ならNOと答えるだろう

その上魔道書に書いている文字がまず一般人にはほとんど読めないように工夫されているものであり陽が読めるようなことは無い


パチュリー「………こあ、ここにある本で普通の人間にでも読めるようなものがここに存在していたかしら?」


パチュリー・ノーレッジ

彼女は名の通り大図書館に住み着いてると言っても過言ではないくらい知識を蓄えている

しかし彼女は嘆息の為に魔法発動するのに少し手間取ることもあるためその隙をつかれてしまう場合もある


小悪魔「ええっと…………確か向こうの方に数冊だけあったような気がします」


パチュリー「ならそれを持ってきてちょうだい、せっかくここに来て本が読めない、なんて言うのは笑い話にもならないわ」


小悪魔「それもそうですね…………では持ってきますので少々待っていてください」


陽「…………はい」


小悪魔、パチュリーの使い魔だが名前はないので小悪魔かこあという愛称で呼ばれている

パチュリーより本の存在を多く熟知しているが本人も魔道書は読めないため間違えてパチュリーに読ませてしまうこともある


陽「…………にしても本当にでかいな

この本棚の上の方までどうやって取りに行くんだ…………」


パチュリー「あら、簡単なことじゃない

空中を自由自在に飛び回れるようになったらあそこにある本は楽に取りに行けるわ」


パチュリーは本を読んでいるついでに答える

これがパチュリー・ノーレッジのスタイルなのだが如何せん傍から見たら結構失礼な態度をとっているようにも受け取れる…………が、陽はそこまで気にせずに適当に受け流す

『俺がここに来ることは滅綿にないし問題ない』と考えているためである


小悪魔「ありましたよー、この中から好きなの選んでくださいね」


小悪魔が本を持ってきた

その持ってきた本を陽は確認するが確かに数冊という少なさだった

それに全部ジャンルがバラバラである

童謡の絵本もあれば外の世界の有名な著人が書いた小説もあった

だがどれも陽にとってはそこまで深く読めるものではなかった

童謡は短い上に読んだことのある話だし小説の方は彼にとっては難しい本の1冊だからだ


陽「…………案外、読めるのが少なくて妙に納得できたというかなんというか……………」


小悪魔「え、あ、あれ?外の世界の本だと思うんですけれど違うんですか……………?」


小悪魔が不安そうな顔をしたのでそれに悪気を感じた彼はとりあえず適当な本を取って読み始める

それに安心し、小悪魔はそのままその場から離れる


陽「……………」


『こういう本でも読もうと思えば読めるんだな』と彼はそう思ったが口にすることは無かった

彼にとっては紅魔館に来ることは彼自身の用事ではなく紫がここに引っ張って来たのである

いくらここを自由に回れると言っても彼はこの館からは自由なことが出来ない

今ですら図書館に来た瞬間に本を読むことを強制されたように彼は感じたのだ


陽「……………本、ありがとう

ここに置いておくよ、元々置いてた場所もわかんないし」


小悪魔「え、あ、はい……………」


そうして彼は図書館から出る、広いのに狭っ苦しいように思えてしまった彼にしてみれば図書館から出るのはその窮屈に感じる部屋を脱することが出来たという訳だ

これ以降彼はここを歩き回るだけで時間を浪費させた

彼にとってはここは面白くなかったのだ

我侭なように思えてくるが今の彼には『日常』というものは何故か酷く退屈なものに感じてしまっていたからだ

その退屈から彼は逃げた、これ以上この場所を悪くしたくなかったから

その日、彼はすぐに八雲邸に戻った

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