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S1

『…好きだよ』

ずっと言いたかった言葉がある。

でも、ずっと言えなかった言葉がある。

『好き』

ただ、2文字だけどさ。その言葉が言えなかった臆病だったんだ。誰かと関わることに…

たぶんあの頃からだったんだ

『ねえ、ユウト君』

『何?』

『ユウト君って好きな人いるの』

『いないよ。』

嘘をついた。本当はあなたが好きだった。

ずっと前から…

『そっか…私はいるよ』『そうなんだ。』

僕は必死で動揺を隠す。胸が張り裂けそうだ。

彼女が誰かのものになってしまう。そんなのは嫌だ。

『誰か聞かないの?』

『聞かないよ。そういうことあんまり、聞くべきじゃないだろ』

『ユウトになら、教えてもいいんだけどなぁ』

僕と彼女は昔からの幼なじみだ。家も近いからよく遊んでた。高校に入ってからは、昔みたいに遊ばなくなったけど、それでも学校帰りによく話す『協力しくれるよね』

『…うん。』

嘘だ、本当は協力なんかしたくない。彼女の隣にいるのは自分でありたい。でも、そんなことを言ったら、彼女は困るだろう。そう考えると僕の選択肢は一つしかなかった『私ね、ワタル君が好きなんだ。』

ワタルは彼女と同じ部活に入っていて、俺の友達である。ワタルはすごい優しく友達思いだ。ワタルなら彼女を幸せにできる。わたるなら…

『でもね、フられちゃったんだ』

『え』

どういうことだ。協力してくれって確かに彼女はそう言った。ならどうして告白する前に僕に協力してくれって言わなかったんだ。『ユウト協力してくれるって言ったよね。』

『うん』

彼女の言ってることが、わからない。今更僕に何ができるって言うんだろう。

『ユウトさ…好きな人いないんでしょ。なら私と付き合ってよ。』

嘘だろ…彼女の方から付き合おうって言ってる。それは僕がずっと望んでいたことだ。『無理だよ』

僕は自分の心に嘘をついた。

『どうして、好きな人いないんでしょ。ならいいじゃん』

『無理…俺じゃワタルの代わりにはなれないよ』 『代わりになんか、ならなくていいよ。』

心が揺らいだ。『いいよ。付き合おう』そう言いたかった。でも…言えなかった。

『無理だよ。俺は他にやりたいことがあるんだ。お前なんかに、かまってられないよ』

『そっか…わかった。』彼女は笑顔でそう言った『ごめん』

『私のほうこそ変なこと言ってごめんね。これからも友達でいてくれよね』

『…うん』

『…ありがとう。私もうそろそろ帰るね』

彼女はそう言って帰って言った。

…臆病だった彼女の想いを受け止めるだけの力が僕にはなかった。だってそうだろ?

彼女は本当は違う人が好きなんだ。それなのに僕がどうにかできるわけない。例えできてもそれは…彼女の望むことじゃないよ。

臆病だった…あの人に好きだと言えなかった。きっといつか言おう。そう思ってた。

でも…もう遅かった彼女にその言葉を言う機会は二度と訪れなかった

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