勝者になりぬれど
平成23年もあと少しで終わろうとしている深夜、私は一人パソコンと格闘していた。
事の発端は、父にはお気に入りのアニメがあるらしくそれを全話見たいということだった。見たいといってもパソコンで見るのは嫌だ。だからDVDに焼いてほしいと言われた。
ハードディスクに貯めこんだファイルを家庭のDVDで視聴するにはオーサリングという作業が必要である。そのためのソフトはたくさんあり無料のものも多い。根がケチだし、以前使っていたオーサリングソフトは今のパソコン環境には合っていない。
一つ無駄話をすると、以前は映像を見る拡張子はaviというものだったが今はmp4というのが主流である。そして私の持っているファイルの大半もmp4である。
私は早速外国のサイトにアクセスしてオーサリングソフトをダウンロードした。英語も少しはできるから別に不自由はしない・・・はずだった。
ダウンロードしてソフトをインストールする。映像を選んでオーサリングを開始する。なんだ簡単じゃないかと思ったらエラーが出る。かいつまんで言うと、
「おたくのパソコンには当方が使えない文字列があり、従いましてオーサリングはできません。かしこ」
という具合だ。何度か試してみるも上記の文が出てくるのである。しかしここで挫けるべからず。大体にして何かのソフトというのは、インターネットで検索すると使い方からエラーコードまで載せてくれている親切極まりない所があるものなのだ。早速何軒か足を運んでみると、なるほど日本語の文字列を使うとエラーが出るというのである。
さて、もう一度トライしてみると、
「お宅のパソコンには当方が書き込もうとしているところにすでに同じ文字列があります。従いましてその文字列のものは削除させていただきますがよろしいですか?よろしければ、『はい』を嫌なら『いいえ』を押してくださいませ」
ときたもんだ。
ためしに保存先を探してみると、当方のノートパソコンにはどうあがいても日本語が入る仕組みになっている。新しいフォルダを作って英字を入れてやっても言うことを聞かぬ輩だ。
えい、不愉快だ。というわけで、別のソフトを入れてみた。今度は入るファイルも多いし(ということは必要なDVDも必然的に減る)、いろいろな機能があって玄人好みだ。私のようなめんどくさがり屋にはあまり必要のない機能もあるが、それはそれで放っておけばよい。
説明書きを見ながら操作していくと、
「お宅のパソコンの不具合により作業を中断させていただきます。かしこ」
というエラーが出る。なにくそ、もう一度だ。
同じ作業を5回ほど繰り返したが結局途中で中断されてしまう。これはいったいどういうことか。私はいろいろ考えあぐねいてみたが、どうもこれはパソコンの相性と、外付けDVDによるものではないかということに気が付いた。
この時点で夜中の2時30分を廻っていた。本来なら大阪に住む彼女といちゃついている時間帯である。何の因果で夜なべしてアニメの編集作業をしなくてはならぬのか。
愚痴を言っても始まらぬから、とりあえず使えそうなパソコンを思い浮かべてみた。私のメイン以外のパソコンとなると、1.ヒューレッドパッカードのノートPC、2.自作のデスクットプ、3.親父のデスクトップ、4.おふくろのノートパソコンである。このうち自分のパソコンとお袋のパソコンは全く同一のものなので同じ症状が出る可能性がある。HPのパソコンはDVD部分が死んでいる。となると親父のパソコンか自分のデスクトップだが、親父には変な潔癖症があって自分が許したソフト以外のものが入ると気分が悪くなるという癖がある。この男に頼むとろくなことはないから、消去法で私のデスクトップに必要なソフトをUSB経由で送った。
ところがハードディスクの中身がいっぱいだというエラーが出たので、いらないモノは容赦なく捨てる羽目になった。もともとステラレネーゼ(ものを捨てられない人を昨今の若者はこう呼ぶらしい)の私にはつらい作業となった。空いている外付けのハードディスクに移動したりして、これで1時間以上時間を食った。
さて、いろいろの厄介ごとがすべて終わって作業に入ってみると、
「やっぱりお宅のパソコンでは使えません」
というエラーが出る。腹が立ったから、またインターネットで検索をかけて違うソフトを入れてみた。そうして四苦八苦した結果、この小文を書いている現在なんとかオーサリングをしてくれているようである。
してくれていると言ったって私にはいいことなどちっともない。親父は子の心知らずもがなの男なのだ。この男のために私はいろいろと厄介な目にあった。しかし、血という鎖でつながった私の思考回路はこの男の「ありがとう」という無謀な褒美を求めている。
無謀な褒美はきっと来ないだろう。それでも私はマリファナ中毒の患者のようにただひたすらに感謝という快楽を求めて夜なべをするのであった。
<了>




