04.使命――桜色紅葉
この要塞でれいの美声は更に透き通るように響き渡っていた。
「今そこで銃火器の手入れをしている二人が六条ゆりと藤野七弥よ」
れいがあごで部屋の左端にある木製テーブルの方をクイクイと示すと享一もそれにあわせて視線を向ける。
そこには黒のセーラー服に身を包んだ女子と詰襟を着崩さず着ている青年が小型のベレッタM92をフィールドストリップしていたり、大型の狙撃銃を磨きながら享一にやはりどこか色を失った目を向けていた。
そして二人は少しだけおじぎのつもりだろうか、首を縦に振り、また銃へと視線を落としてそれらの調整を再開しだす。
享一はそのまま二人から視線を離せずにいると、
「まぁあの二人は集中し出すといつもあぁなるから。喋る時は喋るけどさ。ゆりなんかは今と違っていつも寝てるんだ、フフッ。でも二人とも仕事を頼めばきちんとこなしてくれるし、とても重宝してる。」
とれいが説明を付け足す。
「ふーん」
その言葉を享一はそれとなく聞いていると、
「で、さっきから私のそばにいるのが火村源三。なんでもこなせる私の右腕だ」
享一が先程から気になって仕方なかった人物がやっと紹介された。
だがその自信に満ちたれいの言い方からは二人の間にある並々ならぬ信頼というものが感じ取られた。
「よろしくな」
と源三は右腕を差し出してきたのでそれに応えて享一も同じ右腕で応えた。
「であと他には……」
とれいが言った時彼女のポケットからピッピッと無線の着信を知らせる電子音がこの要塞空間に鳴り響いた。
彼女は急いで無線を取り出し焦った声で応答する。
「こちら、れい!!……」
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なんとか消防や警察の到着前に四季は五郎を燃え盛る車からひきづりだし、証拠となるものが全て燃え尽きてるのを確認してから茂みの中で死体処理用に携帯している特別製のポリ袋の中へなんとかその焼け焦げた体を押し込んだ。
「五郎くん……ごめんね…」
そう呟いた四季は立ち止まりそうになった時いつも明るく話を聞いてくれた五郎を思い出していた。
だが目の前にある彼の無惨な姿と彼を処理しなければならない自分の使命から胸が苦しくなり、彼女の瞼から溢れ出る涙は絶えず頬を濡らしていた。
事前に皆とチェックしておいたこの山で警察の管轄外となっている"安全地帯"までの草が覆い茂る道を数キロに渡り、歯を食いしばり袋をひきづりつつ運ぶ四季。
どこまで行っても続く残酷なまでに広がる緑やたかってくる様々な虫たちは彼女の心を今にも折ろうとしていた。
そうして何時間経ったかわからないが、ようやく目的地に辿りついた四季は体中ボロボロになり、力尽きて膝から崩れ落ちる。
『もう…限界だよ……でも五郎くんを埋めるまで…二村くんを助けに行くまで……最後まで私がやらなきゃ!』
そう思い立ち上がろうとする四季は顔を上げる。
すると視線の先にはそっと手を差し延べる男の姿があった。
「あっ……」
「一人でよく頑張ったね」
そこにはその眼鏡のレンズ越しから覗く瞳が優しく微笑む青年、八戸雅が立っていた。
皆さんの掲載ペースを崩してしまいましたが一応頑張って書いてみました。
何時間もずっとひたすら掲載に身を捧げたんで少しでも皆の雰囲気に馴染めてれば幸いです。
次のポペさんにご期待!!




