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24.オワリとハジマリ――ポペ

 れいは、スパイダー、近江義光らとの激戦により仲間の多くを亡くした。

 生き残ったのはれい、享一、源三、四季だけだ。死んでしまった五郎、千歳、万由、二村、八戸、六条、七弥の死体は回収されることなく、あの場所に置いてきた。恐らくは、もうあの場所にはなく、どこかに捨てられただろう…。


 生き残ったれいたちは、享一の昔の知り合いの隠れ家に行き、四人一緒にいると見つかる可能性が高くなるとれいが言い、享一と四季は各々の思う場所へ行き、源三はれいについて行くことになった。




 いま、れいと源三はあるビルの屋上に来ている。

「3、2、1…」


ドガァァァァァン!!!


 爆音と共に、れいたちのいるビルから数メートル先のビルが崩壊した。

「これで残るはあと一つか……」

「そうですね…。あと一つです」

「源三…、私についてこなくてもいいんだぞ?」

「俺の居場所は貴方の隣しかありませんから、そんなことを言わないでください……」

「そうか…。すまない、つまらないことを聞いて」

「いえ」

「よし、行くぞ!」

 そう言ってれいたちは崩れたビルに背を向け歩き始めた。


 れいたちが、わざとビルを崩壊させると言う、極めて目立つことをしているのは、相手に向けてのメッセージを込めているからだ。いつかは貴様のとこへ行くぞ、と言うメッセージだ。



 享一はれいたちと別れてからずっと一人の男を追っていた。その男の居場所を突き止めるために男と関係している者を片っ端から問い詰めて、殺している。結果として、それはれいたちと同じ様なことをしていた。

 いま、享一はクナイを片手に、ツンツン髪で焼けた肌でアロハシャツを着ている男に問い詰めていた。

「お前は運び屋ベアーの頭だな?」

 男は享一の後ろで首から鮮血を流しながら倒れている3人の男たちを見た。

 まだ高校生であろう少年が三人も殺した後だと言うのに、冷静な口調で話しかけてくることに、男は少なからず嫌な予感がしていた。しかし、ポーカーフェイスを保ったまま男は口を開けた。

「…そうだが?」

「やはり逃げ延びていたか…」

「貴様、殺し屋れいの仲間か!?」

「そんなことはどうでもいいだろう。お前は俺の質問に答えろ。近江柳玄はどこにいる?」

「それを知ってどうするきだ……?」

「お前には関係ない。お前はただ答えればいい」

「誰が答えるか! 調子に乗るなよ若造!!」

 言い終わると同時に男は机に隠していた銃を取り出し、享一に向ける……はずだった。

 享一は男が言い終わる直前に、手に持っていたクナイを男の頭に突き刺したのだ。

「ちっ! また無駄足だったか。……?」

 享一は男のものと思われるパソコンに目を向けた。そこには、「四日後の日が沈むとき紅丘病院、204号室にて RO」と書かれていた。

「RO? ……! 近江柳玄か!! やっと、やっと見つけたぞ……!!」

 享一の目に光が宿った。鈍く、黒い光が。




 四季はれいたちと離れてから享一と同じように近江一家と関係のある者たちを一人ずつ潰し、柳玄の居場所を捜していた。


 四季の手には銃が握られている。その銃の銃口は白髪混じりの丸眼鏡をかけた初老の男に向けられていた。

「……なるほど、私を追っていたのは貴方でしたか。いまさら私になんの用があるのでしょうか?」

「情報屋ファントム、貴方にお聞きしたいことがあります」

「なんでしょうか?」

 悪魔で冷静に話を進める二人。しかし、二人が作りあげている雰囲気は決して穏やかではなかった。

 四季が銃を持っている時点で穏やかではないが……。

「近江柳玄の居場所を教えてください」

「……それは無理な相談ですな」

「そうですか……。ならば、死んでください」

 そう言い四季は銃の引き金を引いた。

 四季は男のパソコンで享一が見たのと同じ文面を見つけ、享一と同じ考えに到った。




「今日ですね」

「あぁ、恐らく一之瀬君と四季も来るだろうな」

「えぇ、逃がしてしまった社長たちは恐らく二人が始末したんでしょね」

 もうすぐ日が暮れるころ、れいと源三は、紅丘病院の前に来ていた。

「本当に此処にあの男はいるのでしょうか?」

「……いてくれなければ困る。行くぞ」

 れいと源三は病院に足を踏み入れた。


 病院の二階にある204号室、今田和明と書かれた表札が掛かっている。

「ここですね…」

 れいと源三は204号室から出ているただならぬ気配を感じ、額に薄っすら汗を浮かべていた。そして、それと同時にこの部屋に捜していた男がいることを確信した。

「……入るぞ。用意しろ」 そう言って、源三がコルトガバメントの砂漠迷彩モデル、雪上迷彩モデルを両手に持つのを確かめてからドアを開けた。

「近江柳玄だな。貴様の命を貰いに来た」

 れいの目の前には腕に点滴と、もう一つなにかのチューブが付けられている老人の顔を見ると同時に言い放った。源三はれいが喋りだすと同時に銃口を老人に向けていた。

「まぁ、待て。お前たちが私の旧友を殺し回てる者だな?」

「……それがどうした?」「……いやなに、死んで向こうで会ったときに奴らに教えてやろうと思ってな」「遺言はそれだけか?」

「まぁ待て。私は老い先短い、見逃してはくれないか?」

「それは無理だな」

 そう答えたのはれいでも源三でもなかった。声のしたドアの方に視線を向けると享一いた。四季も一緒に。

「……なぜ此処に来た?」 れいはわざわざ来るとわかっていたのに二人に質問した。

「ふん、どこにいようと俺の勝手だろう」

「お嬢様、私にやらせてください」

 そう言い、四季がナイフを取り出した。

「いや駄目だ」

 れいが四季からナイフを取り上げ、柳玄の首にあてた。

 柳玄の首から一筋の血が流れる。

「れい、止めろ。お前の武器は俺たちだろ」

「ふふ、やはり君は優しいな一之瀬君」

 そう言ってれいは柳玄の首を切った。

「…………………」

 沈黙が数分続いた。れいが自らの手で人を殺した。それは本来あってはならないことだ。少なくともれいの武器ある源三、享一、四季はそう思っているはずだ。

「お嬢様、大丈夫ですか?」

 ゆっくり、はっきりとした口調で四季が口にした言葉。

「あぁ、ダイジョブだ。さぁ、帰ろう」

 いつもと変わらない口調でれいが皆に言った。しかし、その場にいた全員がれいが今にも泣き出しそうだと感じた。

「はい」

「……」

「わかりました」

 各々がれいの問いに自分なりに答えた。




 場所は変わって、れいと源三が今使っている隠れ家にれいたちは来ている。

「さて、これで死んだ者の弔い合戦は終わりだ。これからお前たちはどうする?」

「俺はこれからもれいさんについて行きますよ」

 源三はなんのためらいもなく言い放った。

「俺は…、すまないがお前たちと一緒には……」

「私も一人でどこかに行こうと思います。すいません」

「いや、それがいいと私も思う。源三お前もどっかに行け。もう一人でダイジョブだろう」

「……れい、言ったろ? 俺の居場所はもうお前の隣しかないって……」

「……そうか。好きにするがいい」

「……はい」

「二人とも、もうこれで会うことはないだろうが達者でな」

「あぁ」

「ありがとうございます」

 そう言い享一と四季はれいたちがいる部屋を後にした。

「さて源三、どこに行くとするかな?」

「どこでもいいですよ。貴方の行くところに俺はついていきますよ」

「そうか」




 死後の世界があったとして、

 私はぜったい天国にいけない。

 そう言って、

 初めて人を殺した殺し屋は笑ったんだ。



いままで読んでくれでありかとうありがとう!!


多分、新しい小説を書くと思うので読んでくれると嬉しいです。

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