21.絶息――消炭灰介
――どうしてこうなった――
れいは両手を胸の前できつく結び、身を潜め震えていた。
みんな死んだ。
そう、みんなだ。
二村も吾郎も六条も七弥も千歳も万由も。
みんなれいの目の前で死んだ。
彼女を護るために……
「――!」
途切れることの無い銃声、硝煙の匂い、飛び散った肉片、鮮血、たった数秒で瞳に映る世界は紅く染めあげられた。
恐かった。
いや、恐い。
自らの命が失われることに対する恐怖より、自らのために散っていった恐怖が勝る。
「――い!」
恐い、寒い、どうしてこうなった、みんな死んだ死死死死死死死こわいさむいやだ殺ころす殺されるやだいやだだめだ死にたくない私のせいだ違うちがういやだムリいやだ死死し死死死死シ死死死――
「れい!」
名を呼ぶ声でれいは世界に引き戻される。
顔を上げれば、しゃがみ姿勢で壁にもたれ|狙撃銃(M700)を構えた享一。彼は壁から顔を出し、周囲を警戒しつつ、片手を催促するよう突き出していた。
「バックからマガジンとってくれ」
「あ……」
れいは指示通り、壁に立てかけられた享一のバックパックからマガジンを出し、享一の手のひらに乗せる。 壁際に戻りマガジンを装填し終えた享一はくるりと半回転し、壁から躍り出る。膝立ち姿勢、銃を構え引き金を引き絞る。五発必中。放たれた全ての弾丸は全て人間の急所を打ち抜き五人の人間を絶命させる。
「れい! 次!」
れいは再びバックパック内を漁るもマガジンらしきものは見当たらない。
「もう弾がない」
享一は舌打ちを一つ。
「れい、コレ」
M700をれい渡す。
「でも、私は!」
「もってるだけでいい、誰も撃てとは言ってない」
享一は腰から拳銃を引き抜き、今度は壁から手首から先だけを露出し、16発。全ての弾丸を発射する。
拳銃では敵との距離がありすぎて狙っても当てることは不可能だ。無理に危険に身をさらすより威嚇に留める。
「走るぞ!」
マガジンを入れ替えスライドを引き初弾を薬室に装填。震えるれいの手をとり、バックパックを担いで敵とは逆方向に走り出す。
逃げの一手。
狙撃銃の弾薬が尽きた今。逃げたところで希望が見えるわけではないが一箇所に留まるよりましだと享一は判断した。
しかし、精神的に不安定なれいの息はすぐあがってしまう。
「……瀬くん」
繋いだ手を引かれ、享一も立ち止まる。
繋いだままの手は膝につき、れいは呼吸を整えようと激しく息を吸う。少し落ち着くと、享一に向かって顔を上げた。
「一之瀬くん……」
れいは弱々しく呼びかける。続く言葉は容易に想像ができた。
「泣くな!」
だから享一は言葉を遮るように、両手でれいの頬を包む。れいは自分が泣いていることにさえ気づかなかったのか驚いたように目を見開く。
そんな目を見つめ、享一は、
「知り合ってそんなに経ったわけじゃないけど、れいは不適に笑ってるのが一番似合ってると思う」
れいが普段そうするように不適に笑って見せる。
「ああ」
れいもぎこちなく笑い返す。しかし貫禄は十二分。
享一は両の親指でれいの涙を拭い、手を離すと、再び手をとり走りだそうとした。
「――ッ」
気配に気づいたのはれいのほうが早い、目で促されるまま振り返り、享一はベレッタを構える。
同時に、享一の額にも銃口が宛がわれる。
享一の視界の先にはコルトガバメント雪上迷彩モデル
「源三」
いつもの表情に戻ったれいは名を呼ぶ。
「生きてたのか、れい、享一」
源三は疲れた笑顔を見せ、安堵の溜息をつく。
れいの視線は源三の肩を借りて立っている人物に移る。
「四季……」
四季はぐったりとうなだれて、源三の肩から滑り落ちるとその場にしゃがみこんでしまう。
「お姉様……、雅さんが、雅さんが……」
四季の言葉にれいは俯く。しかし、先ほどのように涙を流したりはしない。
れいはしゃがみこみ四季と目線を合わせ、堅く握られた四季の拳を両手で包み優しく広げる。四季の冷たい手は素直に開く。その手をとり、立ち上がらせると、れいは大胆不敵に笑みを浮かべる。
「私たちは生きて帰る」
そして、残った三人の顔を順番に見て、れいは強く言い放った。
「必ず!」
(*゜Д゜)・:∴ブハッ
どうも、お久ぶりです。消炭灰介です。
ついに始まってしまいました終わりの始まり。
なんなんだ、この打ち切り最終回みたいなものは!
と思った方、いらっしゃると思います。
いや、まあ、その、正直に暴露する制作秘話第一回戦とつきましては厳密に言えば厳正なる会議の結果として打ち切りといえなくなくなくなくなくもない感じでして……。
言葉を濁すのをやめます。
ぶっちゃけ、打ち切りです。
SCTメンバーの皆さんこれは言っちゃってよかった情報ですかね? なんて訊きません。言っちゃいましたから。
とりあえず、打ち合わせどおり消炭の仕事は終わりました。詳細は業務連絡のほうに載せておきますので、後頼みます。「お、俺に構わず先に行け!」です。
今までbulletsを読んでくださったみなさん本当にありがとうございます。
この作品は私が始めた小さな作品でしたがメンバーの皆さんに愛され大きく膨らんでいきました。
自分が放った人物たちが、世界が広がっていくさまは見ててとても楽しく本当に嬉しい限りです。
今回は風船が膨らみすぎて針で割る形となってしまいましたが、
一期一会、これをバネに『次』とかができたらななんて思ってます。
そのときは、またよろしくお願いします。
それでは! またいつかノシ
あ、最後にこれだけ言わせてください。
「俺たちの戦いは終わらねぇぜ!」
↑打ち切り最終回風