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16.あの約束――桜色紅葉

「……ん……げ…」


誰かが俺の近くで何かを言っている。



「……げ…ぞう…」


あぁ…この声は……。




どこまでも深い湖に沈んでいくかのようにスーッとまどろみの世界へと落ちていった。



------------------



今日の授業は朝からの体調不良も災いしてか、やたら長く感じられ、帰り道はどっと押し寄せる疲労を体中に背負うように帰宅していた。


ふと上を見上げるとさっきまでの澄み渡った空はいつの間にか暗く澱んだ雨雲に覆われている。

雨を恐れて家路へ向かう足が自然と早足になっていたせいか、気がつくと「火村」と表札が掲げられている見慣れた自分の家の前に着いていた。



(ガチャ)


玄関の戸を開けるとまず異変に気付いた。


真っ先に目に入るのは靴や服が散乱した室内。

床は誰かが土足で上がりこんだかのように砂にまみれていた。


「…か…母さん?」


呼びかけてみても自分の息遣いまでが家に響き渡りそうなほど、恐ろしい沈黙が返ってくる。


その刹那、自分の心臓の鼓動がドクンと音を立てるかのように跳ね上がった。それから全身に嫌な悪寒が走り体がガタガタ震え、込み上げる吐き気を両手で抑えこむ。



玄関から進もうとしない自分の足を数回叩きそのまま恐る恐る廊下の奥まで進んでみると、やはりそこはいつもの部屋がまさに地獄と化していた。



壁やテーブルなど白を基調とした物が多いリビングルームは絵の具の赤で塗りたくったように血が付着していて、部屋の隅にあるすずらんの花にまでそれは掛かっていた。


そしてこの部屋で一番目立つのはやはり自分の眼下に転がっている父と母の姿だ。2人は苦痛に歪む顔をしつつ体を銃弾で蜂の巣にされていて部屋中の血痕は彼らによるものであるのは疑いようもない。


映画のようなあまりにも現実離れした目の前の現実に俺はその場でへたり込んで、ずっと耐えていた喉につっかえているものをすべて吐き出す。口元を袖で拭ってから、


「なっ……なんだよ……なんでなんだよぉぉぉぉぉ!!!」


無意識に悲痛の叫びを発した自分に驚くこともなく、とにかく頭が真っ白だけどパンクしそうで、出るはずの涙は現実味がないせいかちっとも瞼には浮かばなかった。



そんな時不意に玄関を開ける物音がした。


それに反応するのも遅れ警戒する前にリビングへと入る扉が開かれる。



(バタン)



「チッ遅かったな。四季、一応2階も見てこい」


「はい、お嬢様」


銃を持った四季という名らしい少女は指令を受けてから俺には目も暮れず廊下に戻り2階へ続く階段をスタスタと登っていく。

それから指令を出していたもう一人、セーラー服にトレンチコートという変わった容姿の少女と目が合う。


誰だかわからない奴がいきなり家に入ってきたなんて当然の如く警戒を強くする。


「君ここの息子?」


「………」


当然の質問だったので俺が訂正しないのを肯定と受け取ったのであろう"ふーん"とでも言うように何回か首を縦に振ってから、


「これはな今私達が戦っている組織の仕業。多分なんらかの形でご両親は関わってしまったのだろう…。私達ももう少し早く突き止めて追っていれば……クソッ」


死体を見ながら彼女は淡々としていたが最後は後悔も滲ませた口調で呟いた。


少しの沈黙が訪れる。



それを意外にも破ったのは俺だった。


「なぁ…戦うって、一体あんた達は何と戦ってるんだ…」


なんでだろう。お前ら誰なんだとか両親を殺した組織はなんなのかとかそんなことを頭で考えていたのに真っ先に口に出たのはこれだったのだ。



それを聞いた彼女はその虚ろな(まなこ)を俺の目へと向けてから少し俯き口を開いた。


「戦うのは勿論敵だけど……もっと…大切ななにかのためだな。そのために私達は引き金を引き続けるしかないんだ。この世界に」


彼女の見た目はごく普通の少女であるが故の儚さもあるが、その反面表情には強さが満ちていて凛々しい顔をしていた。


それを見て俺は



"あぁ、美しい"



ただそう思った。




「2階見て来ましたが何もありませんでした」


四季という少女が戻ってきて彼女に報告する。


「そうか、ひとまず…戻ろう。君じゃあな」


彼女がそう言って二人は俺に背を向け歩き出す。




「……待てよ!」


不覚にも離れていく彼女達に声を掛けてしまう。


?を浮かべながら振り返る二人に言葉を続ける。



「俺も……俺もお前達についていきたい!」


俺はなぜこんなこと思ったんだろうな。

無意識に大きくなった俺の声を聞いて彼女達の表情は驚きを隠せなかった。


「えっ君いきなりの入隊希望?」


四季が先程とは違ういかにも女の子な口調で話す。恐らくこれが"素"であろう。


俺がしっかり頷くと、もう一人の彼女が俺を厳しい表情で見つめる。


「なんで君は"ウチ"に入りたいと思ったの?」


その虚ろな目がまた俺の顔を射抜かんとばかりに見つめてくる。

だが俺も拳を握り決意を固めて彼女に対抗するように見つめ返し口を開いた。


「俺は両親を守れなかった。知らなかったとは言え、今は後悔でいっぱいだ。でも俺なんかただの高校生で無力なのは自覚してるけど決めたんだ。これから少しでも人を守れたらって…。だから俺はあんたにこの命捧げるつもりで守り抜いてみせるよ」


未だ眉間にしわを寄せていた彼女だったが突然口元を緩めて、


「フフッ君面白いね。でも守りたいって言ったって私達は戦うのが仕事。人を殺すのなんて当たり前だけど、君にその覚悟はある?」


もう迷いなんてない。


「俺はあんたを守るって言ったろ」


例え世界があんたを否定しても……


「君名前は?」


「火村源三」


「源三か、じゃついてこい」


「あぁ」


「私は御凪れい。れいでいい」


「わ~い新入りだね!私は四季!よろしくね」


この家の扉を出たら違う自分が始まる。不安も多いけど一度決めたらもう振り返らない。


外はさっきの曇天が嘘みたいに綺麗な月夜が広がっていた……。


--------------


「!!」


気がつくと席が沢山並んだ閉鎖的な空間が視線に広がり、耳にはゴーというジェット音がかすかに聞こえていた。右をふと見れば小さな窓から白い雲のようなものが覗いて見える。


あぁおういえば今飛行機の中か。


うっかり寝てしまったようだ。


「うわっ」


左を見ると享一が俺の顔を覗き込むように見ていたので声をあげてしまう。


「なんだよ」


「…さっき……うなされてたぞ」


どうやら心配してくれたらしい。


「あぁそうか?いやそうでもないよ」


?マークを浮かべる享一の更に左を見るとれいも目を閉じ寝息を立てていた。



それにしても今まで色々なことがあったが全てれいの存在が大きかったと思う。ただでさえも人を殺さないリーダーだかられいの身になにかあると自分を制御できない。それがこれからの反省点だな。


とにかく……


"いつもありがとな"


そう彼女に向け心の中で囁いた。




「当便はまもなく新千歳空港に到着いたします。シートベルトを着用になって……」

もう書くことはこれだけです。


本当に遅くなってゴメンなさい!!!!!!!!!!!!


急ぎ過ぎて文面変です。


本当にすみません。


源三過去簡単かな。なんて調子こいたらどんどん変になっていきました。矛盾点は……うん。クレームつけてください


最初源三を呼んだのはれいです。寝たらつまらねーよ、みたいな友達と外泊した時みたいな感覚だと思っていただければ幸いです。

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