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14.未成年の飲酒は法律で禁止されていますが何か?――(有)

「全員グラスは持ったかー?」

基地の中で一番広い部屋。あえてそこを食堂にしている。まあ食堂といってもコックがいなけりゃキッチンもない。皆で寄せ集めのものでワイワイやるだけだ。


「おい、聞いてるのか!?」

乱雑に並ぶ木製のテーブルとそこに群がる濁った眼を持つ若い男女達。その中心でれいはビールケースを積んだお立ち台の上で声を散らしていたが限界がきた。


「勝手に始めるからな!一之瀬君の歓迎会の意味を含めて………かんぱぁぁーーーい!!」

れいが右手のグラス(本人曰く葡萄ジュース)を高々に上げると、


「かんぱぁぁーーーい!!!!」

なんだかんだココだけはいつも揃う。

普段は暗いメンバーもこの時だけは良い顔をしている。れいは武器の顔を1つ1つ見渡してから葡萄ジュース(?)を一気飲みした。


「いいぞれーい!」

歓声が上がると同時にれいはお立ち台から落ちた。爆笑が巻き起こる中、源三がれいを起こしに行く。


「大丈夫かー?」

源三も葡萄ジュース(?)を飲んだ模様。千鳥足でれいのもとに駆けつけ、そして殴られた。


「おい、敬語はどーしたー!」

酔いのためか加減をしらないれいの右ストレートが源三のみぞおちを貫き、源三は泣いた。


「何でいっつもこーなんだよーーー!?」

源三はお腹を押さえたままどこかに走り去った。


「酔ったあの人には近づくなよ。」

「あぁ、そうする。」

享一は八戸や四季と同じテーブルで飲んでいた。


「きょーいちくぅーーん!」

完全に出来上がったれいが色んな人にぶつかりながらやって来た。


「ほらほら、渋ーく茶なんか飲んでないで一発芸やりなさいよ!」

皆の視線が一気に集まった。


「いや、そんなネタなんて……。」

「毎回の決まり事だ、頑張れ!」

そう言って八戸と四季は集団の中に消えた。

呆然とする享一。それを見下ろすれい。それをニヤニヤ見ている輩達。


「……これ。」

横から六条が何かを手渡してきた。


「………付け髭と付け眼鏡。」

享一は自分がもう逃れられないと悟った。


「(こうなりゃヤケだ!!)」

八戸が残して行った明らかに度数の高いジュース(?)を飲み干し、テーブルに飛び乗った。湧き上がる歓声。期待に満ちた目やこれから起こる笑いを堪え切れず口を押さえる顔が享一を凝視する。アイテムを装着し、息を大きく吸ってそして………。




1時間経ってもその騒ぎは収まらなかった。何人か隅で潰れた者やイビキを立てる者やスベって落ち込む者がいるが。


「そーいえば八戸と四季!」

れいの次の標的が決まった。


「お前ら最近仲良さそうだなぁ!」

れいの笑顔には何か黒いものが隠されていた。八戸は千歳のほうを見た。満開の笑みでピースしている。


「(屋上でのこと、知ってたのか!?)」

八戸の頬を嫌な汗が流れる。


「よし、ちゅーしろ!」

れいの笑顔はさらに輝きを増した。


「ちゅーう!ちゅーう!!」

コールがかかった。うろたえる八戸と真っ赤な顔で俯く四季。


「な、何でちゅーすか!?」

「いいじゃん、減るもんじゃないし!」

「だからってこれは……!」

「なんだお前、初めてか?」

「イヤッ、別にそういうんじゃ……。」

「よかったな四季、八戸のファーストキスを貰えるらしいぞ!」

「だから僕は……!!」


(バンッッッ!!)

シビレを切らしたのはまさかの四季だった。テーブルを両手で叩き立ち上がる。部屋は静寂に支配され皆が彼女を見つめた。


「さっきから聞いてりゃ何だ!雅、お前は私のこと好きなのか嫌いなのかどっちだ!?」

“酒は呑んでも呑まれるな”とはよく言ったものだ。いや、酒じゃない、あくまでもジュース(?)だ。


「だから好きとかそーいうんじゃ……。」

「嫌いじゃなきゃ私にちゅーしろ!!」

「………。」

数秒後、静寂は今日一番の歓喜に変わった。


「よし、八戸と四季はこれからは相部屋だな!元気な子供作れよ(笑)」

れいは満足したように”カッパ○びせん”を加えながらどこかに消えた。





光のない世界を死神が音も無く走る。その釜で木々はなぎ倒され道が出来ていく。


「そういえばあの時は危なかったわねぇ。」

独り言を言ってしまうのは人間の性だ。


「まさかトラックが爆発するなんてね。しかも四季ちゃんに見殺しにされるとこだったし。埋められる直前で意識が戻って八戸君に気づいてもらえたからいいものの……。」

吾郎はその時を思い出したら寒気が襲った。


「八戸君はちゃんと私のこと秘密にしてくれているかしら。」

彼に巻いてもらった包帯を見つめて微笑む。正直キモイ。


「っと、たしかここら辺のはずなのよぅ。」

オカマ口調は相変わらずだ。


「……あった!」

吾郎は足を止めて前方50m先にある高級そうな別荘を見つめた。窓からは光が漏れる。


「さっさと潰しちゃいましょ……ん?」

近づいて行くと中の話の内容が聞こえてきた………。




「義光さん、こんなとこに呼び出して何の用だい?」

「まずはどうぞ。」

俺は皆をソファーに座るように促した。


「今日は皆さんにお力を借りたくて……。」

「隠れ家が堕ちたことと関係ありそうですな。」

白髪混じりの丸眼鏡をかけた初老のおっさんが言う。この人は情報屋ファントムの社長だ。


「ええ、ウチの娘が殺されましてね。」

「鈴蘭ちゃんがかい!?」

ツンツン髪で焼けた肌、年中アロハシャツを着たこの男は去年若くして運び屋ベアーの社長になった。よく鈴蘭と遊んでくれていた。


「いったい誰が?」

長髪で黒いスーツを崩さず、表情一つ変えないこいつは復讐屋エックスの社長。


「殺し屋、御凪れいとその部下です。」

重い空気が流れる。裏業界トップの社長達ならその名前を聞いたことない者はいない。


「なるほど、私は仕事としてなら協力しましょう、復讐屋ですから。ですがこれはもう”虐殺”ではなく”戦争”になります。そのことをお忘れなく。」

「運び屋じゃ出来ることあるか分かんないけど、いつでも呼んでくださいな!」

「帰って情報の整理をしてきましょう。」

男達は立ち上がった。その時、2階から杖をついた着物姿の爺さんが下りてきた。


「ワシからもお願いじゃ、力を貸してくれ。」

この人は近江柳玄(りゅうげん)。俺の父であり、泥棒屋近江家の7代目社長だ。


「近江さんにはいくつも借りがあります。出来る限りのことをさせて頂きますよ。」

皆同じようなことを口にし、部屋を後にした。


「起きられたらお身体に障りますよ。」

俺は社長を寝室に戻した。末期の癌でもう長くないらしい。しかも鈴蘭の死………。最近さらに元気がなくなってきている。せめてあの子の敵を討たなければ!




「ちょ、ちょっと何よこれ!?」

吾郎は小さな声でオーバーリアクションをする。


「早く皆に知らせなきゃ大変なことになるじゃない!」

別荘を潰すことも忘れ基地に急いだ。火傷の痕が痛んできたが気にしている場合じゃない。


「戦争が、戦争が起きちゃうわよぉう!!」





この日の空はどこからでも満月を見ることができた。雲一つなく、ただ暗き闇が世界を覆っていた。しかし、この空を果たして何人の人間が見ているのか。

夜は私達と同じだ。暗くて、怖くて、皆が怯える。

でも、闇というものは光がなきゃ生まれない。光を遮るそこに闇は生まれる。

光と闇は相反しながら共存しているんだ。


私は葡萄ジュース(?)を呑みきった。


「今日はよく眠れそうだな!」

一人の屋上を後にし、寝室へと向かう。


「今日が最後の晩餐にならなきゃいいが………。」

二村君がいっさい出てきませんが大丈夫です、生きてます。

きっと部屋で安静にしています、たぶん。

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