10.予感――桜色紅葉
アクセル全開でやって来たデコトラはキィーー!と無駄に豪快なドリフトを掛けて3人の前で停止した。
「ッと!あっぶないなー。さっきのれいといい、もう少し穏便にはなれないのかな」
八戸がブツブツと不満を言うと、開いた運転席から、
「んんもぅぅ!そんなこと言わないでよ八戸ちゅわぁぁん!乙女はいつだって勇ましい生き物なんだからぁぁぁん。そ~いえば眼鏡を外した姿もイ・ケ・メ・ンね」
無駄に腰をくねらせながら話す千歳に八戸は少し顔を引き攣るが、千歳は四季が肩を組み、支えている二村へと視線をズラすと真剣な顔つきになって、
「二人とも!二村きゅんを止血するから早くトラックに乗せちゃって!あとゆりちゅぁん運転少し任せたわねん☆」
「…うん」
千歳は六条にそう言ってウィンクをし後ろの荷台へと乗り込んでいくのと同時に六条と七弥はそれぞれ運転席と助手席に乗っていった。
そそくさと八戸も四季と共に二村を肩で支えそこへ連れていく。荷台に登れば先程までほとんど物がなかった空間に様々な救急セットがところ狭しと広げられていた。シンプルに包帯やオキシドールからよく分からない薬品名が載ってるビンまで……。そして手際よくそれらをいじる千歳を見て、
「ほぉーやっぱり兄弟なんだな」
と八戸が感慨しくしていると、
「んもぅぅぅ間違ってるわ!!兄弟じゃなくて姉妹よ☆」
目から沢山星が出てるんではないかと思う位のお決まりのお色気を決めた千歳。
それと同時にエンジンが駆けられデコトラは静かに発進した。
しばらくして二村の止血が終わったのを皮切りに四季が彼に質問をする。
「ねぇ…二村くん…一体、病院でなにがあったの?」
3人の視線が二村の回答を待っていた。
「…それが……」
眉間に皺を寄らせた二村は頭で少し言葉を纏めてから再びそっと口を開いた。
あの少女に刺された所から始まり、全身黒を身に纏った男に襲撃された時のあらましを思い出す限り。
「近江一派と言えば、裏社会では最強にして最凶を異名する組織だよね。組員も尋常じゃない位いて、この日本の行政の一部を裏で牛耳っているとも噂されるほどの…」
「じゃぁ私達はそいつらに喧嘩を売っちゃった訳ねぇぇ。例え仕事だったとしても……でもこうなったからには真っ向と戦わないといけないわね」
八戸と千歳がそう返し皆は考え込む。
思い出したように二村は控えめに聞いた。
「…その…そいつから聞いたんだが、吾郎が殺られたっていうのは、本当なのか」
「うん…本当だよ」
四季がそう言い悲しみのオーラが降りかかる。ただ一人千歳を除いて。
「さっき四季ちゃんにそれを聞いた時も私なんとなく思ったのよ。吾郎ちゃんはまだ生きてるんじゃないかって」
「残念だけど、それはない」
千歳の発言にそう言った八戸と四季は嫌でもそれを認めるしかなかった。二人で処理した遺体の感触を忘れることなんてできない。
「いや、絶対そうよ……ほら!乙女の勘ってよく当たるじゃなぁい?だから私は信じるわ。いつか吾郎ちゃんに会えるって」
笑顔で言う千歳はなんか説得力があって、聞いていた3人も心持ちが軽くなるのを感じた。
「ひとまず今は近江の襲撃やお嬢様からの指令もないし本部に戻ましょっか。ゆりちゃーんお願い!」
「…もう向かってる」
人気のない林道を走るデコトラは山中を軽やかに走行していった。
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目標に逃げられた病院からそのまま車に乗っていた義光は御凪一派の始末に当てさせた始末屋共との連絡が途絶えた事にイラつきハンドルに拳をぶつける。
「くそっ!!あんなガキ共なんぞすぐ一掃出来ると思いきや、なんてつかえねぇんだウチの部下は!!隠れ蓑も陥落しちまったし今ウチは危機的状況だ。でも御凪をこのまま野放しになんてできねぇ……」
スーツのポケットから携帯電話を手にし部下へ連絡をする。
「おい、近江総出の緊急招集をかけるぞ。殺しに精通する者を出来る限り集めろ、いいな!」
電話を切ってから義光は更にアクセルを踏み込んで近江家へと急いだ。
耐震偽装の紅葉です。
またやってしまいました……。どうして動きある展開に出来ないのか本当に悔しいです。
更新もすぐ出来なくて1日ブラング空きました。
小説やっぱし難しい(:_;)
次のポペさん。キラーパスゴメンなさいorz