第1話 選挙参謀あやめの胃が限界突破! 烈馬の突撃選挙戦、開幕!!
1
都心某所、選挙事務所ビルの一室。
張り詰めた空気の中――
烈馬は真顔で鎧の手入れをしていた。
選挙参謀――いや、ほぼ巻き込まれた一般人代表のあやめは、
山のような書類を抱え、机に突っ伏していた。
「烈馬さん……お願いですから……
せめて選挙ポスターだけでも鎧脱いで撮ってください……」
烈馬は堂々と答えた。
「愚問! 鎧を外せば拙者ではなくなる――!」
「じゃあ議員バッジと甲冑、どっちが本体なの!?」
2
烈馬の選挙スローガン――
「突撃あるのみ!」
以上。
シンプルすぎて、あやめの胃はもう限界だ。
「街頭演説の原稿……マニフェスト……有権者向けの政策集……全部白紙……」
烈馬はずっと筆で**「討つ」「討つ」「討つ」**とだけ半紙に書いていた。
「これが拙者の政策よ! 悪政を討つ! 不正を討つ! 酒税の値上げを討つ!!」
「討つしかねぇのかよォォォ!!」
3
そんな彼の選挙事務所には、すでに近所のマダムたちが集まり、
黒風の写真をスマホで撮りまくっていた。
「まぁ〜馬がいるのね! かわい〜〜〜!」
「烈馬さんも若いのに立派ねぇ〜! 武士って本当にいるのねぇ〜!」
烈馬はお茶を注ぎながら刀を腰に、満面の笑みで言った。
「拙者が当選した暁には、全国に馬を一人一頭配布する所存!!」
マダムたち「おおおおお〜〜〜!!」
あやめ「そんなマニフェスト、誰も通せるわけがないだろおおおお!!」
4
街頭演説初日――
選挙カーではなく、黒風に跨った烈馬が、
商店街を突撃パレードしていた。
商店街のおじいちゃんおばあちゃんが手を振る。
子どもたちが追いかける。
パトカーがそっと後ろをつけている。
烈馬の声が空に響く。
「皆の者!! 拙者が議場を討ち取り、民のために働いてみせる!!
突撃の一票、拙者に任せい!!」
あやめは拡声器を握りしめ、半泣きで走っていた。
「せめて法定速度は守ってえええええ――!!」
5
その頃、対立候補の選挙事務所では――
ベテラン政治家とその参謀が震えていた。
「なんだあの馬と鎧……支持率が……支持率が……!」
秘書「SNSで“#烈馬に一票”がトレンド一位です……!」
ベテラン「馬で国を動かせるわけが……わけが……!」
6
こうして烈馬の“突撃選挙戦”は、
日本の政界を巻き込みながら、街中を爆走し続けるのだった――