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君に深紅の花束を  作者: 小川 綾
■第四章
46/63

第四十二節 帝国の観せる街

 時は創造歴1600年。

 時節は新しいはじまりを告げる、創造神ラグナディールの節、上月の三十日。




 夜月国の日の出は遅い。

 まだ夜が明け切らないうちに身支度を整え、一行は離れを出る。遣いの聖女に案内されるまま大聖堂の裏にある暗い林を抜けると、小さな船着場があった。


 そこには十人ほど乗れそうな小型の船と……ノエルが待ち構えていた。アレクは感謝もそこそこに、小さく折りたたんだ皮紙をノエルに差し出す。それを受け取り、ノエルは不思議そうに首をひねった。

 アレクは「万一に備えて、です」と申し訳なさそうに笑い、後で読んでほしいと伝える。ノエルは少し目を丸くしたあと「必ず」と微笑み――深く頭を下げた。

「皆様、本当にありがとうございました。道中のご武運をお祈りしております」

 そして顔を上げると、ニーナに向けて頷く。

「ニーナも、必ず無事で戻ってくるのですよ」

「はい、行ってまいります」

 力強く応えたニーナに続き、それぞれが礼を述べる。


 笑顔で手を振るノエルに見送られながら船に乗り込み、夜月国を後にした。

 


****



 五人を乗せて出港した船は、四時間ほどの航海で帝国のあるタルダント大陸に入った。


 他国籍の船が入港できる港はひとつだけ。その港で五人を下ろすと、船はすぐ海原へと去っていった。


 ――帝国。


 正式名称は統括帝国サルディヴァルという。かつては大陸の三つの国の調和を取り持ち、まとめ上げる役割を担っていた国だ。


 ……だが、それは旧国名の時代の話。


 ミレニアムの夜明けで、世界の均衡に一番心を砕かなければならない国が、自ら世界の均衡を崩したのだ。

 イーサーの亡き後、国名をメフィストフェレスからサルディヴァルに変え、新たな皇帝とともに内政が立て直された。

 しかし、元々軍事力のみが特化していた国は軍事以外の在り方を知らず、今に至っている。


 兵器を開発する副産物として作り出された発明品や、国営農場の雑穀を元に作られる酒と携帯食料が主な国の財源であり、それだけがアレクの知る情報だった。



****



 かなりの遠回りを強いられたが、ようやく最後の目的地である帝国大陸に足を踏み入れる。


 煉瓦で固められた埠頭に一歩を踏み出したロディが、珍しく緊張で喉を鳴らした。

「ここが帝国……」

 ニーナはその後ろから、おそるおそる行き交う人を眺める。

 港は持ち込んだ品物の目録を読み上げる商人や、船に酒樽を運び込む船乗りたちで賑わいをみせていた。


「なんだか思ったより普通……? なのですねぇ」

 もっとどんよりとした雰囲気を想像していたが、思いのほか活気に満ちていて……ロディとニーナはほっと胸をなでおろす。アレクとクレイグもやや肩の力を抜き、積み上げられた荷物の山に興味を示した。


 スカーレットだけは……ひとり、眉間のしわを崩さない。

「これは見世物だからな」

 クレイグが昨晩の話を思い出す。

「そういえば、観光用に整えた街だと言っていましたね」

「ああ。ここにいる帝国の者は、全てが演技者で監視者だ。不振な動きをすれば、すぐ兵が捕らえに来る。気をつけろ」

 その言葉で、四人の顔に再び緊張が戻った。



 港から街に続く道は石灰石で綺麗に舗装され、歩きやすい。遠景に目をやれば、建物の頭から黒岩の城がわずかに顔を出していた。あれが、アレクたちの目指すべき場所なのだろう。


 土地勘のあるスカーレットを先頭に、五人は「見世物」の中へと踏み出す。

 左右一寸のずれもなく全く同じ石灰壁の家屋が立ち並んでいて、確かに整っている。

 しかし街といえば、商店の呼び込み、武器を描いた看板、飯処から漂う胃をくすぐる匂いがあって然りだろう。そんなもの一切ないどころか、何かを知らせる文字のひとつ、街を飾る花の一色すら見当たらない。

 雲の切れ間から日が差し込み、壁の白さがやたらと目に染みた。視界は広く明るいのに、アレクはどこか薄暗く感じる。


 時折、街を歩く人にすれ違いほっとする。が、それも最初の数人だけで、すぐ異様な感覚に陥った。


 誰もが色のない生成りの服を纏い、道の端で黙って一列を成す。すれ違いざまには「こんにちは」とだけ声を響かせた。声の大きさから口に浮かべる弧の角度に至るまで、型に嵌めたように同じだ。

 言い知れぬ不気味さがぞわぞわとアレクの背をなぞり、一気に鳥肌が立った。


 まるで昼日国城の地下牢を歩くような……そんな錯覚に襲われる。

 この街は、生きていない。誰かが操る、巨大な装置だ。

 埃っぽさすら漂わない空気のなか――鼻を掠めたのは、あるはずのない、機械油の焦げた臭いだった。

 アレクは生々しさに思わず鼻を擦った。


「スカーレットの話を聞いたうえで歩くと……気味が悪いな」

 顔を歪めるアレクの一歩前を、クレイグが腕を擦りながら歩く。

「ええ。たとえ何も聞いていなくても、不快さは変わらなかったでしょうね」

 街のあちこちに忙しなく顔を動かしていたクレイグだが……頷くと同時に気を向けるのをやめた。


 ロディは両腕を掻きながら、何かを探すように街をきょろきょろ見回している。が、どこを見ても、さっき見たばかりの景色だ。

 すぐに「やめた」とため息をつき、ロディは目の前を歩くしなやかな背で視線をとめた。

「なぁ、スカーレット。もっとこう、普通っぽくしてるやつはいねぇのか?」

「ここにはいない」

 スカーレットはずっと前を向いたままだ。

「なんだ、つまんねぇの。帝国(こんなとこ)に住むのってどんなやつか見てみたかったのに」

「……こんなやつ、だ。(これ)で我慢しておけ」

 残念がるロディに辻褄だけ合わせた。


 スカーレットは足早に、どんどん街の中を進んでいく。クレイグもロディも、もう街に関心はなく元住人の背を追うだけだ。

 アレクはひとり、寒気を鎮めながら通り過ぎる家屋や人に意識を向け……ふと、静かすぎると後ろに気をやれば、いたはずのニーナが消えていた。いや、歩いてきた道の遠くに豆粒ほどの青い髪が在る。アレクは慌てて「ちょっと待って」とスカーレットを呼び止めた。


 スカーレットは振り返ってきょとんとして……アレクの肩越しに走ってくるニーナで理由を察すると、ばつが悪そうに眉尻を下げる。

「配慮を欠いた、すまない」

「そんな急いで、一体どこに向かってるんだ?」

 その一言で、スカーレットがまた目を丸くした。

「なんだ、酒場に立ち寄るんじゃなかったのか?」

 アレクも一瞬ぽかんとして……そういえばと晩餐の会話を思い返す。そんな提案もあったが、観光用とはいえ街の様子がこれでは酒場も期待できそうにない。ただ、本来の目的と違う興味は湧く。


 立ち寄るべきかとアレクが悩むうちに、ようやくニーナが四人に追いついてきた。はぁはぁと切れた息を大きく吸って吐いて……たまたま横を向いた視線の先、家屋との隙間にある小道の奥に、他とは明らかに違う形の建物があるのに気づいた。

「あそこ、なんでしょう?」

 ニーナはふらふらと横道に吸い寄せられていく。アレクたちも後に続いて細い道を抜けると、だだっ広い空間に出た。その広場の中央に、石灰壁の大きな建物がどっしりと構えている。


 やたら分厚い外扉に「招待制」の張り紙があった。どうやら観光客用の物ではないらしい。そのすぐ横の立札には、公演日と書かれた下に月日、並んで演目、名前が記されていた。


 ニーナは難解な間違い探しを見破ったかのように目を輝かせ、建物を見上げる。

「これ、劇場ですか?」

 高さは他とそれほど違わないが、街の家屋を三つ四つ繋げたほどの幅がある。飾り気はないが、両合わせの扉の造りが他と違い重厚だ。

「へぇ、そういう文化的な催しはあるんだな」

 アレクは商店すらない街にあるこの建物の存在が興味深いようで、しきりに壁や扉に視線を巡らせている。劇場ならば、そのしっかりとした造りが音漏れを防ぐためだと納得できた。

「次公演は中月の二日……三日後ですね。『ジム・ブラントン』、演目的に運命劇の類でしょうか。スカーレットはこの公演を観たことがあるのですか?」

 クレイグは立札を読んで問いを投げかけたが、件の女は芸術に興味のないロディの、さらに後ろでそっぽを向いている。

 ただ、クレイグの質問には、

「その名前は知らない」

 と、卒なく答えた。


 帝国に入ってからのスカーレットは、どうにも居心地が悪そうだ。国を裏切った罪悪感とも取れるが、焦るように先を急ぐのや吊り上がったままの三白眼は、どちらかというと反感を抱いているようにも感じる。

 そんな元帝国兵を気遣ってか、ニーナはスカーレットの隣まで歩み寄ると、手を取り元来た小道へ向けて軽く引っ張った。足は素直に劇場から遠ざかるが、スカーレットの表情は晴れない。

 ニーナは気を揉んで、何か他愛のない話を考える。

「えと、スカーレットも演劇を観たりするんですね」

「貴女が観劇する姿など全く想像できませんが」

 クレイグはにこにこと話しかけたニーナに続けて嫌味を差し込んだ。さっきの素っ気ない返事に対してやり返したのだろう。

「そんな趣味はない。ここに入ったのは、一度だけだ」

 相変わらず、スカーレットの返事は端的だ。それにむっとしたクレイグが口調を強めた。

「先ほど貴女は「その名前」と言いましたね。なら、どの演目を観たのか、言ってごらんなさい」


 急に、スカーレットが下を向く。


「……幼すぎて、演目は覚えていない」

 口調も声色も変わらない。ただ、握った手の異常な強ばりが、ニーナだけに伝わった。



「……観たのは、両親の命乞いだ」


「……十分も、なかった」


 空気から温度が消えた。


 スカーレットは抑揚もなく、淡々と、それだけを口にする。


 その瞳は、どこまでも深く、空虚だった。



 沈んだ様子を気遣っていたニーナも、苛立って突っかかったクレイグも、劇場を観察していたアレクも、ぼけっと待っていたロディですら……皆が一斉に言葉を失う。


 それだけの短い答えが、没個性的な見世物の中にある演劇という個性、演目の「名前」……いや、ここで目にしたもの全てを、ひとつの真実にしてしまった。


 出会った時、スカーレットはニーナに「頼れる者もいない」と叫んだのを覚えている。

 そして彼女は今、両親の命乞いを観た、と言った。


 アレクやニーナのようにスカーレットを受け入れきれないクレイグにも、その三人のように頭が回らないロディにも、分かる。


 ――たった一度、十分足らずの観劇で、彼女に起こったことを。



 唐突に押し寄せたやるせなさが、四人の心を支配する。

「ひどい……」

 ニーナが繋いだスカーレットの手を引き寄せ、力んだ腕を労わるようにそっと額を寄せた。


 ここで「劇」として、彼女の両親は殺されたのだ。


 アレクは愕然と劇場を見据えたまま、一歩、二歩と退いていく。

「帝国は……そこまで民を抑圧しているのか……」

 ロディが全く興味を持たなかった石灰壁の建物を、憎々しげに睨んだ。

「命まで見世物かよ、最悪だ」


 クレイグは……黙って下を向く悲劇の主役に「あ、あの……」と声を絞り出す。

 自分の無神経さを詫びたいのに、それがまた彼女の傷を抉ってしまいそうで……謝意がひとつも言葉にならない。


 スカーレットが顔を上げる。

 何か言いたげに口を開け閉めするクレイグを一瞥すると――


「気にするな。昔の話だ」


 そう言い捨てて、後悔の籠る眼差しにくるりと背を向けた。


 クレイグは同情を求めない背中に……もう、声はかけられなかった。



 それ以上の言葉はどの口からもなく、誰の足も動かない。まるで海の底に沈められたような沈黙が、五人の意気を押し潰さんとのしかかった。


 どれくらい時間が経ったのかわからない。目の前は真っ暗だが、陽の高さは変わらず……多分、十分も経っていないだろう。

「……酒場に、立ち寄るのか?」

 スカーレットが、いつもと変わらない無愛想な顔をアレクに向けた。


 アレクは、思考にまとわりつく失意の影を振り払おうと、強く頭を振った。

「酒場で食事はできるか?」

「ああ。品数は少ないが」

 その返事を聞き、アレクは三人の鬱々とした顔を見回した。酒を飲むつもりはないが……わずかでも憂いを払いたい。あと、酒場に少しの興味もある。

「……なら、酒場に向かうか」

「わかった」

 スカーレットは頷いて、元来た道ではない脇道へと曲がっていった。四人は素直にその後を追う。



 寸分の狂いもない建物の角を右に曲がり、左に曲がり……どこを見ても同じ景色だ。いま自分がどこを歩いているのかなど、二つ目の曲がり角でとっくに見失った。はぐれないようにスカーレットが歩調を緩めてくれているのが、せめてもの救いだ。


 しばらく角々と進んだあと、左に曲がると石灰壁のやや大きな建物の前に出た。スカーレットがその建物の前で足を止める。

「ここだ」

 やはり他の家屋と仕様は変わらないが、普通の扉とは別に大きな鎧戸がある。

 そして、普通の扉の隣に……この街に入って初めて、値段の書かれた看板を見た。

 たったそれだけのことなのに、ほっとしてしまう。


 ようやく見つけた人の営みを、ロディとニーナがいそいそと覗き込んだ。

「お、エラフィの肉あるじゃん!」

 ロディのお腹がぐぅと鳴る。受け入れの早さに少し呆れて、アレクは物言いたげな視線をその腹にぶつけた。焦点が当たったのをすぐ気づいたロディは、

「腹が減っては戦はできぬ、だってさ」

 悪びれる様子もなく自腹の要求を伝える。

「あ、パンケーキもありますよ!」

 畳み掛けるようにニーナが嬉しそうな声を上げた。


 まぁこの二人だしな……と苦言を飲み込み、アレクはまだ表情の固い従者の肩を叩く。

「クレイグは食べれそうか?」

「……はい。大丈夫、と思います」

 クレイグは品書きを眺めてはいるが、虚ろな瞳に内容が入っていないのは一目瞭然だ。


 こちらも今は仕方ないか……とアレクも品書きを読み、品のところどころに書かれた見慣れない文字に首を捻る。

「この軍功特権証ってなんだ?」

「軍で何らかの功績を上げると渡される証書だ。兵はそれに記された期間内、この酒場への出入りを許され、食事の提供を受けることができる。いわゆる褒美、というやつだ」

 スカーレットは看板を一瞥すらせず答えた。代わりにロディが兄の指した語のある品を上から追う。

「へぇ、その証で酒も飲めんだな」

「そのために必死な兵もそこそこいる。それに、この酒場には旅の者も立ち寄る。稀に一芸を披露する者もいて、余興を楽しめたりするからな」


 建物に窓はなく、中の様子がうかがえない。アレクは扉にそっと耳を近づけた。かすかに弦を爪弾く音と、やや高い男性の歌う声が聞こえる。

 どうやらスカーレットの言う、稀、がありそうだ。この機を逃すまいとアレクは扉を開いた。



 酒場で、なおかつ窓もないなら、もっと薄暗いと思っていたが……予想に反して店内は明るい。

「何人だ?」

 扉を開けてすぐのカウンターに座っていた体格の良い男が、急に立ち上がった。身構えたアレクの後ろでスカーレットが、

「五人だ」

 と手のひらを広げてみせる。発達した大胸筋に前掛けが似合わなすぎて、すぐ店員だと認識できなかった。

「それなら舞台前の席を使え」

 アレクはちょっとの申し訳なさから、ぶっきらぼうな案内にも大人しく頷き、促された席へ移動する。


 席に向かいながらぐるりと店内を見回せば、居るのはカウンターの男ひとり。それなりに席数があるためか、がらんとしているのが余計に目立つ。遮るものがない空間に、舞台上で歌う男の声がよく響いた。

 弦の奏でる柔らかな音色が男の儚い声とよく調和して、すんなりと耳に入る。


 ――私は待つ、貴女の帰る日を。きっともうすぐ、貴女は青い髪を揺らし、微笑むでしょう――


 全員が席に着くのを見計らい、店員が注文を聞きにきた。ロディとニーナが競い合うように品書きで目をつけていた物を頼み終えると、スカーレットは慣れた調子で今日の定食を三つ注文した。


 ――悪夢を払う炎を、欲を裁く雷を以て、この闇路を導かんと舞い降りる――


 店員が奥に消え、他に気を寄せるものもなく……アレクは舞台の上の男をなんとなく観察する。

 大振りの外衣を重ねて羽織り、つばの広い帽子をかぶった格好は旅の最中という印象を受ける。何本あるかわからない弦を器用に弾きこなし、淀みなく堂々と歌う姿は……道中に得た感情を旋律に変え路銀を稼ぐ、吟遊詩人という生業の者だろう。


 そうこう考えているうちに、カウンターの奥から響いていた調理の音が途切れた。程なく、注文の品が運ばれてくる。


 ――世に魔は満ちた。さぁ目覚めの時だ。魔女よ、黄昏をもたらせ――


 いただきますとロディが肉にかぶりついた隣で……アレクが手を止めた。


「……アレク様。この歌、間違いなく『黄昏の魔女』を歌っていますよね?」

 クレイグもカトラリーに手を付けず、浮かない顔でずっと舞台上を睨んだままだ。

「やっぱり、そうだよな……」

「なんだ? 歌がどうしたんだ?」

 肉を頬張ったロディが、手を止めたままの二人を交互に見た。


「あの男の歌が『黄昏の魔女』について歌っているようなのですが……魔女に対してとても敬慕的なのです」

 クレイグの意見に頷いて、アレクは黙々と定食の魚をほぐすスカーレットに顔を向ける。

「帝国にそういう思想はあるのか?」

「ここに思想などない」

 分かっていたがスカーレットは即答だ。


 いつもならそれに苦言を呈しそうなクレイグだが、

「600年前の脅威の復活を望むような考えなど、そもそもどの国にもありませんよ」

 と、帝国の言い分を避け、通論だけを述べた。

「ふぅん、そんなの歌うやついるんだ? 変なやつだな」

 ロディは空になった皿を押しやり、舞台の上に気を向ける。


 獲物を狙う狩人の目つきで、しばらく吟遊詩人を物色したあと……

「なぁ、あんた!」

 と、店内に響き渡る大声で呼んだ。

「おい、ロディ!」

 アレクはロディの口を慌てて塞ぐ。


 ……が、席と舞台は目と鼻の先。時すでに遅く、舞台上の男が演奏を止めた。


「……はい。お呼びですか?」

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