2:美男子に関する正面問題
クリスが電撃的に転校してきてから三日後。
ウィルが教頭に話を通してくれたおかげで、私は守護霊獣の召喚に再挑戦することになった。そして本日。無事、ミルキーを守護霊獣に迎えることができた。
念願の守護霊獣。
嬉しくて、嬉しくて、仕方ない。
みんなで馬車に乗り込み、屋敷に戻る最中も、ずっと膝に乗せたミルキーの頭や背中を撫でていた。ちなみに他のみんなの守護霊獣は、どうしているのかというと……。
ジェシカのスノーボールとクリスの銀狼は、一緒に馬車に乗っている。だがウィルのイーグルとアンソニーのモズは、空を飛んで屋敷へ向かっている。
そう、私達はみんなで一台の馬車に乗り込み、帰宅の途についているのだ!
クリスはウィルと一緒に、ウィンスレット辺境伯家の離れに滞在している。つまり5人で学校に通うことになった。ウィンスレット辺境伯はそれにあわせ、新たに通学用に、6人乗りの馬車を用意してくれた。だから5人全員同じ馬車に乗り、通学することができている。
ということで馬車はウィル、私、クリス、その対面にジェシカ、アンソニーが座っている。今となってはこの配置が当たり前だが……。
この並びに決まるまで、紆余曲折があった。
ジェシカは、やはりウィルの正面に座るのは「無理」だった。話す時は、普通に正面でも会話している。だが馬車で対面の席に座ると、逃げ場がなく、どうしても「ダメ」だという。それならばと、私がウィルの対面に座ることにしたのだが。
男性陣の中でも、いろいろな思惑が働いたようだ。クリスは現在大魔法使い見習いということで、役職に当てはめると魔法騎士見習いに等しい身分になる。そうなると、最初に乗り込んだウィルの隣には、アンソニーが座るのが妥当であるが……。そこはアンソニー。気を利かせてくれた。ウィルの隣にクリスが座れば、私と近くなると。
私が初恋の相手であり、婚約者になってほしいと告白してくれたのは、アンソニーだった。でもそれはお断りすることになり……。だが、アンソニーはさすが未来の辺境伯。クリスと私の婚約が決まると、潔く身をひき、逆に気を使ってくれるようになった。
しみじみ思う。
アンソニーは、本当によくできた人間だと。
彼が跡取りで、ウィンスレット辺境伯家は盤石だ。
そんなアンソニーの気遣いで、ウィルの隣にクリスが座ることになったのだが。
ジェシカはこの状態に、大変困惑することになる。
「その、ニーナ、これは一般論よ。一般的に見て、クリストファーさまは、相当素敵な男子だと思うの。ウィリアムさまとはまた違った魅力をお持ちでしょう。あのサラサラのアイスシルバーの髪。奇跡的な美しさのライラック色の瞳。そして白磁のような肌の美しさも……」
しばらくジェシカは、クリスの容姿端麗な姿を褒め尽くし、そして。
「つまり、クリストファーさまの正面に座るのも、私にとっては、とても難易度が高いの」
その気持ちは、よく分かる。
婚約者という立場だが、私だって未だにクリスの顔を正面から見ると、腰が砕けそうになる。
だから。
ウィル、私、クリス、その対面にジェシカ、アンソニーが座るプランを提案した。
ジェシカはウィルの対面ではなく、ウィルと私の間の対面に座ることで、正面を回避できる。これにはジェシカも納得し、他のメンバーに提案しても、何の文句も出なかった。むしろクリスは、私が隣に来ることをとても喜んでいる。
かくして馬車の席順が決定した。
もう1話「部屋で二人きり」を時間差で公開します。

























































