88:イケメンでセクハラって罪が重いです
どうして、この並びになったのだろう。
私の右にフランシス、左にクリス。
二人に挟まれるように座る私は……全然気持ちが落ち着かない。
レディ・ファーストだからと最初に私が馬車に乗ることになったのだが。
私が右奥に座れば、当然、次に乗るフランシスは……。私の隣に座るだろう。
それは……避けたい。
だから対面式の座席の、御者側の席の真ん中に私は座った。フランシスはそれを見て驚いていたが、そのまま右奥に進み、そこで腰をおろした。
クリスは最後に乗り込むことになったが……。
私の隣に座りたかっただろうが、バランスを考え、左手前に座った。つまり、フランシスの並びに、人ひとり分開けて、腰を落ち着けた。
するとフランシスが……。
「私とクリストファーの間がぽっこり空いている。ニーナ、ここに座っては?」
その提案に対し、クリスは単純に私と隣同士で座りたかったのだろう。
輝くような笑顔で私を見た。
「フランシス王太子がせっかく提案してくれている。おいで、ニーナ」
そう言われては移動するしかなく……。
クリスは……私の左手をずっと握っている。
フランシスは手など握ったりしないが、ものすごく体を密着させている。
しかも馬車が大きく揺れた瞬間に「失礼」とか言いながら太股に触れたりするし……。
クリスはフランシスのこのセクハラまがいの行為に、気づいているのだろうか……?
二人は私を間に挟みながら、王宮の庭園で咲く薔薇について語っているが、私はその会話が全然頭に入って来ない。
そもそもフランシスは、ヒロインであるユーリアと婚約するのではないか? 私に変なちょっかいを出している場合ではないと思うのですが……。
それに肝心のユーリアは?
フランシスはどう考えてもユーリアを、舞踏会でエスコートすべきだと思うのですが……?
というかやはり王都は危険だ。
今日舞踏会が終わったら、そのままブルンデルクに帰りたい!
でも……。
クリスと離れ離れになるのは……。
11月に婚姻関係を結んでも、クリスと一緒に暮らせるわけではない。
……。
早く、学校を卒業したい。クリスのそばにいたい。
そんなことを思っているうちに、宮殿が見えてきた。
「フランシス王太子。僕は自分の婚約者を連れ、舞踏会に参加するのはこれが初めてです。皆へのお披露目にもなるので、ニーナのことは、私がエスコートしてもいいでしょうか」
王太子であるフランシスに一歩踏み込んだ話ができるのは……クリスもまた王宮で育ち、子供の頃からお互いを知っているからだろう。
「なるほど。もちろん、私は最初からクリストファーがいるなら、ニーナ嬢をエスコートするつもりはなかった。私のことは気にせず、ニーナ嬢をエスコートするといい」
フランシスは優美に微笑むのだが……。
現在進行形で体を密着させておいて、よく言うなぁと思わずにはいられない。
というか、こんなにイケメンでセクハラって罪が重いですよ、王太子……。
でも宮殿の敷地に入ると、フランシスは私から体を離し、そして馬車から降りると「ゆっくり楽しむといい」と言って姿を消した。
この後、もう1話、公開します!
準備出来次第、公開します。11時半までに公開します!
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