87:思いがけず、真っ当な提案
フランシスもグレッグもクリスも顔見知りだ。
この王国のピラミッドの頂点に三人はいるのだから、知っていて当然なのだが。
クリスは久々に王都に戻ったということで、グレッグは驚き、無事の帰還を喜んだ。そして今はなごやかな雰囲気で、三人ともお茶を飲んでいるが……。
舞踏会へ向け、屋敷を出る時間が近づいている。
誰にエスコートしてもらえばいいのか……。
クリスはグレッグとの会話の中で、私と婚約をしたことを明かした。
その瞬間、グレッグの琥珀色の瞳は衝撃を受け、深く沈んだように見えたが……気のせいだろう。でもグレッグはこれで私を舞踏会へエスコートすることは、諦めてくれたはずだ。
問題はフランシスとクリスだ。
クリスは婚約者なのだから、私をエスコートして当然だが……。
まだクリスは正式な大魔法使いではない。
対してフランシスは、まごうことなき王太子。
もしフランシスが私をエスコートしたいと言ったら……。
さすがにクリスも、ノーとは言いにくい。
その一方で、いくらフランシスでも、臣下の婚約者を強引にエスコートはしないと思うのだが……。
いかんせん、フランシスが私の知るマジパラのフランシスとは別人過ぎて、何を言い出すか想像もつかない。
「ここからだと、そろそろ宮殿へ向け出発した方がよさそうだ。どうだろう、私の馬車は6人乗りだ。皆、私の馬車に乗っては?」
思いがけず、フランシスが真っ当な提案をしてくれた。
「フランシス殿下、その提案はありがたいが、自分の馬車がある。せっかくだが、遠慮させていただくよ。すまないが、一足先に行かせてもらう」
グレッグは自分の立場をわきまえ、各自に礼をすると、いち早くこの場から抜けた。
「では三人で行こうじゃないか」
クリスにとっては苦い決断だったと思う。
クリスだって自分の馬車があるのだから。
でもここでクリスがグレッグと同じ対応をしたら、私がフランシスと二人きりになってしまう。何より、私はクリスの婚約者なわけで……。
だから。
「フランシス王太子さま、ありがとうございます。それはありがたい申し出です。王太子さまの馬車に乗れる機会なんて、そうはないですからね。私の婚約者も喜ぶと思います。ねえ、ニーナ、せっかくだから乗せていただこう」
「そ、そうですわね」
こうして王太子の馬車に乗ることになったのだが……。
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