86:三つ巴
どうして……こうなった?
私の頭の中は、今のこのシュールな状況を、懸命に整理しようと努めていた。
ここはノヴァ家の応接室。
この応接室に、フランシス王太子、筆頭公爵家の嫡男グレッグ、そして婚約者のクリスの三人がソファに腰かけている。
フランシスは、白シャツに黒地の絹サテンに唐草模様を織りだしたベスト、ダークエメラルドグリーンのテールコートに白ズボンに黒のロングブーツという洗練された装いだ。
グレッグは、白シャツに金糸で刺繍が施された白のベストに、ペールブルーのテールコート、白ズボンに焦げ茶色のロングブーツで、フレッシュにまとめている。
クリスは、私のドレスにあわせてくれたのだろう。白シャツにロイヤルパープルのシルクのベスト、ライラック色のテールコートに白ズボン、濃い紫の革のロングブーツと、高貴な雰囲気を感じさせる。
三人三様でとてもかっこいい。目の保養になる。
ちなみにここにウィルがジェラルドを引き連れてやってくれば、マジパラの攻略対象五人が揃うことになる。
その事態だけが避けられていることには……神に感謝だ。
いや、今はそんなことを、感謝している場合ではない。
この後、馬車に乗り、エスコートされ、舞踏会に行くのだ。
でもエスコートは一人でいい。三人も……必要ない……。
◇
事の発端は……。
もちろん今朝のセスの見送りにある。
マジパラの本拠地たる王立イエローウィン魔法学園に通う弟のセスを見送るため、私はノヴァ家の馬車で学園に向かった。そしてそこで他校の女生徒に追われる筆頭公爵家の嫡男グレッグを助けた。でも関わるつもりはないから、名を名乗ることはなかった。
だが。
馬車につけられた紋章で、私がノヴァ家の者であることは、バレていた。だからグレッグは、セスに尋ねた。今朝、正門の馬車にいたのは、誰であるかと。
グレッグは、筆頭公爵家の嫡男である。嘘なんてつけない。それにセスは深く考えていなかった。だからあっさり、「姉が見送りにきてくれた」と、明かしたのだ。
さらに。
私が普段はウィンスレット辺境伯家でお世話になっており、今晩の舞踏会に出席したら、明日にはブルンデルクに戻ることも、話してしまった。
普段、王都にいるわけではない。
となると、王都に知り合いが多いわけではないだろう。舞踏会へエスコートしてくれる相手も、いないだろうと考えたグレッグは、我が家を訪れた。
そう。
今日の御礼の贈り物を渡しつつ、舞踏会に私をエスコートしようと考えたのだ。
するとそこに時間差で、フランシス王太子がやってきた。
フランシスの思惑は……おそらくクリスの婚約者である私に、ちょっかいを出したい……という心理が、働いているのだと思う。
フランシスもクリスも、王宮に住んでいる。そして今日の舞踏会は、宮殿で開催される。王宮から舞踏会が開催されるホールは、目と鼻の先だ。クリスがわざわざ私を迎えに行くとは、思わなかったのだろう。
とにかく思いつきの遊び心で、フランシスはノヴァ家にやってきた。
そこにクリスが到着した。
まさか王太子と筆頭公爵家の嫡男がいるとは思わないクリスは、屋敷を訪れ、とても驚いたと思う。
だって王家の紋章が入った馬車と、筆頭公爵家の紋章が入った馬車が、止まっているのだから。何事かと思い、クリスは応接室へ来たと思う。そしてそこに、フランシスとグレッグがいたというわけだ。
フランシスがいる理由は、きっと予想できていると思う。でもグレッグがいる理由は、さすがのクリスでも思いつかないだろう。きっとすごく困惑していると思う。表面的には落ち着いているけれど……。
この後、もう1話、公開します!
準備出来次第、公開します。11時半までに公開します!
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