85:パリピな雰囲気は皆無
「困っているところを助けていただけたこと、心から感謝します。自分はグレッグ・M・ディクソン、公爵家の人間です。……ドアに描かれた紋章、ノヴァ伯爵家の方のようですが……。あなたは初めてお見掛けしました。レディ、よろしければお名前をお聞きしても?」
な、なんか。
私が知るマジパラのグレッグと、全然違う!!
ゲーム内のグレッグなら「うわあ、助かったよ。サンキュー。綺麗なお姉さん! 良かったら、名前、教えてくれる?」こんなノリで話しそうなのに。これではまるでフランシス王太子みたいだ。なんだか人格が入れ替わったように、思えてしまう。
「レディ……?」
グレッグが端正な顔を傾げる。
私の知るグレッグと違い、チャラさはなく、品があり、礼儀正しい。
パリピな雰囲気は皆無で、とても真面目そうだ。
咳ばらいをして、私はグレッグの問いに答える。
「困っている方をお助けするのは、当然のことですわ。お役に立てて光栄です。私は……ご指摘いただいた通り、ノヴァ伯爵家の人間ですが、名乗るほどの者ではありません。どうか私のことは気にせず、学校へどうぞ。もう女生徒の皆さんも、いませんから」
するとグレッグは、とんでもないという表情で首を振る。
「助けていただいたのです。きちんと御礼をしたい。どうかお名前を……!」
「いえいえ、本当にお気遣いなく」
「そう、仰らずに」
「いえ、本当にたまたま居合わせただけですから」
「そうかもしれませぬが……」
グレッグは、マジパラでは軟派な性格で、口説く時はしつこかったが……。
硬派グレッグもそれは同じようで……しつこい!!
むしろ真面目なだけに、質が悪い。
名乗らないことに、罪悪感さえ覚えてしまう。
だが、グレッグとの押し問答も、始業開始のベルの音で、終了する。
無念そうな顔で、グレッグは馬車を降り、校舎へと入っていった。
◇
やはりマジパラの本拠地である王都で、動き回るのは危険だ。
母親は昼食を外で食べたがったが、久しぶりの我が家で寛ぎたいと、私の主張を通すことにした。つまり、王立イエローウィン魔法学園から戻ると、屋敷に引きこもった。母親は残念がり、申し訳ないと思うのだが……。このままでは、まだ会っていないヒロイン・ユーリアにまで、遭遇しそうだった。よって屋敷で昼食をとり、ティータイムを楽しんだ。
そうこうしているうちに、舞踏会へ行くため、準備する時間になった。
クリスがプレゼントしてくれたネックレスとイヤリングにあわせ、ライラック色のドレスに着替える。
胸元も背中も大きく開いたこのドレスは、スカートが裾に向かい、ライラック色と白のグラデーションになっている。ウエストには大きなリボンに花の飾りがついていた。シンプルな分、色の美しさと宝飾品が際立つ。
イヤリングが目立つよう髪はアップにして、繊細な銀細工のボンネでまとめた。
改めて姿見に映る自分を見てため息をつく。
今日のニーナはマジパラで見た悪役令嬢ではなく、まるでヒロインのように清楚で可憐に見える。何よりこれまで、ドレスでも手放せなかった眼鏡がないだけで、印象も大きく変わる。
さらに、クリスのくれたライラックの花モチーフのネックレスとイヤリングは、このドレスにピッタリだった。
早くクリスに会いたい……!
胸をときめきかせていると……。
「ニーナ、ひ、筆頭公爵家のグレッグさまが来たのだが!?」
父親が、母親とケイトと共に、部屋に飛び込んできた。
本日もお読みいただき、ありがとうございます!
次回は「三つ巴」を公開します。
明日もプチサプライス~☆
それでは引き続きよろしくお願いいたします!!
【予告】アズレーク視点第一弾公開
『断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!
既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?』
https://ncode.syosetu.com/n8030ib/
上記作品のアズレーク視点第一弾を
本日、3月26日(日)のお昼
公開します!
良かったらご覧ください(⁎˃ᴗ˂⁎)

























































