80:マジパラの王道ルートが目の前に!
「クリストファー」
!!
この声はまさか。
「フランシス王太子さま」
クリスがゆっくり体を離した。
同時に私の目に、マジパラの王道ルートを飾る、メリア魔法国王太子フランシス・ニール・ブルームの姿が、飛び込んでくる。
光を束ねたかのように輝く金髪。
長い睫毛に煌めくエメラルドのような瞳。
高い鼻に血色のいい唇。
左耳には、王太子を示す紋章のピアス。
白シャツに深緑色のネクタイ、黒のジャケット、ネクタイと同色のセンタープレスされたズボン――すなわち王立イエローウィン魔法学園の制服を着ている。ウィルより3歳上だが、王太子は、友好国へ外交も兼ね、留学していた期間がある。教育制度がまったく違っていたので、帰国後、王立イエローウィン魔法学園に編入したという設定は、ゲームと同じようだ。
それにしても。
頬が緩むのを、抑えきれない。
あの、ヒロインと共にパッケージのセンターを飾る、本物の王太子が、目の前にいる……!
あ……!
クリスが右手を左胸にあて、礼をしている。
私も慌ててスカートをつまみ、礼を行う。
「君がニーナ・コンスタンティ・ノヴァ伯爵家令嬢か?」
フランシスが私を見た。
本当に宝石みたいな瞳をしている。
思わず息を飲み、声が出ない。
「ええ、彼女がノヴァ伯爵家令嬢です。そして国王陛下から正式に認められた、僕の婚約者です」
クリスがぐいっと、私の腰を引き寄せた。
「ノヴァ伯爵家に、こんな美しい令嬢がいたとは……。知らなかった。クリストファー、一体どこで出会ったのだ? 学園でも舞踏会でも、見たことがない。留学でもしていたのか?」
フランシスが微笑を浮かべ、クリスと私を交互に見ながら尋ねる。
「彼女は幼い頃に病が発症し、療養を兼ね、ウィンスレット辺境伯家で育ちました。今はすっかり健康になりましたが。僕とは9年前に知り合いました。ブルンデルクへ旅した時に出会い、その時から、結婚の約束をしていましたから」
さらにクリスが引き寄せるので、私の体は完全に、その胸の中に、収まっている状態だ。まさかフランシスの目の前で、クリスとこんなに密着するなんて……。思わず全身が熱くなる。
「……なるほど。どうりで見たことがないわけだ。まさかこんなにも美しい蝶を、北の地に隠しているとは……」
「ええ、ニーナは僕の、秘蔵の蝶です。式は、彼女が卒業してから行います。でも11月には、婚姻を取り交わすつもりです。ニーナは11月で、18歳になるので」
クリスが私の手を、ぎゅっと握りしめる。
マジパラでも見たことがないこの状況に、ドキドキが止まらない。
これは……まるで……。
クリスが私を自分の物だと、強く主張しているようだ!
いや、実際、クリスはそうアピールしている……。
「彼女はまだ学生だろう? それなのに、11月に婚姻を取り交わすのか!? 卒業まで、待てないのか?」
「もう9年も待ちましたから」
ついにクリスは私の手を持ち上げると、その甲にキスをした。
キスに加え、手の甲に触れた唇から伝わってくる、クリスの熱い想い。完全にノックアウトされてしまう。
一方のフランシスは、目を細めている。
今のクリスの動作で、私の指に輝く、婚約指輪に気づいたのだ。
「なんとも熱いね。君たちが同じ学園だったら、大変なことになっていただろう。二人にあてられ、恋人がいない生徒は、我が身を嘆く。恋人がいる生徒は、年齢を確認し、婚姻に走るだろう……。ところでニーナ嬢、王都には、いつまで滞在するのかな?」
クリスが答えようとしたが、私はなんとか自分を鼓舞し、声を出す。
さすがにこの状況で、一言も声を発しないのは、失礼だろうと思ったのだ。
「フランシス王太子さま。予定では、明日帰るつもりでした。でも国王陛下から、明日の舞踏会に誘われましたので、明後日まで滞在するつもりです。ただ、学校もあります。舞踏会の翌日には、ブルンデルクへ戻る予定です」
「そうか。明日の舞踏会に……。きっと君のイブニングドレス姿は、さぞかし美しいことだろう。また会えるのを、楽しみにしているよ」
フランシスは極上の笑みを浮かべ、宮殿へと、戻っていった。
この後、もう1話、公開します!
準備出来次第、公開します。11時半までに公開します!
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