79:ニーナは、年上が好み?
急に立ち止まったので、どうしたのかと思ったら……。
「王立イエローウィン魔法学園で、フランシス王太子とグレッグはクラスメイトになった。王都では今まさに、揚げないドーナツのお店が流行している。この二つは当たったよ。でも芸術祭の人気投票で、僅差で僕がフランシス王太子を抑え1位になる、これは当たらなかったね」
私はつい最近、夢で見たから覚えていた。だが9年前の、私の予知夢の話を、ここまでしっかり覚えているなんて……。クリスには本当にもう、驚いてしまう。頭脳明晰だが、記憶力も抜群だ。
そしてはずれたというマジパラでの芸術祭のことを、思い出す。
芸術祭でクリスが1位をとるのは、王太子が2年生の時だ。マジパラの芸術祭のイベントでは、クリスは既に大魔法使い。ゲストとして芸術祭を訪れている。そこで人気投票にエントリーされ、1位を獲得するのだが……。
この世界のクリスはその時。
銀狼として、黒い森に囚われていた。
だからはずれてしまった。
「クリス、よく覚えていたわね。もうてっきり忘れていると思ったのに……。でも予知夢は当たるものもあれば、外れるものもあるから」
「そうだよ、ニーナ」
そう言ったクリスが、私の腰を抱き寄せる。
「ニーナは、僕達が別々の道を歩むと言っていた。でも、これもはずれになる。僕とニーナは、離れ離れにはならないからね」
耳元で甘く囁いたクリスは、もう何度目になるか分からないキスをして、私を抱きしめる。
クリスは間違いなくキス魔だと思い、ドキドキしながら、その胸に顔を埋める。
「私とお父様の、国王陛下との謁見は、うまくいったわ。……クリスはどうだったの? 3年間の空白の件、お咎めはなかった?」
「お咎めはなかったよ。むしろ、喜ばれたかな? アンジェラに囚われたのは、不幸な事故だった。ただ、今回彼女をギリス王国に送り届けたことで、国王陛下は、強力なカードを手に入れた。だってギリス王国の王宮にいると言われていた『ギリス王国の奇跡の子』が、この国に不法侵入していたわけだからね。ギリス王国としては、絶対に他国には知られたくない事態だ。それに僕が不在だった3年間は、クリスタル探しをしていたと考え、不問に処すと言ってくれた。あとは……これはまだ秘密」
「え、秘密……?」
顔を上げると、クリスは再びキスで口を塞ぐ。
「ニーナとの婚約と結婚も、認めてもらえた。ニーナが卒業したら、盛大な式をちゃんと挙げるよう、釘を刺されたけどね。美しい花嫁の姿は、ちゃんと見せろって」
そんな風に言われると、恥ずかしくなる。それを誤魔化すように、クリスに尋ねた。
「クリスの大魔法使い就任は? もう近日中に引き継ぐの?」
「そうだね。引き継ぎは、ゆっくり行うことになっているから、しばらくは大魔法使い見習いかな」
「見習い……? あれだけの魔法を使えるのに、見習いなんて、なんだか不思議だわ」
するとクリスは、くすりと笑う。
何気ない笑顔も美し過ぎて、私の胸はときめいてしまう。
「空白の3年間は、なかったことになる。つまり僕は、社会的にも18歳と認められた。だからね、まだまだ若造だ」
「……! やっぱりクリスは、私と同い年なのね。未だに信じられないわ……」
「ニーナは、年上が好み?」
「私が好きなのはクリスよ。年齢は関係ないわ」
「ニーナ……」
再びキスをされると思ったその瞬間。
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次回は公開タイトルは……。
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