76:こんなに大人の色気にあふれているのに
待合室のロビーで待っていたクリスと合流すると、再び屋敷を目指し、馬車で移動を開始したのだが……。
「ええええええ、クリスが僕と同い年!?」
「ええええええ、クリスが私と同い年!?」
ウィルと私は、ほぼ同時に同じような言葉を口にすることになった。
病院で検査をした結果、衝撃の事実が発覚した。
そもそもとして。
守護霊獣と人間が同化する魔法。
そんな魔法、誰もが使えるような魔法ではない。
とても特殊。
さらに。
守護霊獣と同化し、3年もその状態でいる。
これはとても異例。
ただの動物と同化していたのではない。
霊獣と同化していた。
その結果。
クリスの体は、同化している最中、成長が止まっていた。
つまり、銀狼と同化した18歳のあの瞬間から、クリスの時は止まった状態だった。そして同化を解いたからといって、一気に歳をとることもない。もちろん同化は解いたので、そこからは通常と同じ状態。ちゃんと成長はする。
「不思議な気持ちだよ。ウィルのことは弟のように思っていたのに、まさか同い年になるなんて。でもニーナと同い年になれたのは、嬉しいかな」
そう言ってクリスは笑うのだが……。
今日のクリスは、白シャツにブルーラベンダー色のスーツの上下と、ラフな装いをしている。病院で検査をして、着替えをして帰るのだから、ラフな姿なのは当然。それにシャツのボタンも、首元が苦しくないよう、三つ外しているだけなのだが……。
なんというか、それだけでもう、大人の色気にあふれている。
とても同い年には……思えない。
それに肉体的には18歳のクリスであるが、社会的に18歳として認めるのかどうか……。それもまた国王陛下の判断を仰ぐことになった。
◇
翌日。
父親は、先に王都へ戻っていた。
だから私はウィンスレット辺境伯が手配してくれた車に乗り、ウィル達の車と一緒に、王都へ向け、出発することになった。
ウィルの護衛についているジェラルドは、私のことも護衛対象にしてくれた。あのジェラルドに護衛してもらえるなら、安心だ。
ということで。
王都まで同行してくれるケイトと一緒に、車に乗り込んだ。
出発して1時間が経った時、休憩をとった。
休憩のために立ち寄った場所には、焼き立てのパンを売る店がある。そこではメレンゲを焼いたスイーツが有名ということで、ケイトが買いに行ってくれた。
私は車の中で待っていたのだが……。
ケイトが戻ってきたと思ったら、クリスだった。
「ニーナが食べたかったのは、このスイーツだろう? 一緒に食べよう」
「!? それはとても嬉しい提案だわ。でもケイトは……?」
「スイーツをプレゼントして、交代してもらったよ。王都までウィルと同じ車では、何も楽しくないからね。ケイトも快諾してくれた」
メレンゲを焼いたスイーツを私に手渡すと、ご機嫌のクリスは、私の車に乗り込む。
ブルンデルクでは、途中から私は学校へ行くようになり、クリスはクリスで、とても忙しそうにしていた。だから二人きりの時間は、ほとんどとれなかった。よって思いがけず王都までの道中を、クリスと過ごせるようになり……私は嬉しくてたまらない。
そこから王都までは、クリスとずっと一緒だった。
メレンゲのスイーツを食べ、その後、クリスは自分にもたれるよう、私にリクエストした。さらに当然というように、手をつなぐ。
お互いの体が密着した状態で、手をつないでいる……もう私の心臓は、ドキドキしっぱなし。それにおしゃべりの合間、あのネモフィラの花畑で会っていた時のように、頬や唇に触れたりするので、その度に心拍数が上がる。
その上で、とどめのように、耳に顔を近づけ「ニーナ、大好きだよ」なんて何度も囁くので……もう、気絶寸前。そうなると「ニーナ、大丈夫?」と、今度は抱き寄せられる。そんなことをされれば、完全に落ちます。これで落ちないなんて、無理な話!
落ちた私を、クリスは嬉しそうに、抱きしめている。そうするとあの透明感のある清楚な香りを吸い込むことになり……。もう完落ち。休憩で車を降りるまで、この超絶ラブラブ体勢から、抜け出せなくなる。
あああああ、なんて幸せなのだろう!
アンジェラの手で、縦穴へ落とされた時。
こんな未来が待っているなんて、想像できなかった。
それにしても。
ブルンデルクから王都は遠い。
そう思っていたが。
クリスと一緒だと、あっという間に着いてしまう。
途中でクリスがウィルの車に戻り、ケイトが私の車に戻ってきた。
ケイトは、護衛の魔法騎士達と一緒の車に乗せてもらったらしく「皆さま、とてもかっこよく、目の保養になりました」と、うっとりしてため息をついていた。
この後、もう1話、公開します!
準備出来次第、公開します。11時半までに公開します!
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