75:いろいろ解決して、本当によかったな
クリスはウィル達が滞在する離れへ、私は母屋に戻った後。
その瞬間から怒涛の勢いで、時が流れ始めた。
アンジェラにさらわれて以降、何が起きたのかを、クリスと共に、ウィルとウィンスレット辺境伯に話すことになった。
クリスはさらに空白の3年間についても話す必要があったが、それは王都で詳しく、となっている。その一方で、アンジェラをギリス王国へと戻す手続きも、着々と進められた。
ウィンスレット辺境伯がアンジェラを連れ、ギリス王国に向かうことが決定した。
さらにクリスは、私の父親と話し、私との婚約とそして11月には結婚したいと打ち明けた。
これにはさすがの父親も、目を丸くして驚いた。婚約だけならまだしも、結婚を11月にするとなると、母親にも相談する時間が欲しいと、一旦答えを保留にしたが……。
翌日には快諾された。
とはいえ、クリスは次期大魔法使いの身なので、婚約するにも結婚するにも、国王陛下と話す必要がある。だから正式な婚約と結婚については、国王陛下と話してから、ということで落ち着いた。
私がクリスと婚約し、早々に結婚すると分かったアンソニーは……。
ショックを受けているようだった。でも交換条件で花畑の場所を教えようとしたことを謝罪し、そしてクリスと幸せになって欲しいと言ってくれた。
ウィルが言っていた通り、アンソニーは根が悪い人ではなく、やはり優しい人だった。
「なるほど。ニーナ、いろいろ解決して、本当によかったな」
久しぶりにウィルと二人きりで話すことができた。
と言ってもそれは、この屋敷に無事に帰還し、二日後のことだった。
クリスは昨日のお昼過ぎから、検査のため、病院に入院している。
3年間も同化魔法で守護霊獣と一体化していたということで、健康状態に問題ないか、一日がかりで検査を受けていた。
ウィルと私は、退院するクリスを迎えに行くため、ウィルの馬車で移動中だった。
一応学校には昨日から登校していて、今は学校からの帰り道だ。
馬車は4人乗りだったので、アンソニーとジェシカはウィンスレット家の馬車で、屋敷へと帰っていった。
ということでウィルと二人になった私は……。
自分にかけられていたクリスの魔法は、私がお願いしてかけてもらっていたこと。そしてアンソニーと和解できたことを、ウィルに話し終えたところだ。
「魔法を解くため、いろいろ協力してくれたこと、心から感謝しています、ウィル。本当にありがとうございました」
「どういたしまして。でも普通に魔法を使えるようになったら、いきなり第七陣形で防御魔法を展開するなんて。夫婦揃って、最強魔法使いになるな」
「それはそうかもしれないですね。……それで明日にはウィルも、一度王都へ戻るのですか?」
ウィルは面倒そうに頷く。
「そうなんだよ。ここから王都はそれなりに遠いし、本当に面倒だ……。でも今回は隣国の魔女、しかも『奇跡の子』が関わる騒動だったから……。さすがに親父……国王陛下にも直接会って話す必要があるというわけだ。でもニーナだって、明日から王都に行くのだろう?」
私はこくりと頷く。
今回の事件の中心人物は、間違いなくクリスだ。でも私も深く関わっている。何より国王陛下は、私の救出のために、ハヤブサまで派遣してくれたのだ。父親と共に、国王陛下に御礼の気持ちを伝える必要がある。それにクリスは、私との婚約と結婚について、国王陛下と話すことになっている。そちらの件でも、国王陛下と謁見する必要があるかもしれないのだ。
9年ぶりの王都。
不安がないわけではない。
何せマジパラのヒロイン・ユーリアがいることも分かっているのだから。
それに悪役令嬢として、お役目御免になったわけではない。
それでも。
私にはクリスがいる。
だから王都へ一旦出向くことにした。
「しかし、あれだな。ニーナも僕も学校を休みまくることになるから、その分、夏休みを削って補習になりそうだ」
「ウィルはクリスが見つかったのに、王立イエローウィン魔法学園に、戻らなくてもいいのですか?」
「ニーナ、痛いところをつくな。婚約を目論んでいたが、当てがはずれた。でも婚約を考えていた相手は、王立イエローウィン魔法学園にいる。正直、顔を合わせたくない。だから僕は、コンカドール魔術学園で過ごすことに決めた」
なるほど……。
ウィルはユーリアと恋仲に……婚約を考え、破局した。
しかも同じ王子である王太子とユーリアが、婚約を予定している。
本人は平気そうにしているが、とてもショックなことと思う。
というか、せっかく転校手続きもしたのだ。
このままブルンデルクに残り、コンカドール魔術学園を卒業する。
それでいいのではないかと思えた。
さらに私からすると、これでジェシカは、ウィルにアタックできるわけで。卒業まではジェシカの恋愛相談に、乗ることになりそうだ。
一方の私は。
国王陛下からも、クリスとの婚約と結婚を認められたら……。
11月に私が18歳になったら、婚姻関係を結ぶことになっているが、学園には通い続ける。そして卒業と同時に王都へ戻り、クリスと一緒に暮らす予定だ。
王都に戻ったクリスが、正式に大魔法使いに就任すれば、間違いなく多忙だろう。その上、私は学生で、遠距離。婚姻関係を結んでも、月に1回会えたら御の字という状況になるのだろうな……。
そうだとしても。
大好きなクリスと結ばれるのだ。なんの文句があるだろう。
本当は制服姿で、放課後デートとかしたいところだけど。
仕方あるまい。
「着いたぞ、ニーナ」
ウィルの声に我に返り、馬車を降りた。
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次回は「こんなに大人の色気にあふれているのに」を公開します。
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