67:ゲームと現実の大きな違い~9年前の春~
正直なところ。
クリストファーと過ごした時間は、とても楽しかった。
それは彼が推しメンだったことを差し引いても、だ。
12歳ながらいろいろと旅しているだけあって、話してくれることが、どれも興味深く面白い。マジパラの中では語られない、メリア魔法国の様々な地域について、知ることができた。さらに聞けば聞くほど、そこに行ってみたい気持ちになる。それに話し方のツボも心得ている感じで、間の取り方、声の抑揚なども、完璧だ。
彼と会話してつまらなかったと言う人がいれば、会ってみたいぐらい。
元々好きだったが、完璧に魅了されてしまった。
そしてこの会話の最中、私は聞き役に徹していたつもりだったのが……。
「ニーナ、君は聞き上手だね。僕からどんどん言葉を引き出してくれる。君に聞かれることで、新たに気づかされることもあった。それにこんな見方もあるのかと、驚くこともあった」
そんな風に言われると思わず、「そ、そうですか」と赤くなる。
「……ニーナ、学校は?」
「学校は今週一週間、キャンプで。私は今日、ここへ越してきたばかりで、キャンプには置いてきぼりになってしまいました」
「そうなのか。ではニーナ、今週は僕と過ごそう」
「え!?」
「僕は今週いっぱい、ブルンデルクに滞在することができる。でも来週には、王都へ戻らなければいけない……」
なるほど。
王都へ戻るなら、後腐れもなく終わる。
王都へ戻れば、地方で出会った伯爵家の令嬢のことなど、すぐに忘れるだろう。
そう思った。
だから。
「分かったわ。明日も今日と同じ時間で、いいかしら?」
推しと過ごせる奇跡の一週間。
ゲームで突然発生した、ボーナスイベントみたいなもの。
私としては、気軽に応じたつもりだったが……。
「……いいの、ニーナ? 明日も会ってくれるの?」
クリストファーは、満面の笑みで私を見た。
その笑顔の破壊力はすさまじく、私は思わず、両手をネモフィラの花畑についてしまう。
今は並んで座っていたが、もし、立っていたら……。
危ないところだった。
それにしても。
誰かの笑顔で、意識を失いそうになるなんて、人生初だわ。
というか、まだ少年クリストファーで、青年クリストファーではないのに!!
突然両手をついた私に驚きながらも、優しいクリストファーは、私の体を支え、手についた土を払ってくれる。
その瞬間。
クリストファーから、透明感のある清楚な香りがして、心臓がドクンと大きな音を立てる。
これが、ゲームと現実の大きな違い……。
あのクリストファーの香りを、感じられるなんて。
推しの香りを感じられるなんて……。
悪役令嬢に転生してしまい、最悪と思い続けた日々だったが。
転生できて良かった……。
しみじみと実感した。
この後、もう1話、公開します!
準備出来次第、公開します。11時半までに公開します。
【おまけ企画】付きで公開します!
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