58:いけないことをした罰が当たったのかな
3年前のあの日――。
クリスは静かに口を開く。
「僕が18歳になり、ニーナが14歳になったら、再びネモフィラの花畑で会うという約束をしていた。僕は場所を忘れないよう、自分の魔力の痕跡を、花畑に残していた。毎日のように痕跡を確認し、そこに花畑があると分かると、ニーナの笑顔を思い出し、頑張ろうと思えた。まさか花畑がそのまま学園の敷地に収まっているとは思わなかった。だから6年ぶりにブルンデルクの地に降り立ち、その事実を知った時は……とても驚いたよ」
「驚いたよ」と言って笑った笑顔が、夜空の星に負けないぐらい輝いていて、見惚れてしまう。
見惚れていると気付いたクリスは、さらに笑顔が輝き、自然な仕草で頬にキスをした。
その瞬間、意識を失いそうになる。
「学園の警備は厳しい。忍び込むのは、ニーナでは無理だ。だからニーナは、花畑に来ることはできないだろうと、すぐに分かった。でもニーナには、僕の魔法がかかっている。その魔法を追えば、ニーナがどこにいようと、すぐに会える。だから軽い気持ちで、思い出の花畑がどうなっているのか、見に行くことにした」
「……それは防御魔法をかいくぐって、学園の敷地内の花畑を、見に行ったということ?」
なんとか意識を保ち、心臓のドキドキを鎮めながら尋ねると、クリスは苦笑する。
「そう。本当はいけないことだよね。いけないことをした罰が、当たったのかな。あのアンジェラと、遭遇することになってしまった」
クリスの表情が引き締まった。
キリッと真面目な表情のクリスも……当然、カッコいい。
眼福と思いながら眺める。
「アンジェラのことは知っていた。同じ『奇跡の子』だからね。あ、ニーナは『奇跡の子』のことは、知っている?」
「ウィルから聞いたわ。でもすべてを正しく知っているかは、自信ないけど……」
「大丈夫だよ。知りたいことがあれば僕に聞いてくれれば。ニーナになら、僕のすべてを教えるよ」
突然耳元で甘く囁かれ、瞬殺される。
不意打ちでこれ、ダメですから!
構えていても陥落するのに、不意にやられたら瞬殺確定。
「『奇跡の子』は男子が多いと言われ、実際女子は少ないらしい。でも女子が産まれると、周囲は大騒ぎになり、本人は辛い人生を送ることになる。この国だけではなく、魔法を使える国の多くが、魔力の強い者が、力のある地位に就く。そして魔力は遺伝するから、より強い魔力を求め、魔力が強い者と婚姻を結ぼうとする。
ただ、不思議と『奇跡の子』の男性と、魔力の強い女性が婚姻関係を結んでも、必ずしも魔力の強い子が生まれるわけではない。でも『奇跡の子』の女性と、魔力の強い男性が結ばれると、非常に魔力の強い子供が、確実に生まれる」
まさか……という思いでクリスを見ると、辛そうな顔で頷く。
「ギリス王国の王宮で育てられたアンジェラは……。子供を産める体になってから、5人いる王子、国王、宰相など、より強い魔力を望む者の相手を、させられることになった。産んだ子供はすぐに取り上げられ、自分で育てることもなく、体調が落ち着くと……。懐妊するまで、寝室に閉じ込められる。そんな地獄のような日々を送ったアンジェラは、王宮から逃走した。その時点でアンジェラの心は、壊れてしまっていたのだろうね」
なんて恐ろしい話なのだろう。アンジェラが男性を、品定めするような見方になってしまった理由。それは間違いなく、ギリス王国の王宮で過ごした日々が、原因なのではないか。
この後、もう1話、公開します!
準備出来次第、公開します。11時半までに公開します!
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